〜突発性恋症
桜の花びらが散る季節。轟茜15歳、
高校1年生。
ーー彼は、よく分からない恋をした。
先輩たちの部活勧誘が行われてる間の事である。
「ひえぇ〜めんどっちめんどっちぃー…水泳は考えたけど…女の子居ねぇしなあ?」
なんて思いながら人気の無い学校の裏て来ていた。コンクリートの隅に寄せられた植木鉢を1個ずつ数える。
1、2ー、さ〜ん…と。
バカみたい。
ーーそうしていると、俺の反対側の方からある女の子がゼェゼェ言いながら走ってした。
「え?俺と同じ??」
白いカーディガン。黒いタイツ。安易に肌を見せないという事だろう。
うん、100点満点だ。
「…?」
その子はこちらを少し見て、すぐそっぽ向く。
やべっ、見入ってたぁ…、今度はバレずに…。
左腕で目を隠しながら見るとあることに気づく。
ーー髪…ぼっさあ、、、、、
「そんでっ、、瓦木哲也だ。今日から1年間、みんなの担任になる男でーす。よろしくっ!」
ダブルピース…男のは求めてねえ。
つっても…高校1年、新クラス。辺りを見渡す限りでは、個性的な奴は…、、
ーーんん?んんんん?!!!
頭完全坊主!!?それにアニメによくいるガラの悪い輩!!?ぐるぐる柄の丸メガネ!!
き、金髪ぅ?!それに対抗するかのようにお嬢様キャラと真面目ちゃんがつるんでるぅ、、!
波乱だあ、、波乱が起きるぞこれはあ、、、ふへへ。
「…ん?」
俺は良くはない眼差しで見渡していると、ある席の俯いている子に目が止まった。いやなんなら釘付けになった。
髪ボッサボサ…大丈夫かアレ。いじれられっ子?
まあ女の子だしぃ?本当にそんなら俺が助けるしぃ?
つか、見覚えが…あるんですけど、、。あの髪の毛。
そうあのボッサ髪。
見とれている内、なんか知らずに自己紹介の流れになっていた。
「あー、名前は桐山智です。趣味…趣味ぃ、えっと、Twitterを見漁る事、です」
2番の彼、ぽっちゃり体型だった。
この後見事野球部やサッカー部が笑いを取って行き、そのバトンは14番の俺に回ってきたのだ。
ーー今こそ渾身の1発芸を見せる時っ!
「あ、はい!名前は轟茜ぇ…っていいます!!名前が漢字2文字で終わるのでテストの時みんなより早く書き始めれま〜す。……よろしく、オネガイシマス」
後半、周りの雰囲気に押されて声が低くなっていった。当然、笑いは起きなかった。
あぁ、俺の1年、陰キャで終わりだな。あはは。
「…はっ!!」
ボーっとしている最中、ハッと意識を取り戻す。
そう、今は朝に会ったあの子の自己紹介中なのだっ!聞い逃す訳には行かん!!
「え、えと、、、渡辺静華…ですっ。少しだけなら、ギター…引けます……。1年間、、お願いしましゅっ、、ぁ、。」
少女は何も無かった様に、ガタッと椅子に座った。
特に誰も触れず、笑いは起きなかった。悲しい世界。
ーー登校初日は早帰り。だが…先輩たちのの部活勧誘がある。
とりあえず、水泳部には行かねえ、女の子居ねぇしっ…と、ぁ。
その瞬間、俺の横の空いてあった窓から風が吹き込む。その風によって、手に持っていた水泳部のチラシが後ろへ飛んでいってしまった。
「…よいっ、しょ。……ん?」
地面に落ちたチラシへ手を伸ばす。すると、不意にゴツっという音に加え、ヒラヒラとなにか布のような感触の2つが頭へ伝わった。
頭を上げると、そこには真っ黒のスカートと、真っ黒
のタイツ。
あぁ何だ。世界遺産だあ
「えへへ」
手を膝小僧に伸ばして触ろうとした。
流石に自分でも引いた。まじで引いた。
「………い、…、、、いやァァァァァ!!!!」
「っっゴッッ、、、ぶぅぅぅぅぅぅうう!」
綺麗な足に顎を蹴り上げられてしまった。
一生の宝です。
ーーでも痛え…。
「それで静華ちゃんは文芸部に行くんだ。」
「は、はい…楽、だし。先輩にも、そう言われたか、ら。え、ちゃ…ちゃん??」
「ふーーん。俺も行ってみようかなあ文芸部。」
廊下をトコトコと2人で歩き、文芸部の部室へ向かう。
「おじゃましまーす!」
「お、おじゃま、します…」
ドアを開けると薄暗い、殺人現場のような雰囲気の部室が見えてきた。
そんな部室の椅子に座っているのはたった一人。
「え…、、え?!!なになに?!!!文芸部に来たの?!!!」
「ヒィぃっ」
渡辺静華はその大きた声にびっくりして俺の後ろへ隠れた。
「とりあえず座ってよ!!」
椅子に案内され、ストン…と座るな否や、先輩が自己紹介を始めた。
「私ね!富風花火!高二!!よろしくね!!いやー…文芸部に来てくれるなんて、、感動で…、、グス…っ、、」
「花火…さん。め、めめっ珍しくて、いい名前…です
ね…」
「君たちはなんて言うの??」
「僕は轟茜です」
「わ、私は…渡辺静華、ですっ」
先輩に促されて2人続けて名前を言う。
「茜に静華ね!とりあえず部員3人だわあ!」
入るとは言ってないんだが…まあ、元々運動部には入らないって決めてたし。いいか。
ーー横に座っている静華が、何やらオドオドしていた。
「凄い量の本、ですね。」
「ん〜?そうなのそうなの〜。これ全部私が集めたんだぜ?」
ドヤ顔で俺たちに決めポーズをする花火は、なにかいやらしく見えた。
「あそこの窓際の机と椅子!!あそこ日当たり良くて暖かいからそこに座ってよく本読んでるんだあ!」
「へ〜、そうなんすねえ、、」
茜はガタッと立ち上がり、通称、暖か椅子に向かう。
ふむふむ。湿気良好。先輩の座った席ぃ…。
「あ!これ読んでいいですか!!」
椅子の観察中、後ろで珍しく声を出していた静華が、ある本を取っていた。
「ん!いいよ!!てか聞かないで持っていっていいから!!ど自由に!!」
「ありがとうございますありがとうございますぅぅ…」
人見知りが出てんぜ…静華よ。
そして、しゃがんで椅子を観察していた俺にビクッと驚いていた。
「あーこれ座って座って」
「あ…ぁありがとうございます。」
俺は向かいの席に座って、そこから見える景色を呆然と見ていた。
ここからはプールが見えるんだな。あれは調理室か?
その間、静華もページをめくっている。髪のめくれる音がする。
「静華…読書中悪いんだけど」
「…っ!は、はい!」
「髪、どうした?」
静華に聞いてみた。その、ボッサ髪について。
「ぁ、、これっは…」
左手ではねた髪を真っ直ぐにおろし、手を離すとバネのようにビヨンっと戻る。
「治らなくて…へへ。」
陽の光に当たりながら、俺に『へへ』と笑うその顔は…控えめに言って可愛かった。
ーー多分俺は、ジト目気味と言われ続けたこの目が、少し見開いた気がしたのだ。
「ちょっと、待ってて。」
俺は先程座った椅子の下に置いたバッグをガサガサと漁り、ある道具を2つ出した。
そう、ほぐし水と櫛だ。
「少し我慢してな?」
「え、うぇ?!!ちょ、、!」
「あ!!あぁぁ!!動かないで!」
俺は静華の頭に水を吹きかけた、それが嫌なのか、左手で髪を振り払っている。
でも俺の注意で大人しくなった。
櫛でゆっくり下へ下ろしていく。丁寧に、丁寧に、だ。
「ほら、出来たぞ!!」
鏡を机に置くと、静華は急いで自分の髪をチェックし始めた。
「女の子なんだから可愛く居なきゃダメだぞ」
「あ、ありがとう、ござい!ます!!」
「おう!またやって欲しかったら言ってくれよ!」
そんなやり取りを横目で見る、一応部長の花火さん。
「何勝手に青春してるのさ!!」
「え?!え?!」
またもや慌てふためく静華。
「いや〜、静華ちゃん。いい匂いだったぜ、。飯3倍行けるなあ」
「…ぇ、!え?!!」
目線を、俺と花火さん。どちらに止めようか迷っていて、キョロキョロする静華。
「可愛ぃ…〜、」
家に帰り、風呂を済ませる。
パンイチで出ると、ソファに玲奈が座っていた。
「あ!お兄ちゃん!!髪切って!!」
「ん〜、、好きな人にしか切りま…せーーーん」
「黙れ!早く切って!!新学期早々頭髪検査とか聞いてないし!!早く!!」
「あーはいはいわかったわかった!!もう〜可愛いんだからあ」
「もっと黙れ。優しく切ってよね」
「そこまで意地悪じゃねぇよ」
「…ほんとよね、?」
「散髪には嘘はつかねえよ」
「散髪じゃなくて私によ!」
周りにビニールを敷き、ゴミ箱を用意してから玲奈の髪を切っていく。
「お兄ちゃん。友達は出来た?」
「…友達だと、思ってくれてたらいい」
「ほら!終わったぞ」
「おお!!すごいねやっぱり。あんたこういうの才能あるよ!!」