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46.一学期 期末試験 ( 18 )

「ダリア!!!」


 私は急いで倒れたダリアの元に駆け寄った。大声で名前を呼ぶも反応は無く、気を失っているようだ。肩の辺りを軽く叩き、呼びかけ続けるが一向に目を覚ます気配が無い。


 急いで手当しないと、万が一のことがあったら……。


「誰か!!誰かいませんか!!!」


 森の中に私の叫びが木霊す。しかし近くには誰もいないようで返事は戻ってこない。


 誰もいないわ……。どうしたら……。


 どうすれば良いか、必死に頭を働かせる。このまま待っていては手遅れになってしまうかもしれない。私の風魔法でダリアを運ぶのは無理があるだろうし、やはり誰か呼ばないことには……。そのとき、ふと、バロリエ先生の言葉が脳をよぎった。私は何もない上空を見上げ、声を張り上げる。


「先生!!!ダリアが起きません!先生!!」


 先生たちが緊急時に備えて、私たちを監視していると言っていたことを思い出したのだ。必死に何度も先生と呼び続ける。すると、


「おい!どうした!?起きねえのか!」


 どこからともなく、森の中にバロリエ先生が姿を現した。


「先生!ダリアが!ダリアが!!」


「落ち着けオルセン。とりあえず医務室に行くぞ」

「は、はい」


 バロリエ先生はそう言うと、私の肩とダリアの肩に手を置き、移動魔法を発動させる。視界が歪み、思わず目を瞑った次の瞬間、私たちは三人揃って医務室へと移動していた。


 いつしかお世話になったあの医務室の先生が、ベッドに寝かせたダリアの治療をすぐに開始する。私とバロリエ先生は横でその姿を無言で見守っていた。数分間の沈黙の後、医務室の先生が治療の手を止めこちらへと視線を上げる。


「うん。気を失ってはいるけど、大丈夫よ。少し休ませてあげれば、そのうち起きるはず」

「そうか、良かった。ありがとな!」

「ありがとう……ございます……」


 心のどこかで、もしかしたらこのままダリアが一生目を覚ますことはないのではないか。そんな最悪の想像をしていた私は、ダリアが無事であると聞き、心の底からほっとした。安堵からか視界がぼやけ、涙が溢れてくる。


 私は医務室の先生に連れられ、入口近くのソファに座らされた。


「火傷しないように、ゆっくり飲んでね」


 差し出されたマグカップを受け取り中を見ると、それはホットミルクのようだった。私は口を近づけ、ほんの少しだけミルクを口に含む。甘い味が口に広がるとともに、気持ちもどこか落ち着いていくように感じた。


「ありがとうございます」


 私がホットミルクを味わっていると、バロリエ先生も遅れてこちらへと移動してきた。


「オルセン。ちゃんと勝負の様子は見ていたが、あれはお前のせいじゃない。単なる事故だ」


 ソファの横に立ったバロリエ先生が、頭をぽんぽんと優しく撫でる。


「そうよ。きっと白熱しすぎて、あの子の魔力がきれちゃったんだわ」

「まったくお前らったらなあ。夢中になりすぎだ!ま、これも青春てか?」

「あら、ババアみたいなセリフ言っちゃって」

「あん!?」


 二人が私のことを気遣い、励まそうとしてくれているのが伝わってきた。確かにあれは事故だったのかもしれない。しかし私の魔法でダリアを傷つけてしまったのは事実だ。


 私の視線は自然とダリアが寝ているベッドへと向かう。ベッドはカーテンで遮られているため、ここからダリアの姿は見えない。


「まあ、最初の授業のオルセンといい、今回といい。いろんなことが起きるな」

「……すみません」

「あ、いや!責めてるわけじゃ!!」

「はあ……。本当にデリカシーのないババアね」

「あんだと!?」


 先ほどまでの軽い冗談の言い合いから、ややヒートアップしつつある二人。医務室が不穏な空気になっていく。


「せ、先生……?」


 私は慌てて、何とか二人の口論を止めようと声をかけた。


「あらやだ。もう、ごめんなさいね」

「ごほん。とりあえずだ!もう時間になるから先に行く。オルセンはここに残っててもいいぞ」


 医務室の先生は問題ないと言っていたが、やはりダリアが心配だ。私はここに残ることを決め、バロリエ先生の提案に頷く。


 その後、『本当に気にするなよ』という言葉を残し、バロリエ先生は医務室を出ていった。


 それから私は医務室の先生に椅子を貸してもらい、ベッド脇に座りながら、ダリアが目を覚ますのを待った。


 どれくらいの時間が経っただろうか。窓の外から差し込む陽がオレンジ色に染まってきた頃、ダリアが薄っすらと目を開けた。


「ダリア!!」

「うーん……セレーネ?ここは?」


 私はダリアが倒れた後から、ここに至るまでの経緯を説明した。


「そうだったんだ。うん、セレーネのせいじゃない!むしろ助けを呼んでくれてありがとね」

「でも!!」


 先生たちに続き、ダリア本人までもが私のせいじゃないと言う。しかしそんなことを言われても、どうしたって事実は変わらない。私の魔法が原因だったのだ。


 私たちの話し声に気がついたのか、医務室の先生がカーテンを開けて入ってきた。先生が改めてダリアの体を確認する。


「うん。これは完全に魔力切れね!今あなた本当に魔力ゼロよ!ここまですっからかんになるのも珍しいくらいだわ」

「そ、そんなにですか……?」

「ええ。魔力切れを起こす子なら何百人と見てきたけど、多少なりとも魔力は残ってたもの……もう少し詳しく検査してみましょうか?」

「いえ!体はぴんぴんしてるので、今日はもう帰ります!また様子がおかしかったら来ますね」

「そう?分かったわ。そしたら、少しでも違和感があればいつでも来て良いからね」


 私が先ほどもらったホットミルクをダリアも飲みつつ、少し談笑をした後に私たちは一緒に寮に戻ったのだった。寮に戻ると、私たちがいなくなったことを心配していたアレクサンダー君たちから色々と話を聞かれたが、ダリアもまだ本調子ではないので、今日はそのまま部屋に帰らせてもらった。



 そして後日。実技試験の結果を耳にした。


 アレクサンダー・クラーク 四十五点

 ダミアン・アルヴィエ 三十五点

 アナベル・レスタンクール 三十点

 ・

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 ・

 ・

 オスカー・プランケット 二十点

 セレーネ・オルセン 二十点

 ・

 ・


 こうして私たちの一学期の幕が閉じたのであった。

一学期編、終わりました!!

二学期編始まるまで、ちょっとお時間いただきます!

ぜひブックマークしてお待ちください

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