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34.一学期 期末試験 ( 6 )

 もぐもぐもぐもぐ


 もぐもぐもぐもぐ


 もぐもぐもぐもぐ


 今私たちは巨大な木の根元でお昼ごはんを食べている。特に話すこともなく、ただもぐもぐと。


 いつも場を盛り上げる、というか騒がしいアレクサンダー君は、相当お腹が空いていたのかご飯に夢中だ。プランケット君もあまり自分から話題を出したり、場を回したりするタイプでもない。もちろん私にもそんなことはできない。結果的に、ただ三人でもぐもぐしている時間が流れているのだ。


「ごちそうさまでした!」


 静寂をやぶったのは、アレクサンダー君の元気な挨拶だった。


「そんで、そんで!セレーネはどうやって五点取ったんだ!?誰と戦ったんだ!?どういう感じだった!?」


 ご飯を食べ終えた彼はいつもの調子に戻り、質問攻めが開始された。私は先ほどのマラブルさんとの経緯を話す。プランケット君も興味があったようで、二人は私の話を『うんうん』とか『なるほど』と相づちを入れながら聞いてくれた。マラブルさんとの戦いについて一通り話終え、今度は二人に質問してみる。


「おふたりは午前中どう過ごされていたのですか?」


 私の質問に食い気味に回答してくれたアレクサンダー君。ちょっと効果音が多かったり、何を言っているのか分からない部分もあったが、何となくは理解ができた。そんな彼の話も興味深そうに聞いていたプランケット君。アレクサンダー君の話が終わってから、彼は自分の午前中の出来事を話しだした。淡々と整理して要点を話してくれたため、彼の午前中の出来事はすんなりと頭に入ってきた。


 そして、三人の体験談をまとめてみると驚くべきことが分かった。この四季の森、名前の通り春夏秋冬と四つの気候に分かれているようなのだ。


 各々が最初に降り立った場所から整理してみる。私は今まさに私たちが居る、巨大な木々が並び、緑が生い茂る場所。対して、アレクサンダー君はカラッカラに乾燥している、緑なんて一切ない砂漠地帯。本当に死ぬかと思うような暑さだったと、アレクサンダー君は何度も熱弁している。プランケット君の居た場所では、木々はあるが、どれも枯れており、辺りには霧が立ち込めていたらしい。そして、先ほど二人が戦っていた場所。極寒の銀世界。


 ここから推察するに、今居る自然豊かな場所が春。アレクサンダー君の言う砂漠地帯が夏。枯れた木々と濃い霧に包まれていた場所が秋。雪に覆われた銀世界が冬というところだろうか。


 夏エリアが暑すぎて全速力で走ったアレクサンダー君はそのまま秋エリアに侵入。そこで二人は遭遇した。しかし霧のせいで戦いづらいため、二人で移動を開始。霧が晴れてきたと思ったら今度は巨大な木々が登場。これはこれで戦いづらいため、そのまま走り続け、最終的に冬エリアまで突っ切ったようだ。


 四季の森と呼ばれる理由が判明すると同時に、この学園のすごさを改めて実感した。


 学園全体の地図とか図書館にないのかしら。


「それより、もっと警戒心を持たないとですよ。おふたりは仲がよろしいので、ここで何か起こるとは思いませんが、僕がいきなり攻撃したらどうするんです?もうクラーク君にボールを当てられてから三十分は経っていますし、僕はクラーク君を攻撃することもできるんですよ」


 学園の全体像に思考を奪われ、完全に警戒心の無くなっていた私にプランケット君の真面目な一言が突き刺さる。今はテスト中。彼の言う通りだ。


「うーん、もしそうなったら反撃はするぜ!でも、それをわざわざ言うプランケットはそんなことしないだろ!!」

「はぁ……全く……」


 ニカッと笑っているアレクサンダー君を、諦めた表情で見ているプランケット君。呆れているけど、でもちょっと微笑んでいるように見えなくも……?


「次会った時は容赦なく攻撃しますよ」

「おうよ!!」


 笑い合っている二人は何だか良い雰囲気だ。戦い終わった時の満足そうな表情が重なった。


「オルセンさんもですよ。容赦はしません」

「わ、私もです!」


 急に話を振られて、少し吃りながら答える私。テスト中は敵同士だけど、こういう感じって何だか良いな。


 ご飯も食べ終え、いよいよ午後の行動開始だ。広げていた荷物を各々リュックにしまい、出発の準備をする。全員の支度が整い立ち上がると、最後にお互いの検討を祈りつつ、誰からともなく頷き合った。


「それでは」

「おう!またな!セレーネも頑張れ!」

「ええ、おふたり……」


 ペシャ


 え……?


 別れの言葉を言い終わる前に足に感じた違和感。見てみると、私の右足が青色に染まっていた。


「オルセンさん!!」

「セレーネ!!」


 すっかり三人の世界に入り込んでいた私の頭が動き出す。私の足についている青色。染液だ。誰かがボールを投げてきたのだ。


「危ないっ!!」


 アレクサンダー君が風の壁を作り、再び投げられた二個のボールを防いでくれる。


「あちゃ~、たった一個か。おふたりさん堪忍な。ワイだけ点数稼いでもうたわ」


 声の方向へ視線をやると、そこに居たのはダミアン君だった。顔までは確認できないが、彼の後ろにもう二つ人影が見える。


「ダミアンお前!!!卑怯だぞ!」


 私を庇うように前に立ちながら、アレクサンダー君が大きな声で言った。


「何が悪いって?どう考えても油断しとった方が悪いやろ」

「それは……!」


 ダミアン君が正しい。これは油断していた私のミスだ。


「まぁ、せっかくやし?三対三、楽しもうや」

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