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24.体育の授業 ( 1 )

 今日はバロリエ先生が担当する魔法騎士(ナイト)の授業だ。


 『魔法騎士の授業』といわれ、魔法と武器を組み合わせた実技を想像していたが、一学期はまず武器の扱いに慣れること、また魔法の持続力を伸ばすことが主になるとのこと。魔法学の実技と比べると、様々な種類の魔法にチャレンジする魔法学に対し、魔法騎士の実技はより体力面にフォーカスしたカリキュラムだそうだ。この前は、魔法を発動し続けることで持続力を伸ばす、という単純だが過酷な授業もあった。


「おーし!今日はとっておきの場所に行くぞー!」


 そんな先生に連れていかれた先は、最初の授業でも使った魔法陣のある東の庭園だった。私たちは指示通り全員で魔法陣の上に立ち、授業の説明を待つ。今度は霧の森で何をするのだろうか。


 パン


 先生が手を叩くと、全員のお腹に縄が現れた。


 何かしら?命綱みたいだわ……。


「いってらっしゃ〜〜い」


 先生は呑気に手を振っている。そして、またもや質問をする間もなく魔法陣が光だし、転移魔法が発動した。


 眩い光に視界が真っ白になる。そして次の瞬間、視界が戻ったは良いものの……。


「「「ワアアアアアアアア!!!」」」


 転移先は霧の森ではなかった。そして困ったことに、先ほどまであった足場が無い。そう、足場が無いのだ。つまり私たちは今真っ逆さまに落下している。


「イヤアアアアア!……うわっ!」


 幸いなことに地面に打ち付けれる前に落下は止まった。止まると同時に、お腹に巻き付けてある命綱が思いっきり食い込んでしまったが。命綱の先の方へ視線をやると、遥か上の方へ伸びているが、何に巻き付けてあるのだろうか……。ただ、ここが縄の長さの限界のようで、これ以上は落ちずにすむようだ。


 だらんと手足をぶら下げている状態から、体勢を整え、周りの様子を見てみる。私たちの目の前には切り立った岩山が広がっている。綱を着けた状態で崖から落とされたようだ。


 吊るされた不安定な状態は、思ったよりも身体が辛い。脚を揺らし反動をつけ、振り子のように前後に揺れることで、近くの崖に手が届いた。そのまま崖にしがみつき、適当な足場を見つける。両足が地面についているという安心感に浸っていると、頭に声が直接響いてきた。


『聞こえるか~~?極限状態でこそ騎士は力を発揮すべし!魔法でも何でも使って上まで登ってこい!以上!!』


 今回の授業の説明はたったそれだけで終わったらしく、通信は途絶えた。


「「「はぁ~~」」」


 周りからクラスメイトたちの溜息が聞こえた。バロリエ先生はどうしていつもこう突発的なのだろうか。しかしここで何を言っても仕方がない。今やるべきことは目の前の課題だ。


 両足はつけたまま、縄を掴み、上の方を見上げる。崖がどこまで続いているのか分からないほど、深いところまで落とされたようだ。今回は持久力メインの授業と見える。


 私が得意とする風魔法で上へ登ると考えると、真っ先に思いつくのは風で自分の身体を浮かすことだ。ただ、まだ慣れていない魔法のため、長時間発動し続けられるのかは正直怪しい。仮に途中で魔法が途切れると、またここまで落下してくる上に魔力切れになっている可能性が高い。そう考えると、より慣れた魔法で地道に登っていく方が良いだろうか。


 色々考え、動けずにいると……。


「我が力を捧げる!!!!炎よ、その力を解き放て《炎の爆発フラム・ド・エクスプロズィヨン》」


 どこからか力強い詠唱と、大きな爆発音が聞こえてきた。


 爆発の音がした方を見ると、クラーク君が激しい爆風に乗り空中へと勢いよく飛んでいく。私は、ついついその姿を目で追ってしまう。


 眩しい。


 太陽と重なっているせいか、爆発による光か。それともクラーク君が放ち続けている爆発魔法の光なのか。とても眩しい。


「負けてらんねえ」


 誰かの声が聞こえる。クラーク君の派手な爆発は、クラスメイト達の闘志に火をつけたようだった。周りから皆の詠唱が聞こえてくる。


 さて、セレーネ・オルセン。私はどうする。

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