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17.セレーネ・オルセンの休日

 五日間の授業が終わり、明日から二日間の休みがはじまる。休みといっても、学期中の外出は許可されていないため、学園内ですることを見つけなければいけない。


 ベッドの上で大きく伸びをして、時計を見る。いつもの癖で、休日でも早く目覚めるようになってしまったようだ。カーテン越しに小さな寝息が聞こえる。ギヴァルシュさんはまだ寝ているみたいだ。


 二度寝をする気にはなれず、大きな音をたてないよう、そーっと部屋を出て洗面所へと向かった。廊下でちらほらすれ違う人もいるが、授業がある日と比べると格段に少ない。


 がらんと空いた洗面所で身なりを整え、その足で食堂へと向かった。朝ご飯をゆっくり頂きつつ、今日何をして過ごそうかと思いを巡らせる。家では自分の時間というものがほとんど無かったため、今日という休日をどう過ごせば良いのか分からない。


 朝食に選んだフルーツを一口かじり、その水々しさを噛みしめる。次に、一緒に取った焼き立てのパンを小さくちぎり、口にいれる。もぐもぐと食べながら考えるが、やはり何も浮かばない。


 朝食を食べ終えるも、結局やりたいことは思いつかず。とりあえず、今週の授業内容を復習することに決めた。立ち上がり、食べ終わった食器を片付け、部屋へと戻った。


 部屋の扉をそっと開け中の様子を確認するが、ギヴァルシュさんが起きた気配はない。中に入り、静かに扉を閉め、音をたてずに勉強道具一式を準備し、部屋を後にした。


 部屋で勉強しようかとも思ったが、ギヴァルシュさんのせっかくの休日を邪魔するのも悪いので、私は図書館に移動することにした。


 以前にデカルト先輩に案内された道を思い出しながら、図書館へと向かう。一年生の寮から、そう離れたところにはなかったので、無事にたどり着くことができた。図書館へ入ると、入口のすぐ横に受付があり、司書さんがいらっしゃる。


 こちらへニコッと笑顔を向ける司書さん。何とかぎこちない笑顔を返した私。


「ごゆっくりお過ごし下さいませ」


 軽く頭を下げ、そのまま図書館の中へと足を進めた。


 以前案内された時にも思ったが、この図書館は本当に……広い!!!床面積がかなり大きい上に、建物自体も二階建てになっているので、相当な広さだ。見たことのない本がずらりと並び、文字通り壁一面が本で埋め尽くされている。本棚の合間合間に勉強机が設置されており、周りが気にならないような配慮も見てとれた。


 一階を少しふらふらしてみるが、朝早いこともあり、まだ誰もいないようだった。日当たりの良い適当な机を見つけ、持ってきた勉強道具を広げた。のだが……。


 視界に入る見たこともない大量の本に、そわそわと視線が泳ぐ。


 実は……前に来た時から、どんな本があるのか少し気になっていた。それが今、目の前に並んでいる。しかし、今日は勉強と決めている……。


 人は一度記憶したものを、存外すぐに忘れてしまう。授業の内容を忘れぬうちに復習しなければならない。


 そう言い聞かせてみるも、どうしても視線は周りの本へと逃げていく。言い聞かせるのは無駄なようだ。どうせ休日は二日間ある。今日は今週前半の授業を復習し、残りは明日やれば良いだろう。


 今日の目標を新たにし、気持ちを切り替えて、勉強に集中した。


 ーー数時間後


「ふう。今日はここまでね」


 今日の目標を達成し、待ちに待った図書館内の本を物色する時間だ。勉強道具を一度片付け、席を立ち、辺りを見回す。


 こんなにたくさんの本が……!いったいどこから見ていけば良いのかしら!


 手近なところから見ていくと、魔法学の本や珍しい生物の図鑑、恋愛小説と幅広いジャンルが取り揃えられている。見たことのない本ばかりで、どれから読むか迷っていると……。


「これはっ!!」


 慌てて、自分の口を両手で塞ぐ。驚きのあまり図書館にいることも忘れ、大声を出してしまった。でもまさか……この本がここにあるなんて……!


 目に止まった一冊の本を棚から取り出す。


『にゃんこ探偵・わんこ助手の事件簿』


 私の大好きなシリーズだった。この小説は、猫のように掴みどころのない女性探偵と、すぐ人を信頼してしまう犬のような男性助手が様々な事件を解決していく物語である。可愛らしいタイトルをしているが、ストーリーは超本格推理小説であり、気づいたときにはこのシリーズの虜になっていた。


 しかも……!!見つけたのは、このシリーズの前日譚!シリーズ十巻目の発売を記念して特別に出版されたもので、世界にたったの五十冊しかない代物なのだ……!


 先程まで何を読もうかと迷子になっていた私はどこかへいき、この小説を手にすぐさま机に戻った。


 そして、日が暮れるまで本を読み続けるのだった。お昼ご飯のことなんてすっかり頭から抜けて。


 ちゃんちゃん

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