✒ ギッちぃの秘密
──*──*──*── 2階
──*──*──*── 宿泊室
食堂から戻ったアタシはベッドの上に腰を下ろして座った。
肥神瑩子
「 ギッちぃ、色々と聞きたい事が沢山あり過ぎるんだけど──、先ずはギッちぃの事を教えて。
闇と魔── “ 闇魔を司る影魔の王 ” って事以外で教えて 」
ギッちぃ
「 愚主には我の事を知ってもらわねばならんな。
我は本来、愚主の影の中に潜んでいる影魔だ。
影魔とは、“ 影の中に潜む魔物 ” を略して呼ばれている 」
肥神瑩子
「 はっ?
アタシの影の中に潜んでいる魔物??
ギッちぃってモンスターじゃなくて魔物なの? 」
ギッちぃ
「 如何にも。
影魔は人間から “ 異形の化け物 ” とも呼ばれ、畏怖されている。
“ 怪異を起こす ” とも言われ、恐れられてもいる 」
肥神瑩子
「 魔物で──、人間に畏怖されていて──、“ 怪奇を起こす ” って恐れられている異形の化け物……。
それって……完全に人間の敵なんじゃないの? 」
ギッちぃ
「 我は魔素を自在に操り、魔気を生み出す事が出来る。
魔気を集め澱みを作り、不浄を出現させる事も出来る。
不浄の濃度を上げると不浄から1体の魔物を生み出す事も出来る 」
肥神瑩子
「 無視して進めないでよ…。
魔物を生み出すとか……、それってヤバくない??
ギッちぃって本当に救世主の〈 守護り手 〉なの??
魔王とかの間違いなんじゃ…… 」
ギッちぃ
「 我は肥神瑩子を主と認めている。
愚主から名を与えられ、初めて愚主に存在を認められた時は歓喜に奮えた 」
肥神瑩子
「 それは……本当に御免ね…… 」
ギッちぃ
「 愚主は我と生涯の伴侶となる契約を交わしてくれた。
我は愚主の〈 守護り手 〉であると同時に愚主の夫となった 」
肥神瑩子
「 へ?
生涯の伴侶??
契約を交わした??
一体何の事?
確かにアタシはギッちぃに名前を付けはしたけど、生涯の伴侶になるような契約をした覚えはないけど? 」
ギッちぃ
「 薬指に刻まれた紋章が契約を交わした証だ。
その紋章──契約紋は生涯消える事はない。
愚主と我は一心同体,一蓮托生だ 」
肥神瑩子
「 何時の間に……。
アタシの知らない内にとんでもない事になってたんだ…。
知らなかったとはいえ、何て事をしでかしてたんだよ、アタシは── 」
ギッちぃ
「 愚主は我に口付けをしてくれた。
我の全身が光に包まれ輝き出しただろう。
我と生涯の伴侶となった故、愚主は我と意思の疎通が出来るようになった 」
肥神瑩子
「 アレか!!
恩人への御礼のつもりだったのに!
だったら──、上から目線で偉ぶったり、“ 愚主 ” って呼ぶの止めてよ… 」
ギッちぃ
「 無理だな。
愚主により構築された我の性格は変えられん 」
肥神瑩子
「 そうなの?
ギッちぃの性格はアタシの所為なの?
マジかぁ……。
えぇ~~と……ギッちぃが生み出せる魔物の事を教えて… 」
ギッちぃ
「 実際に生み出し方を見せた方が早いな。
我は先ず、愚主の影から魔気を徴集する 」
肥神瑩子
「 ちょ、一寸待って!
アタシの影から魔気を徴集って、どういう事よ?
アタシの影ってヤバいの? 」
ギッちぃ
「 影なら何でも構わん。
我の近くに愚主の影がある故、使っているだけだ。
建物の影でも構わんな。
影は何処にでもある故、魔気の徴集は楽だな 」
肥神瑩子
「 なんだ……それなら安心ね…。
良かったぁ~~ 」
ギッちぃ
「 徴集した魔気から澱みを作ると、1ヵ所に不浄から出現する。
魔気の濃度を上げ、魔素を作り、不浄へ魔素を注ぎ、不浄の濃度を上げる。
不浄の濃度が上がれば、不浄の中から魔物が誕生する。
魔物は誕生した瞬間から我の支配下に入る。
生みの親である我に使役された状態であり、我には絶対服従している。
誕生した姿は我と同じ容姿をしている従順な使い魔だ。
餌,育成,躾の方法を変えれば、成長する過程で容姿が変わる 」
肥神瑩子
「 生まれた姿は、ヒヨコと変わらない大きさなんだ。
育てて躾をしないと成長しないなんて面倒じゃない?
自慢じゃないけど育成ゲームは苦手だったんだからね。
花を買っても2日目には水やり忘れてるし、1週間経ってから水やりを思い出すような人間だからね、アタシは!
魔物を育てるなんて出来ないよ? 」
ギッちぃ
「 初めから愚主に期待はしていない。
安心しろ 」
肥神瑩子
「 そりゃどうも!
ふう~~~ん……この小さいギッちぃが育て方で色んな魔物になるのか…。
可愛いし、このままでも良いんじゃない? 」
ギッちぃ
「 親は我だ。
我が育てる 」
肥神瑩子
「 じゃあ、生まれた魔物に関しては全面的にギッちぃへ任せるから宜しくね!
魔素とか魔気とか澱み,不浄についても教えて 」
ギッちぃ
「 魔気とは影から徴集する事が出来る “ 負気 ” だ。
負気は生物が生存している限り無くなりはしない。
半永久的に存在し続ける故、何時でも好きな時に負気を影を通して徴集する事が出来る。
故に魔気も澱みも作り放題だ。
澱みは周辺の空気に魔気を馴染ませ、空気を濁らせて作る。
澱みが出来れば、放置していても不浄が出現する 」
肥神瑩子
「 負気だけど、影を通して徴集出来るのは何で? 」
ギッちぃ
「 影の中は闇だ。
負気は影の闇に吸い込まれる。
故に影から負気を徴集する事が出来るのだ 」
肥神瑩子
「 そうなんだ 」
ギッちぃ
「 救世主の〈 守護り手 〉である我が作る魔気,澱み,不浄は、浄化力を持ってしても浄化は出来ぬ。
故に我の使役する魔物も浄化出来ぬ 」
肥神瑩子
「 ギッちぃ、浄化力って何? 」
ギッちぃ
「 浄化力は無属性の救世主が使える奇蹟の力だ。
この世界には負気,魔気,魔素,不浄が存在している。
魔気が強まれば魔素となり、魔素が強まれば不浄となる。
不浄は負気,魔気,魔素を吸い寄せ濃度を上げる。
不浄の濃度が上がれば、魔界と繋がり魔物を出現させる。
救世主の浄化力で魔物を浄化すると輪廻の流れへ還す事が出来る。
浄化力を使えば負気,魔気,魔素,不浄を浄化する事が出来る。
不浄に侵された土地を一時的に聖地へ変える事も出来るな 」
肥神瑩子
「 そ、そうなんだ?
無属性の救世主って凄いんだ?
何か、無属性の救世主の〈 守護り手 〉って、ギッちぃや影の〈 守護り手 〉,魔の〈 守護り手 〉と相性が悪そうじゃない? 」
ギッちぃ
「 そうでもない。
影の救世主,魔の救世主が使うのも奇蹟の力だ。
当然、愚主が使える力も奇蹟の力だ。
奇蹟の力で奇蹟の力を打ち消す事は出来ない。
故に無属性の救世主の浄化力は効かない 」
肥神瑩子
「 そうなんだ。
ギッちぃ、アタシが使える奇蹟の力ってどんな力なの?
何時、アタシにも奇蹟の力を使えるようになるの? 」
ギッちぃ
「 愚主の使える奇蹟の力は──、腐敗力と腐蝕力だ 」
肥神瑩子
「 ふはいりょく??
ふしょくりょく??
腐敗力と腐蝕力って──腐らせる力って事だよね? 」
ギッちぃ
「 如何にも。
腐敗力は主に生物を腐らせる力だ。
腐らせた後、有害な毒素も発生させる。
腐蝕力は主に生物以外を腐らせ劣化させる力だ。
有害な毒素は発生しない 」
肥神瑩子
「 …………何か、嫌な奇蹟の力ねぇ~~。
嫌われ者の力じゃん…… 」
救世主のアタシが使える奇蹟の力が、腐敗力と腐蝕力??
全然、嬉しくないし、ちっとも救世主っぽくもないんですけど!!