⭕ 人獣族の子供
馬車を降りたアタシは、ギッちぃと一緒に魔法を使える人獣族の子供と初対面した。
人獣族の子供は小汚ない粗末な衣服を着ていて身体中傷だらけで汚れている。
なんか臭うし、お風呂も入れてないんじゃないの?
頭の左右には獣耳が生えていて、尻尾も生えてるけれど汚れてるぅ~~~。
肥神瑩子
「 初めまして、君の名前を教えてくれる? 」
人獣族の子供
「 ………………ない…です…… 」
肥神瑩子
「 うん?
名前が無い??
どゆこと?? 」
人獣族の子供
「 ………………僕は…拐われた…ので…… 」
肥神瑩子
「 ギッちぃ、盗賊って人拐いもするの?? 」
ギッちぃ
「 何でもするな 」
人獣族の子供
「 ──ひぃっ!!
モンスター?? 」
肥神瑩子
「 あ──、君、大事だからね。
この子は “ ギッちぃ ” って言って賢いテムモンなの。
アタシのペットだから、噛み付いたりしないよ 」
ギッちぃ
「 誰がペットだ。
我は愚主の〈 守護り手 〉であり、夫の筈だが? 」
人獣族の子供
「 テムモン……?? 」
人獣族の子供はテムモンが物珍しいみたいで、マジマジとギッちぃを見ている。
肥神瑩子
「 話の前に先ずは汚れを落として、怪我の手当てが先かな。
ギッちぃ、お風呂の準備って出来る? 」
ギッちぃ
「 今夜は此処で野営だな。
我の奴隷に準備させる 」
肥神瑩子
「 お願いね~~。
アタシの名前が未だだったね。
アタシは肥──、エイス・ヒーカミ。
エイスで良いよ 」
人獣族の子供
「 …………エイス……さん? 」
エイス・ヒーカミ
「 そっ!
今から君には、お風呂に入ってもらうよ 」
人獣族の子供
「 おふろ…?? 」
エイス・ヒーカミ
「 そう。
お風呂に入って、身体の汚れを落とすの。
身体を綺麗にして、さっぱりしたら、傷の手当てをするからね。
それから夕食を食べるよ 」
人獣族の子供
「 ………………あの…………盗賊の人達は…… 」
エイス・ヒーカミ
「 あぁ──、彼奴等なら、もう居ないよ。
モンスターの巣窟にポイしに行ってもらったからね! 」
人獣族の子供
「 ……………… 」
エイス・ヒーカミ
「 あれ?
もしかして、知り合いとか良くしてくれた奴とか居た? 」
人獣族の子供
「 ……いえ……居ませんでした。
…………僕は…ずっと玩具だったので…… 」
エイス・ヒーカミ
「 玩具??
傷だらけなのと関係があるのかな?
言わなくても大体の想像は付くかも……。
盗賊達は居なくなったんだから、もう虐待なんてされないから安心しなよ?
盗賊達に何をされてたとか、辛い事は言わなくても良いからね 」
人獣族の子供
「 ……あ…………はい……(////)」
エイス・ヒーカミ
「 この子を助けて良かったね、ギッちぃ 」
ギッちぃ
「 魔法が使えなければ、モンスターの巣窟行きだったな 」
三眼族
「 影魔王様,影魔妃様──、入浴の準備が整いました 」
エイス・ヒーカミ
「 有り難う!
よし、入浴するよ~~ 」
アタシはギッちぃを抱っこしたまま、人獣族の子供と促して簡要浴室へ向かう。
──*──*──*── 簡要浴室
外から入浴を覗かれないように簡単な浴室が作られている。
浴室の中には浴槽がある。
ドデカい丸い盥みたいな浴槽で、温かい湯が並々と入っている。
アタシは湯桶に湯を入れる。
ギッちぃの頭に刺している串を抜いてから、全身に湯を掛けてあげる。
「 ギッギギィ~~♪ 」とか鳴きながら、ギッちぃは嬉しそうに浴槽の中へ入る。
ギッちぃは、お風呂が好きみたいではしゃいでいる。
浴槽の中でバシャバシャと泳ぐギッちぃの姿は可愛い~~♥️
アタシは人獣族の子供に服を脱がせて、シートの上に座らせた。
湯桶に湯を入れて、人獣族の子供に湯を掛ける。
アタシは石鹸とタオルを使って泡立てる。
人獣族の子供
「 …………あの……これは…… 」
エイス・ヒーカミ
「 石鹸だね。
石鹸を使うと汚れも臭いも消えるの。
身体と髪を洗ったら、浴槽に入って温まってね 」
アタシは泡立てた泡を使って人獣族の子供の汚れた髪と獣耳を洗う。
次に石鹸で泡立てたタオルを使って身体中の汚れと尻尾の汚れを落とした。
湯桶に湯を入れて、泡を綺麗に流し終えたら──。
エイス・ヒーカミ
「 ──うん!
汚れも落ちたし、臭いも取れたかな?
綺麗になってるよ。
じゃあ、浴槽に入って肩まで浸かって温まってね 」
人獣族の子供
「 は、はい……(////)」
人獣族の子供は顔を赤らめながら、浴槽に片足ずつ入れると腰を下ろして肩まで湯に浸かってくれる。
人獣族の子供
「 …………これが…………おふろ……(////)」
どうやら、人獣族の子供はお風呂を気に入ってくれたみたい。
アタシは人獣族の子供の髪を拭くフェイスタオル,全身を拭くバスタオル,身に付ける下着,衣服,履き物を用意した。
入浴を済ませた人獣族の子供の髪や身体に付いた水気をフェイスタオルとバスタオルで拭き取ったら、下着を履かせて、衣服を着させた。
足の裏を拭いて簡単に脱げるサンダル風の履き物を履かせた。
エイス・ヒーカミ
「 入浴が済んだから、次は食事だね。
ギッちぃ、何時迄入ってるつもり?
さっさと出て来なよ 」
ギッちぃ
「 ギィィィ~~ 」
エイス・ヒーカミ
「 全く……どんだけ風呂好きなんだか 」
三眼族
「 影魔妃様──、食事の用意が整っております 」
エイス・ヒーカミ
「 うん、有り難う。
アタシは寝る前に入浴するから、その時は宜しくね 」
三眼族
「 心得ております 」
風呂から上がらないギッちぃは放っとくとして、アタシは人獣族の子供を連れてテーブルに向かう。
テーブルの上には美味しそうな料理が並べられている。
料理が冷めない内に夕食を食べる事にした。
──*──*──*── 馬車の中
人獣族の子供は料理を見ると急に涙を流し始めて、食べてる最中もずっと泣きながら料理を食べていた。
まともな食事をさせてもらえてなかったのかも知れないね。
奴隷生活をしていた時のアタシもパンと水だけだったからなぁ……。
だけど、この子は盗賊に拐われて玩具みたいな扱いをされてたいたらしいから、もっと悲惨な食事をさせられていたかも知れない。
亜人類だからねぇ……、野鼠の死骸とか蛇の死骸とか生きてる昆虫とか食べさせられてたりしていたかも知れない。
飲み水は盗賊達の──、って態々言わなくても分かるよね?
漫画で読んだ知識しかないけど──、漫画は作り話だけど──、何処かの国で実際にあったような事を参考にして書いてる場合もあるから、可能性は否定出来ないんだよねぇ?
学生の虐めでも糞尿を食べさせたり、飲ませたり──、生きてる虫やら土付きの草を食べさせたりするし。
そうそう、水洗トイレの水を飲ませたりする奴も居たよね?
雑巾を絞り終わった汚ない水を飲ませたり、全身に被せたりもしてたよね。
全裸に剥いた後、教室の真ん中で●ナ●ーなんかさせたりして、クラス中の笑い者にしたりしてね!
中学生,高校生の学生ですら思い付く事なんだから、大人の盗賊達が思い付かない訳がないし、やらない訳がない。
この子は人には言えないような酷い事を盗賊達からされていた可能性がある。
ないかも知れないけどね?
お腹が膨れて、危険性が無いって本能的に察知したのか分からないけど、馬車の中へ入るや否や倒れるように眠っちゃった。
今後の話は明日する事になった。
アタシも入浴を済ませたら、今夜は寝ようと思う。
──*──*──*── 簡要浴室
タオル類と着替えを持って浴室へ入ると、未だ浴槽の中で湯に浸かっているギッちぃが居た。
アタシはギッちぃを浴槽から出すと浴室から放り出した。
まさか、アタシが入浴するのを待ってた訳じゃないよねぇ?
全く……、厭らしいったらない!!
寝る前にブッとい針で刺してやらなくちゃね!!




