⭕ フィールドワーク
──*──*──*── フィールド
頭の上に4本の串を刺した状態のギッちぃを抱っこしたまま、アタシは城下町を出て、フィールドに居た。
城下町の外には馬車が走って出来た道みたいな物が出来ている。
道モドキを辿っていけば、街や町へ着けるみたい。
平地が広がっているけど、少し遠くには森が見えている。
肥神瑩子
「 此処がフィールド……。
モンスターなんて居ないじゃん? 」
ギッちぃ
「 未だ城下町の近くだからな。
城下町から500m程離れてしまえばモンスターと遭遇する。
城下町から500m以内はモンスターが近付かない安全地帯だ。
500m先から500m内はグレーゾーンだ。
LVが低くランクも低いモンスターと遭遇する。
戦いに慣れていない新人冒険者が訓練に利用する場所だ。
安全地帯にテントを張り、グレーゾーンで戦闘訓練をする新人冒険者が多いな 」
肥神瑩子
「 へぇ、そうなんだ?
じゃあ、アタシ達もテントを張る? 」
ギッちぃ
「 我の奴隷に場所を確保させ、休憩する為のテントを張らせる。
愚主は何もしなくていい 」
肥神瑩子
「 僕に下僕に奴隷と来たか。
パシリには何をさせてるの? 」
ギッちぃ
「 主に物資調達,食材調達等だ。
態々愚主が店で買い物をする必要はない。
足りない物,必要な物は全て我のパシリが厳選して買い揃える 」
肥神瑩子
「 へぇ~~。
それって便利だね~~。
じゃあ、アタシが身に付けてる装備もギッちぃのパシリがアタシの為に買い揃えてくれたの? 」
ギッちぃ
「 魔王領地に1番近く、最後に立ち寄る街の防具店,装飾店で買い揃わせた 」
肥神瑩子
「 えぇっ?!
何気に最強の装備品を身に付けてるって事?! 」
ギッちぃ
「 そうなる。
スキットの空いている防具と装飾具を選ばせた 」
肥神瑩子
「 スキットって何? 」
ギッちぃ
「 モンスターが落とすドロップアイテムの中に巻物がある。
巻物に書かれた技をスキットに附与する事が出来る。
本来は附与屋へ行く必要があるが、我ならスキットに巻物の技を附与する事が出来る。
要らない巻物は巻物を取り扱う巻物屋へ売る事が出来る 」
肥神瑩子
「 そうなんだ?
巻物ってモンスターが使える技なんだ?
それって凄くない? 」
ギッちぃ
「 モンスターを倒すのが楽しくなるだろう 」
肥神瑩子
「 確かにね?
──で、肝心のアタシの武器は? 」
ギッちぃ
「 我が特別に奴隷達に作らせた至高の1品だ 」
肥神瑩子
「 至高の1品!?
どんなの~~~~!! 」
アタシは興味津々にギッちぃへ聞いてみる。
ギッちぃ
「 うむ──、これだ 」
アタシの腕から離れたギッちぃは、アタシの前に武器を出してくれた!
肥神瑩子
「 ──これが、アタシの武──………………ギッちぃ~~~~? 」
ギッちぃ
「 愚主よ、どうした?
あまりの素晴らしさに感激しているのか? 」
ギッちぃは自信満々にドヤ顔をしてふんぞり返っている。
アタシはギッちぃが出してくれた武器をマジマジと見詰める。
これの何処が武器なんだか!!
肥神瑩子
「 ギッちぃ~~、何で針なの??
然も棍棒みたいに長いし?
串の先で刺されるだけじゃ物足りないって事かな?
この針で串刺しに “ されたい ” って思って良いの? 」
ギッちぃ
「 この針は特殊だ。
愚主にしか扱えぬようにした。
愚主の能力を増幅させる効果もある。
使わぬ時はブレスレットとやらに変わる。
どうだ、凄い武器だろう 」
肥神瑩子
「 この巨大針がブレスレットになるの?
信じられないんだけど~~~ 」
ギッちぃ
「 この針で気絶したモンスターを刺せば倒せる。
戦闘経験の無い愚主にも簡単な作業だ 」
肥神瑩子
「 た、確かに……。
武器らしい武器を用意されたって、触った事なし、使い方を覚えるのも苦労しそうかも…。
針なら家庭科の裁縫授業で使った事があるし、無抵抗のモンスターに刺すだけならアタシにも出来そうかな?
何よりも死なないギッちぃで刺す練習も出来るし? 」
ギッちぃ
「 何故、我で練習する必要がある?
我でなくても良かろう 」
肥神瑩子
「 ギッちぃなら動けるじゃん。
動く敵に針を刺す練習も出来るでしょ?
ギッちぃは的に最適なの!
アタシの為に練習台の的になってよ。
これ、絶対主命令だからね!
拒否は一切受け付けないから! 」
ギッちぃ
「 ………………根に持っているのか、蜘蛛を… 」
肥神瑩子
「 アタシは仕返し出来る迄、何時迄も引き摺る女──な・の♥️
体を張ってアタシの役に立てるんだから、素直に喜びなさいよね! 」
ギッちぃ
「 流石、我の愚主だ。
躊躇なく国中の人間を犠牲に出来る器の持ち主だ 」
肥神瑩子
「 一寸、人聞きの悪い事を言わないですよ。
犠牲者は城内に居た人間だけなんだからね!! 」
ギッちぃ
「 今は未だな 」
肥神瑩子
「 これから先も無いから!
それより、早くモンスターを倒しに行こうよ。
ギッちぃの下僕を出してよ 」
ギッちぃ
「 そうだな。
──我の命に従いて現れ出よ、下僕達よ! 」
肥神瑩子
「 ギッちぃ、その長ったらしい台詞って要るの? 」
ギッちぃ
「 雰囲気だ 」
肥神瑩子
「 あそ。
次からは省略してね 」
ギッちぃが低音イケボで呼び出すと、アタシの影が突然ウネウネと動き出した!?
アタシの影はまるで墨汁で出来た水溜まりみたいに見えていて、トプン…トプン…と鈍い水滴が落ちるような音を出しながら、何かがゾロゾロと出て来ている。
肥神瑩子
「 な……何事なの?! 」
ギッちぃ
「 我の下僕達だ 」
肥神瑩子
「 あ…………えぇっ?! 」
アタシは──、アタシの影から出て来たギッちぃの下僕達の姿を見て、言葉を失った。
だって──、そいつ等は茄子よりも濃い黒紫色をしていて──、アタシにも見覚えがある姿をしていたから。
あの──、某一家のアニメに登場する謎の多い不可思議な生物──ニ●ロニ●ロみたいな姿,形をしているんだら!!
………………影魔だから濃い茄子色をしてるって事かな?
──っていうか、まともに戦えるの??
見た目的には弱そうなんだけど??
肥神瑩子
「 ギッちぃ、これが──、このニ●ロニ●ロしてる変な物体──じゃなくて、生物がギッちぃの下僕なの??
ちゃんと戦えるの?? 」
ギッちぃ
「 問題ない。
見た目で判断すると後悔する。
弱そうだが戦闘に長けている。
初心者用のモンスターが出現するグレーゾーンへ行くか? 」
肥神瑩子
「 そうだね。
行ってみよっか?
どんなモンスターと遭遇するのか楽しみかも! 」
アタシはギッちぃから受け取った長い針を片手で持って、ギッちぃの後を追って歩く。
棍棒みたいに長くて大きな針は、タンポポのフワッフワッな綿毛みたいに軽くて持ち運び易い。
重さを感じないなんて不思議……。
アタシの背後にはニ●ロニ●ロみたいなギッちぃの下僕達がぞろぞろと付いて来ている。
一寸不気味で怖い光景かも知れない。
因みにニ●ロニ●ロには目が付いてなくて、ギッちぃみたいに白くて小さな尖った歯が見えている。
翼は生えてないみたいだから、飛べないかも知れない。