⭕ 救世主LVの上げ方
肥神瑩子
「 ギッちぃ── 」
アタシは期待するような瞳で、ニヤリ──と不気味に笑うギッちぃを見詰める。
ギッちぃ
「 魔王領地の魔物を倒す事だ 」
肥神瑩子
「 は?
何つったギッちぃ!?
本気じゃないよね?
それは冗談だよね? 」
ギッちぃ
「 冗談ではない。
フィールドで遭遇するモンスターを相手にしても大した経験値は得られん。
てっとり早く魔王領地でLVを上げる。
11ヵ月分の遅れも数日で取り戻せる 」
肥神瑩子
「 ………………モンスターを倒した事すらないアタシに、魔王領地に居る魔物を倒せると思うの?!
アタシを殺す気か!! 」
ギッちぃ
「 愚主の装備品は我が用意する。
明日は我が用意した武具を装備し、ギルドへ出掛ける 」
肥神瑩子
「 急に仕切り出すし……。
──どうせアタシには装備品の良さなんて分からないから、ギッちぃに任せるよ。
魔王領地へ行く前にモンスターの倒し方は教えてよ? 」
ギッちぃ
「 そうだな。
武器の扱い方も覚えてもらう必要がある 」
ギッちぃが選んでくれるアタシの武器か。
どんな武器なんだろう?
一寸気になるよね?
肥神瑩子
「 ねぇ、ギッちぃ。
アタシ達の全財産って何れぐらいあるの? 」
ギッちぃ
「 王城から根刮ぎ徴収したからな。
国家予算分はある。
これからも資金を増やしていく予定だ。
愚主は王国で1番の金持ちだ 」
肥神瑩子
「 あ……そう?
一生遊んでも使い切れないだけの資金はあるわけね。
貧乏からのスタートじゃなくて良かった!」
アタシはホッと胸を撫で下ろした。
ゲームでは所持金がショボくてモンスターを倒して路銀を稼がないといけなかったから面倒だったんだよね~~。
装備品を買い揃える為に、何れだけ多くのモンスターを倒した事か。
初っぱなから大金を持ってるアタシには、モンスターを倒しまくるなんて不必要な事で安心した。
肥神瑩子
「 じゃあ、明日は午前中に各ギルドへ行って、テイマー,冒険者,商人の登録を済ませたら、午後からはフィールドで武器の扱い方やモンスターの倒し方をギッちぃが教えてくれる──って事で良いよね? 」
ギッちぃ
「 武器の扱い方もモンスターの倒し方も我の下僕が教える 」
肥神瑩子
「 うん?
ギッちぃが教えてくれるんじゃないの? 」
ギッちぃ
「 我は武器の扱い方は知らん。
モンスターも下僕に倒させる故、我が直々に倒した事はない 」
肥神瑩子
「 なん──じゃあ、ギッちぃは戦えないの? 」
ギッちぃ
「 ギギィ~~? 」
肥神瑩子
「 ギッちぃ……アンタ、そんなんで良く、“ 影魔の王 ” だなんて言えるよね… 」
ギッちぃ
「 ギギィ~~。
ギィギィギッ~~ 」
肥神瑩子
「 可愛こぶって回らなくて良いってば! 」
なんて事だろう?
救世主をサポートするギッちぃが戦えない非戦闘用員だなんて!
〈 守護り手 〉って戦えない仕様なの??
ギッちぃの出来る事は大体分かった。
居てくれると便利で助かる要素を沢山持ってるから有り難いけど、“ 戦えない ” ってのは予想外過ぎる!!
肥神瑩子
「 ギッちぃ、〈 守護り手 〉は全員戦えないの? 」
ギッちぃ
「 LVが無いからな。
戦う意味がない。
戦闘中は後方で愚主を応援する。
戦闘中の愚主に手を貸すのは我の下僕だ。
唯し、下僕には制限時間がある。
5ターン後には消える故、5ターン以内にモンスターを倒す必要がある。
我が戦闘時に呼び出せる下僕は8体迄だ。
戦闘中のフィールドに出現する宝箱やアイテムは我が回収する。
障害物やザコは下僕に排除させれば良い。
戦闘中のモンスターを気絶させ戦闘不能に出来てもトドメを刺す事は出来ん故、トドメは愚主が刺し根絶させる事だ 」
肥神瑩子
「 トドメを刺して根絶…させれば、救世主LVが上がるのね? 」
ギッちぃ
「 そうだ。
愚主が使える能力が駆使し、モンスターを倒せ 」
肥神瑩子
「 腐敗力と腐蝕力だったね?
抑使い方が分からないんだけど? 」
ギッちぃ
「 戦闘時になれば使える。
救世主LVが低い間は戦闘以外で能力は使えん。
先ずは救世主LVを上げ、能力を制御出来るようになる事だ。
コントロールは使っている内に出来るようになる 」
肥神瑩子
「 そうなんだ?
何はともあれ、明日から忙しくなるって事だよね!
明日に備えて早目に寝ちゃおうか? 」
ギッちぃ
「 それが良い 」
アタシは靴を脱いでベッドの中へ入る。
どさくさに紛れて、ギッちぃもベッドの中へ入って来る。
肥神瑩子
「 ギッちぃも寝るの?? 」
ギッちぃ
「 ギギィ~~(////)」
ギッちぃはスリスリとアタシの胸元に顔を擦り寄せて来る。
甘えてくれるギッちぃは可愛いんだけど、さっき迄ガッツリと低音イケボで話していたから複雑な心境……。
肥神瑩子
「 …………おやすみ、ギッちぃ 」
ギッちぃ
「 ギィギィギ~~ 」
アタシは複雑な心境でギッちぃを抱きしめて寝る事にした。
ギッちぃの体は柔らかくて、まるで触り心地の良いクッションを抱いているみたいな感じがする。
そうだよね。
枕を抱きしめて寝てると思えば、どうって事はないよね??
良し、ギッちぃは枕だよ!!
アタシは枕を抱きしめているんだ!!
そう思い込む事にしたら、幾分か気持ちが楽になった気がした。
◎ 変更しました。
僕 ─→ 下僕
予定外 ─→ 予想外
◎ 訂正しました。
集めないと ─→ 稼がないと