⭕ 救世主と超魔王
救世主なのに色々とOUTな部分が有り過ぎるんだけど……、此処はスッパリと気持ちを切り替えよう!
切り替え時って大事だと思うの。
結果を認めて、現実を受け入れて、開き直る──とも言うかも知れないけど?
時にはね、“ 開き直る ” 勇気を発動させる事も必要だと思う。
アタシにとっては、今がその時なんだ。
まともな救世主ばかりじゃあ、面白味がなくて詰まらないじゃない?
1人ぐらいはアタシみたいなイレギュラーな救世主が居ても良いんじゃないの??
良し、そういう事にしとこう!!
肥神瑩子
「 ギッちぃ、超魔王と救世主の関係性について教えて。
アタシ、異世界に召喚された理由とか救世主として何をしたら良いのか何も知らないんだよね。
〈 守護り手 〉のギッちぃなら理由ぐらい知ってるんでしょ? 」
ギッちぃ
「 超魔王とは世界に終焉をもたらす為に、あらゆる災厄を撒き散らし、人類を衰退させる存在──だと人間は思い込んでいるな。
超魔王は “ 彼等の怨念 ” と呼ばれる惑星の意思から生み出されている 」
肥神瑩子
「 ん?
惑星の意思??
惑星って──、この星の事? 」
ギッちぃ
「 そうだ。
惑星は生きている。
生きている為、意思がある。
意思がある故、防衛本能もある。
“ 彼等の怨念 ” はまさに、惑星の防衛本能だ。
惑星には誕生した瞬間から既に寿命が決まっている。
惑星は与えられた寿命を全うする為、与えられた寿命よりも早く尽きないよう、必死に懸命に生き抜こうと全身全霊を懸ける。
故に惑星は、惑星に対して害する存在を駆除し、排除しようとする。
大地を穢し、海を穢し、空を穢し、自然を破壊し、弱き生物から住み処を奪い、食糧を奪い、生命を奪い、我が物顔で地上を支配し、繁殖を続ける惑星にとって有害な生物──人類の数を減らす為に超魔王は生み出され、大陸に現れる。
この大陸だけではなく、他の大陸にも超魔王は出現している。
超魔王は惑星を生存させる為に有害となる人類を減少させ、惑星の負担を減らしているに過ぎん。
超魔王に人類を絶滅させる意志はない。
大陸に存在する人類を9割滅ぼしても、1割は残すように考えて人類の数を減らしている。
それが超魔王だ 」
肥神瑩子
「 へ、へぇ……。
超魔王って絶対悪ではないんだ?
…………倒す必要なんてないんじゃないの? 」
ギッちぃ
「 人類から見れば、人類こそが正義だ。
惑星の意思だろうが、惑星の防衛本能だろうが、人類に仇なす存在は何であれ、どんな事情や背景があろうと関係無い。
人間から見れば、超魔王の存在は “ 絶対悪 ” でしかない。
人間にとって都合の悪い生物は、害虫だの害獣だのと呼ばれ、理不尽に駆除され始末されるだろう?
超魔王もその類いに過ぎない。
人類は、人類にとって都合の悪い存在である超魔王を排除する為に態々異世界から救世主を召喚した 」
肥神瑩子
「 救世主ってのは、人類にとっては都合の良い存在なんだ? 」
ギッちぃ
「 そうなる。
12名の救世主が揃い、超魔王に戦いを挑んだとしても超魔王を倒す事は出来ない 」
肥神瑩子
「 “ どうして? ” なんてのは愚問ね?
超魔王が惑星の意思──防衛本能から生まれた存在だから、倒す事なんか出来やしない 」
ギッちぃ
「 その通りだ。
倒せはしないが、暫く大人しくさせる事は出来る 」
肥神瑩子
「 大人しくさせる?? 」
ギッちぃ
「 100年 ~ 300年程度の短期間だけだが、人間には十分長い時間だろう。
その為の救世主だな 」
肥神瑩子
「 100年 ~ 300年間、超魔王の動きを止める為だけに53名も異世界に召喚されたって言うの??
異世界人って身勝手過ぎない? 」
ギッちぃ
「 愚主が言うのか? 」
ギッちぃはニヤッと厭らしく笑う。
白く鋭く尖った白い歯と牙が不気味に見える。
肥神瑩子
「 笑うな!
確かに時代や世界が違っても人間は身勝手な生き物だと思ってるよ!
この世界の人間の中で超魔王に立ち向かう人達は居ないの?
騎士とか兵士とか傭兵とか冒険者とか勇者とか聖女とか──誰か居ないの? 」
ギッちぃ
「 人間には超魔王が支配する魔王領地へ立ち入る事が出来んのだ。
魔素の濃度が濃く、領地内には不浄が亀裂から噴き出している。
不浄は魔界と繋がっており、魔界と魔王領地を繋ぐ道となっている。
魔王領地は常に魔物が蔓延り跋扈している。
そんな魔王領地へ人間が足を踏み入れれば、魔素に体内が蝕まれ、臓物は腐り死に至る 」
肥神瑩子
「 異世界から召喚した救世主なら魔王領地へ入って死んでも構わないって事? 」
ギッちぃ
「 救世主には〈 守護り手 〉が憑いている。
魔王領地へ入っても魔素の影響を受けない 」
肥神瑩子
「 そうなんだ。
だから、異世界人は召喚した救世主に丸投げする訳ね?
──あれ?
ねぇ、ギッちぃが超魔王の正体と存在意義を知ってるなら、他の〈 守護り手 〉も勿論、知ってるんだよね? 」
ギッちぃ
「 さてな。
我も其処迄は知らん 」
肥神瑩子
「 〈 守護り手 〉と連絡を取ってみたら分かるんじゃないの? 」
ギッちぃ
「 そんな事をしては、愚主の居場所が知られてしまうが 」
肥神瑩子
「 そうなの?
アタシの居場所が他の救世主に知られると都合が悪いの? 」
ギッちぃ
「 救世主には魅了が効かない。
戦闘にでもなれば、戦い慣れてない愚主には不利だ。
我の下僕も戦えはするが、救世主にダメージを与える事は出来んな 」
肥神瑩子
「 それはどうして? 」
ギッちぃ
「 我が〈 守護り手 〉だからだ。
〈 守護り手 〉の僕,下僕,パシリ,奴隷の攻撃に対して無効化が能く故、救世主に怪我を負わせられぬようになっている。
救世主にダメージを負わせられるのは救世主だけだ。
愚主が他の救世主と “ 会いたい ” と言うならば、先ずは救世主LVを徹底的に上げ、愚主自身が強くなる事だ。
救世主同士の殺し合いもザラに起こる。
珍しい事ではない 」
肥神瑩子
「 救世主同士が戦うって珍しくないの?
良くあるって事?
超魔王を弱らせて大人しくさせないといけないんでしょ?
仲間内で殺し合ってる場合じゃないと思うんだけど?? 」
ギッちぃ
「 救世主を倒せば、救世主に憑いていた〈 守護り手 〉を使役し、自分の〈 守護り手 〉に加える事が出来る。
元主人が覚えていたあらゆる技や能力が自分に移る事になる。
強くなる為に救世主同士の殺し──潰し合いが起きる 」
肥神瑩子
「 超魔王っていう脅威をそっちのけでって事? 」
ギッちぃ
「 そうだな。
救世主曰く『 世界を救う救世主は、1人で十分だ 』と言う事らしい。
呆れた理屈だな 」
肥神瑩子
「 酷い話だね…。
救世主が聞いて呆れるよ…。
皆で力を合わせて超魔王に挑めば良いのに、『 救世主は1人で十分 』って……そいつ、馬鹿なの?? 」
ギッちぃ
「 手柄や称賛を1人占めしたいのだろう。
困った救世主も居たものだな 」
肥神瑩子
「 本当ね~~。
でも、そいつは強いんでしょ?
多くの〈 守護り手 〉を連れてるんでしょ?
ヤバい奴じゃない?
出来る事なら関わりたくないよね… 」
ギッちぃ
「 他の〈 守護り手 〉と連絡を取ってみるか? 」
肥神瑩子
「 取らなくて良いよ。
アタシ、未だ死にたくないし。
救世主の水分を抜いてミイラ化させる事は出来ないの? 」
ギッちぃ
「 出来んな。
救世主には〈 守護り手 〉が憑いている。
ミイラ化も出来ん 」
肥神瑩子
「 出来ないんだ…。
仕方無いね。
ギッちぃは今後も〈 守護り手 〉達と連絡を取らないでね!
連絡を絶ったまま拒否し続けてよ? 」
ギッちぃ
「 愚主が望むなら我は〈 守護り手 〉からの一切の連絡を絶とう 」
肥神瑩子
「 有り難う、ギッちぃ。
ギッちぃが連絡を絶ってくれいても、バッタリと遭遇する事もあるかも知れないよね?
他の救世主に簡単に殺されないように救世主LVを上げるしかないか…。
アタシ、LV上げって嫌いなんだよね~~。
だけど、殺られない為に必要なら、覚悟を決めてLV上げ──、するしかないよね?
面倒だけど…… 」
ギッちぃ
「 救世主LVを楽に上げる方法はある 」
肥神瑩子
「 えっ、マジで?!
そんな方法があるなら教えてよ!
面倒なLVを楽に上げれる方法って、どんなの? 」
アタシが身を乗り出してギッちぃに詰め寄ると、ギッちぃはニヤリ──と不気味に笑う。
ん~~~~何か、嫌な予感がする??