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その後の話


さて、その後の話を少しさせて頂きますね。


あの後、フロスト殿下とルディア様はもちろん、仲直りしただけではなく、問題なく学園卒業後に夫婦となられました。


そうそう。フロスト殿下とルディア様の学年の卒業パーティーに私も給仕として参加させて頂いたのですが、結構、面白い展開となりました。


どう見ても仲良しなフロスト殿下とルディア様の間にソフィー様が乗り込んできて、意味不明なことを言い始めました。


曰く。


『ルディア様に虐められていた』と。


しかも、証言者として何名か貴族の子息達も従えてました。


もちろん、お2方共『何言ってるんだ?こいつ』と言わんばかりにきょとんとされました。ソフィー様はそれを見て何故か焦りだし『私はヒロインの筈なのになんで!?』とか仰いました。


正直、私だけではなく、会場にいた全員が理解に苦しんだことでしょう。


なんでと言われてもね~?

そもそも『ヒロイン』ってなに? と。


そして、もちろんルディア様がソフィー様を虐めた事実などございません。

ルディア様にも王太子殿下の婚約者としての立場がございますので、当然護衛がついておりますし、学園内でも殿下と同じぐらい影が隠れて護衛についております。無実の証明は彼らがしてくれるでしょう。


それになによりルディア様はソフィー様を虐める理由も時間もございません。毎日授業が終わると、学園から真っ直ぐ王城に通い、王太子妃教育を受けてらっしゃいますし、その後、ここ数ヶ月は特に公爵邸へと帰られる時間まで殿下と過ごしてらっしゃいましたから。


その旨を僭越ながら、私が申し上げますと、他の給仕達や城内にて働いている貴族当主の方々からもお2人の姿を見たとの証言が上がり、ソフィー様の嘘がすぐにバレることとなりました。


『これは侮辱罪になるのでは‥‥?』


それも会場にいらっしゃる全員が思ったことでしょう。

実際、ソフィー様は騎士達に会場から連れ出されました。証言をした子息達もです。


ですが、ソフィー様はこの国に必要な聖女様。

刑罰を決めることはかなり難航したそうなのです。


結果。

とりあえず、厳重な監視とグラート殿下が目を光らせる中、学園を卒業させることとなりました。

その後、当初の予定通り聖堂で祈りを捧げる務めを全うすることとなりました。もちろん、在学中も放課後は聖堂に向かってもらうと。


ただ、ソフィー様は貴重な聖女様であり、一応男爵令嬢。

もしかしたらということで、聖堂に自ら祈りにくる善良な貴族子息との結婚も決まりました。

とは言っても彼は子爵家の三男。家を継ぐのは長兄なので、ソフィー様と結婚すると同時に平民となります。

それでも、ソフィー様は子供を産み育てながら聖女の役目も担うこととなりました。


‥‥一見、罰ではないのでは?と思われたことでしょう。

ですが、ソフィー様にとっては一番の罰なのです。


何故かというと、旦那様になられた元子爵家の三男は‥‥ハッキリ申し上げますと、見目がよろしくありません。ソフィー様は美人さんでしたので、正しく『美女と野獣』の様な感じです。


ちなみに、あの時証言をしていた子息達の一人とかでもありません。


そしてソフィー様はなによりも見目がいい方が好みらしいのです。

実際、証言をしていた子息達は殿下方程ではありませんが、見目が整った方ばかりでした。

加えて、聖堂で祈り続けるのは疲れるから嫌だと、子供か?と言い返したくなる様なことを言っているそうなのです。


それから、未だにこんなことを言っていたそうです。


『私はヒロインなんだから、フロスト殿下に好かれて王妃になれるはずだった』

『悪役令嬢の癖にルディア様が私を虐めにこないとか、そこからおかしい!』

『王子2人共が私に興味すら抱かないのが絶対おかしい!』


などなど。


意味不明なことばかりです。

あの心優しいルディア様が悪役などあり得ません。

それに、ソフィー様は確かに美人さんではありましたが、それだけ。という感じの方でした。

ソフィー様に引っかかったあの子息達はソフィー様のどこが良かったのか‥‥


顔かしら?

‥‥ま、まさかの体目当て!?


そんなことを考えていると、目の前のソファーに並んで座っているフロスト殿下とルディア様が私を見て笑っていらっしゃいました。


何故ですか!?


「リュディー。顔に出てるよ。」


「え!?‥‥どの辺りからでしょうか?」


「えっと‥‥ソフィー様の処罰の話し辺りかしら?」


「あ。最後の方だけでしたか。‥‥良かった‥‥」


「それで?リュディーは何を考えていたんだ?」


「えっと‥‥ソフィー様に引っかかった方々はソフィー様のどこが良かったのかな~と。」


「ああ~‥‥確かにな。私もそれは分からんな。」


「でもソフィー様曰くフロスト殿下とグラート殿下。両方共興味ぐらいは持つはずだったのでは?」


「らしいけどな。私はディアさえいればいいから、ソフィー嬢には全く興味すら湧かなかったな。」


「ふふっ。ソフィー様の件は殿下が誠実で素晴らしい方だと再認識できただけでしたね。」


「ふふっ。そうね。‥‥私としてはリュディーを始め、城で働いてくれている方々のお陰であっという間に無実の証明ができて、すごく嬉しかった時間だったわ。」


「? 嬉しかったのか?」


「もちろんですわ!リュディーも城で働いてくれている方々も、私の味方になってくれるのに、全く躊躇を感じなかったもの。‥‥ちゃんと『私』を見て信じてくれて、認めてくれてるみたいだったので。」


「みたいではありませんわ、ルディア様。私はあなた様程信頼できる令嬢を知りませんもの。」


「ふふっ。ありがとう、リュディー。‥‥でも、私はもう令嬢ではないわよ?」


「ふふっ。そうですね。失礼致しました。王太子妃殿下。」


私達が和やかに笑い合っていると。


「‥‥ディアは私の妻なんだが‥‥。だが、リュディーのお陰でディアと仲直りできて今がある訳だし‥‥」


そう、殿下が呟いてました。

それにまた、私とルディア様はくすりと笑います。


今日も王城内は平和です。

王太子夫妻はいちゃいちゃしてますが、平和です。

この職場は私の天職であり、天国です。


━━さて、仲良しのお2人に紅茶のおかわりをご用意しないといけませんね。


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