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じれったかったのです!

相変わらず、何故か作者の頭に浮かんだ話です。

━━またか‥‥


そう思う私は悪くないと思うのです。


私の目の前ではこの国、エスポワール王国の王太子で在らせられるフロスト・エスポワール殿下と婚約者様で、公爵令嬢でもあるルディア・ツァールトハイト様が‥‥一言で申し上げますと━━ 喧嘩中でございます。


「ですから、殿下。ソフィー様との距離が」


「いい加減にしてくれ。ソフィー嬢は聖女なのだぞ?」


「だからなんだと言うのですか!?‥‥殿下の婚約者は私ですのよ?」


「だから?」


「‥‥‥」


ああ‥‥ルディア様が‥‥

大体、殿下も眼差しが冷酷過ぎます!それは婚約者に向けるべき態度ではありません!


*****


フロスト殿下は輝く様な綺麗な金髪に透き通った青い瞳が印象的な美丈夫な方なのですが、如何せん眼差しが冷たくて、『氷の獅子』と呼ばれている方。

そんな方が機嫌が悪いのを隠さず、尚且つ眼差しを更に鋭くされたら、いくら幼い頃からの幼なじみ兼婚約者でも怯みますし、怯えるというものです。


ただ、私は知っているのです。

この目の前のお2人の内心を。


だって、お2方共何故かそれぞれ私に愚痴ってくるのですもの。

そんな私が今、このお2人を見て思っていることを申し上げさせてください。


『ああ~~!!もう、じれったい!!!』


━━でございます。


ああ、申し遅れました。私、王宮にてメイドをさせて頂いております、リュディー・ヴィーヌと申します。因みに元子爵家の三女です。

騎士団で出会った伯爵家三男と結婚して家庭に入った数年後、何故か王妃殿下からお声掛け頂き、王太子殿下の護衛兼専属メイド兼話し相手となりました。その流れで殿下の婚約者であるルディア様ともお話する様に‥‥

っと、私の話はこれぐらいに。


そして、目の前のお2方は共に今年18歳となる年で数ヶ月後には学園を卒業されます。その後にご成婚の予定でございます。


なのですが‥‥


先程、お2人の話題に出ておりましたソフィー様。

ソフィー・シェフェール男爵令嬢が入学してからというものお2人の関係の雲行きが怪しくなってきているのです。

ソフィー様はお2方の2つ下のご令嬢なのですが、この方、聖女の力に目覚めたそうなのです。

それはいい事なのですが、何故か殿下が学園にいらっしゃる間ぐらいはソフィー様を支えてあげる様にとの陛下からのご命令。


何故に王太子殿下が‥‥?


確かに、学生の中では最上位の立場をお持ちですし、生徒会長でもある殿下は適任かとは思います。

ですが、なにも殿下である必要はないのです。


何故なら、ソフィー様の同級生に第二王子であるグラート殿下がいらっしゃるのです。

グラート殿下であれば卒業まで一緒なのですから、最初から任せてしまえばいいのでは?と、私は思うのです。


ですが、私は一介のメイド。陛下に直接進言などできないのです。

陛下には陛下のお考えがあるのでしょうが‥‥


それでも、フロスト殿下とルディア様を見ていると、とてもやりきれない思いなのです。


フロスト殿下は眼差しは鋭くても、真面目な方。

ソフィー様の面倒をみろと言われたら、責任を持ってできる限りのことをしてしまう。せめて弟君であるグラート殿下に引き継ぐまではと。

もちろん、その話をルディア様にもしています。


ですが、ルディア様からすればそれでも殿下とソフィー様の距離感がおかしいとのことなのです。


*****


「はぁ~‥‥ルディア。距離感が近くなるのは仕方ないだろう?ソフィー嬢に国の安全が懸かっているんだからな。ソフィー嬢にこの国を出て行かれたら困るのは我々の方なのだぞ?」


まあ、その通りではありますね。


「ですが、ソフィー様は」


「ああ。グラートの婚約者にと話が上がっているな。」


え!?初耳ですが!?

‥‥ますます何故フロスト殿下なのでしょうか?


「でもな~‥‥グラートがな‥‥」


「ああ~‥‥嫌がってらっしゃいましたわね‥‥」


‥‥な、なるほど。それで‥‥


「そうなんだよな‥‥」


「「‥‥‥」」


‥‥‥‥‥何故そこで無言になるのですか?お2方共。


私がそう思っていると。


「‥‥では、殿下。もしかしたら、学園を卒業してもできる限りソフィー様をお支えするのは継続せよと陛下に」


「ああ。言われるかもな。」


「‥‥‥」


「とりあえず、この話は終わりだ。‥‥ルディア、私はまだ執務が残っているんだ。まだこの話を続けるなら日を改めてくれ。」


‥‥『殿下。言葉が足りませんよ!』

この場ですぐにそう言えたらどれ程良かったでしょうね‥‥


「!!‥‥‥‥分かりましたわ。‥‥貴重なお時間を頂いた上に‥‥お見苦しい言葉を申しまして、申し訳ございませんでした。」


そう言って一礼してから踵を返し、扉に向かうルディア様。

その背中に向かって「え?あ、いや」とルディア様に聞こえない程の声で呟いた殿下。


そして、そのままルディア様は殿下の執務室を出て行ってしまいました。

私は堪らず殿下をギッと睨みつつ申し上げてからルディア様を追いかけました。


「殿下。失礼ながら申し上げます。‥‥毎回言っているでしょう!ルディア様に対してのお言葉が足りません!」


「うっ‥‥すまん。‥‥ディアを頼む。」


「ええ。もちろんですとも!それと、愛称で呼ぶのは本人の前でないと意味がありません!」


「相変わらず容赦ないな‥‥リュディー‥‥」


「自業自得ですわ!‥‥失礼致します。」


殿下は後でも話せますので、今はルディア様です。


「ルディア様!」


「!‥‥リュディー‥‥」


すぐに追い付けた私はルディア様の半歩後ろを歩きながら話しました。


「殿下が申し訳ございません。」


「ふふっ。リュディーが謝ることではないわ。」


「そう言って頂けるとありがたいですが‥‥」


「ええ‥‥さて、どうしたらいいのかしらね‥‥」


「一番はグラート殿下が婚約者云々は置いておいてソフィー様についてくださるのがいいのですが‥‥」


「そうだけれど‥‥難しいでしょうね。人には相性があるもの。」


「ですねぇ‥‥」


「ソフィー様に何かあれば殿下の仕事が増えてしまうから、私はやっぱり静観するしかないのかしら?」


「‥‥お辛いでしょうが‥‥」


「ふふっ。リュディー、そんな顔しないで。大丈夫よ。あと数ヶ月の辛抱だもの。」


「はい‥‥。ルディア様‥‥」


「ん?」


言ってしまいたい。

フロスト殿下は昔から変わらずルディア様しか目に入っていないと。

『ソフィー嬢が言い寄ってくるのだけはディアが勘違いしそうだから止めてほしいんだけどな~』と呟いていたことを。

でも、フロスト殿下に止められているから‥‥

『自分で言いたいんだ。だから、こうして話していることはディアに言わないでくれ。』 と。


「‥‥一つだけお聞かせ頂けますか?」


「うん?なにかしら?」


「ルディア様はどんな場面を見ようと、殿下を信じてくださいますか?」


「え?‥‥例えば?」


「ソフィー様が殿下に言い寄ってらっしゃるとか‥‥」


「‥‥‥信じたいわ。‥‥我が儘を言っていいなら、信じられる確固たるものがほしくはあるわ。‥‥‥でも、殿下は報告はしてくださるけれど、他は何も言ってくださらないから‥‥。私のことなどもうどうでも良くなってしまったのかもしれないわね。」


「!! それはあり得ません!」


「!!‥‥リュディー‥‥?」


「は!‥‥突然大きな声を出して驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。」


「‥‥ふふっ。」


「ルディア様?」


「ありがとう、リュディー。あなたがこうして話を聞いてくれるから助かってるわ。」


「いえ‥‥それぐらいしか私には‥‥」


「ふふっ。‥‥リュディー。聞いてくれる人がいるのといないのでは気分が大分違うのよ?」


「!‥‥お役に立てているならば、良かったです。」


そうして話していると、公爵家の馬車がいつも止まる場所まで到着したので‥‥


「では、ルディア様。本日も足を運んで頂きありがとうございました。」


そう言って一礼しました。


「ええ。‥‥リュディー。」


「はい。」


「殿下に執務室に突然押し掛けたことを詫びていたと伝えてくれる?」


「もちろんでございます。むしろ殿下は王太子妃教育でお疲れのはずのルディア様を労うべきなのです。」


「! ふふっ。リュディー、その言い方だと誰に仕えてるのって確認したくなるわ。」


「‥‥確かに私がお仕えしているのは殿下ですが、私は勝手にルディア様にもお仕えしているつもりでおりますので。」


「それは嬉しいわ。‥‥またね、リュディー。」


「はい。」


そうして、ルディア様が乗る馬車が見えなくなるまで見送ったあと、私は言葉足らずの殿下の執務室に舞い戻りました。


もちろん、扉をノックして許可を得てから中に入ったあと。


「殿下。ルディア様、お帰りになられました。」


「そうか。」


「殿下。ルディア様からご伝言でございます。」


「なんだ?」


「執務室に突然押し掛けて申し訳ありませんでした。と。」


「‥‥それにリュディーはなんて返したんだ?」


「むしろ殿下は王太子妃教育でお疲れのはずのルディア様を労うべきなのです。 と申し上げました。」


「うっ‥‥そうだよな~‥‥。私はどこで間違えたんだろうな‥‥」


「その鋭い眼差しを向ける様になってからです。」


「え?‥‥まさか、私はディアを怖がらせてるのか‥‥?」


「今更ですか!?」


「うっ‥‥じゃ、じゃあ、さっきのも‥‥?」


「はい。少なくとも、婚約者に向ける眼差しではありませんでした。‥‥殿下。私が言ったと口外しないで頂きたいのですが‥‥」


「ああ。もちろんだ。」


「ルディア様は殿下のお心が自分から離れてしまったのかもと懸念されてました。」


「!? あり得ないが!?」


「殿下。あなた様の気持ちはまっっっっったく伝わっておりません。」


「!?‥‥嫌われる、というか、見捨てられる可能性があると‥‥?」


「さあ?どうでしょうね?」


「!!!」


‥‥わざと煽りましたが‥‥

やり過ぎましたかね?


「リュ、リュディー!どうしたらいい!?」


「次にルディア様がいらして下さった時に、恥ずかしさなどかなぐり捨てて正直にお気持ちを申し上げたらよいかと。」


「!!!‥‥一番難しいことをサラッと‥‥」


「ルディア様を不安にさせたままでよろしいのですか?先程殿下を信じて頂けますかと伺いましたが、信じたいと仰っておりました。『信じている』ではなく、『信じたい』です。殿下。」


「‥‥‥リュディー。」


「はい。」


「リュディーは私達2人の味方でいてくれるんだな。」


それこそ今更なことを殿下に言われて、思わず笑ってしまいました。


「!! ふふっ。もちろんですわ。私、殿下もルディア様も大好きですもの。‥‥あ、もちろんお仕えさせて頂いてる身としてですよ?」


そう言うと、殿下はくすりと笑ってくださいました。


「ああ。分かっている。‥‥ありがとな、リュディー。」


「勿体なきお言葉にございます。」


こうして殿下はたまに私にも笑ってくださるのですが、毎回感じることがございます。

美形は小さく笑っても絵になるので得だなということです。ですが、ルディア様に笑い掛けないと意味がないとも思っています。


「‥‥ところでだな、リュディー。」


「? はい。」


「結局、ディアにはなんて言えばいいんだ?」


はあ!?

と言いかけたのを我慢して、にっこりと笑顔を向けました。

メイドとして働かせて頂く間に身につけたある意味特技の様なものです。


「ご自身でお考えくださいませ。あなた様の言葉でないと伝わりません。」


「‥‥はい‥‥」


‥‥‥やはり煽り過ぎた様です。完全に自信を失ってそうな表情です。


殿下は『氷の獅子』とは言われてますが、それは髪と目の鋭さのみの噂。その実、容姿端麗、文武両道、品行方正で真面目と幼い頃から有名なのです。そしてルディア様一筋。


‥‥なにを不安に思うことがあるのかしら?

こんな完璧超人、他にいらっしゃらないのに‥‥

‥‥‥‥って私が煽り過ぎたからでした。

仕方ありません。一肌脱ぎましょうか。


「殿下。」


「うん?」


「ふふっ。殿下が喜ぶものを見せて差し上げますので、数日後お時間頂けますか?」


「え?あ、ああ。」


よし。言質はとった。

ふふっ。楽しみだわ~!!


**


数日後。


「‥‥リュディーさん?」


「なんでしょう?殿下。」


「何故私はこんなところに連れて来られたのか、そろそろ教えてくれないかな?」


「ふふっ。殿下が喜ぶ光景をお見せするためですわ。」


「‥‥お茶会が?」


「はい。」


「私が喜ぶ?」


「はい!確実に。‥‥なので、私が合図を出すまで出てきては駄目ですよ?」


「‥‥‥‥とりあえず、リュディーを信じることにする。」


「はい!」


今私達がいるのは王城の庭園。‥‥の植木の側です。

これからここでお茶会があるのですが、その方々には見えない位置です。


そのお茶会も王妃様とルディア様のお2人だけ。

ありがたいことに妃殿下自ら、私にお声かけ頂きまして、このお茶会が実現しております。



先日、殿下の執務室にルディア様がいらっしゃる前に妃殿下の方から、お声掛け頂きました。私はフロスト殿下とルディア様の両方と親しくさせて頂いていることから、『2人の様子はどう?』と。

畏れ多くも、素直に答えてくれて構わないとのことでしたので、全てお話させて頂きました。

すると。


「ふふっ。なかなか面白そうなことになってるじゃないの。リュディー、私も協力させてくれないかしら?」


「え!?よろしいのですか!?」


「もちろんよ。‥‥そうねぇ~‥‥ルディアさんの気持ちを聞き出してるところをフロストに見せましょうか?」


「!! それは最高ですわ!」


「でしょう?‥‥‥リュディー、一応確認したいのだけど、2人は両片想い状態なのよね?」


「です。」


しっかり頷いてお答えしました。


「いいわね~!!若いって!‥‥フロストにとってはソフィー様は眼中にないのね?」


「はい。ルディア様一筋です。」


「‥‥あの人の血ね‥‥」


「私もそう思います。」


「ふふっ。‥‥リュディーの様にハッキリ意見を言ってくれる人は貴重ね。‥‥リュディー。フロストとルディアさんの側にいてくれてありがとう。」


「!! そ、そんな、勿体なきお言葉でございます!」


「フロストは迷惑を掛けていないかしら?」


「ふふっ。はい。誰に対してもお優しい方です。‥‥だからこそ、ルディア様にだけへっぽこになるのは謎でしかありません。」


「へっぽこ!!ほんと、その通りね!!」


そう言って妃殿下は必死で笑いを耐えてらっしゃいます。

普通なら不敬と言われることを続けているのですが、妃殿下も殿下も見逃してくださるので、私はお2方とそれぞれ2人きりの時は自重を緩めてしまうことがあります。



まあ、とりあえず、そうして和やかに妃殿下と相談させて頂いたあとの『あれ』でしたので、こうして殿下を庭園に連れてこれた訳です。


要は私と妃殿下は仕掛人です。


そして、殿下を植木の側に放置してルディア様をお迎えに上がります。

もちろん、近くに護衛と影がおりますので、殿下の安全も確保済みです。


**


ルディア様と妃殿下のお2人だけのお茶会は和やかに始まりました。

ルディア様と妃殿下も仲が良くて、こうしてお茶会を開くことはわりとあるのです。

なので、ルディア様に勘づかれることもなく済みました。


妃殿下様様です。


私は給仕として側に侍っております。

終始和やかなので、ほっこりします。癒しです。

危うく殿下を忘れそうな程に。


そう思っていると、妃殿下がいよいよ切り込みました。


「ところで、ルディアさん。最近、フロストとどう?」


「‥‥正直に申し上げても?」


「もちろん。」


「では。‥‥以前より鋭い眼差しを向けられる様になりましたね。」


「睨まれてるとか?」


「そうですね。それに近いです。‥‥喧嘩も増えましたし、私は殿下にとって煩わしい存在になっているのかもしれません。」


『!?』


まだですよ!

まだ出てきてはいけません!殿下。


ルディア様の死角からそう目で訴えておきました。


「どうしてそう思うの?」


「先日、ソフィー様との距離が近いのではと申し上げた時にも睨まれてしまいまして‥‥私、婚約者なのに一瞬怯んでしまいました。‥‥私、婚約者失格なのかもしれません。」


そう言ってルディア様は俯いてしまいました。

その瞬間、妃殿下のお顔がとんでもないことに‥‥

一言で申し上げますと、般若でございます。

まあ、一瞬でしたが。


「ルディアさんは?」


「え?」


と一転してルディア様が頭を上げてきょとんとしてらっしゃいます。


「ルディアさんはフロストに睨まれて、怖くて堪えられないからと、婚約者をやめたいのかしら?」


「!? 考えたこともありませんわ!‥‥確かに自信は欠片程にまで減ってはおりますが、殿下から直接『お前はいらない』等、言われない限りは望みを持っていたいと思っております。」


「でもあと数ヶ月で学園は卒業だし、その後は婚姻が控えてるわ。仮に結婚後にフロストから『やっぱりお前じゃない』と離縁を言われたら納得するの?」


「!?‥‥‥嫌です。私を切るなら今のうちにして頂きたいです。結婚したらまた希望を持ってしまいます。‥‥殿下に愛して頂けるのではと。結婚したあとに離縁を言われたら、私多分生きていけないので自殺します。」


「「え!?」」『え!?』


‥‥殿下の声が私と妃殿下の声で聞こえてなかったことを祈りたいですが‥‥

それよりも。


「ルディアさん。フロストを今でも好いてくれてるのね。」


「もちろんです。‥‥ソフィー様のこともお話くださいましたし、今のところ卒業後はグラート殿下に引き継ぐことになってますし‥‥」


「本当に、あの人とグラートが勝手なことを言ってごめんなさいね。」


「いえ‥‥」


「私はね、最初から反対だったのよ。ソフィー様をフロストに任せるの。」


「「え?」」『え?』


殿下、隠れてる自覚なくなってませんか?


「フロストには婚約者がいるから、誤解させたら2人共可哀想でしょ?ソフィー様の同級生にグラートがいるんだから、グラートに最初から任せたらいいじゃないってね。」


さすが妃殿下です!

私が申し上げたくてたまらなかったことを仰って下さってたのですね!


‥‥こんな感じに心の中では大興奮ですが、顔に出す訳にはいかないので、必死にすました顔を繕っております。


「そしたら、あの人なんて言ったと思う!?」


「「さ、さあ‥‥?」」


「グラートも新入生なんだから、学園内のことが分かると思うか?って言ってきたのよ!!」


「「‥‥‥」」


確かにその通りだな。

そう思ったのは私だけではない様で、ルディア様も呆気にとられてらっしゃいます。


というか、殿下。ご存知だったのでは!?

私はともかく、ルディア様にお話してないんですか!?


「終いにはソフィー様を聖女だからと言ってグラートの婚約者にしようとするし。グラートは『ソフィー嬢は学園内で世話する程度ならいいけど、婚約者としては生理的に無理』って言ってるのを知らないのかしら!?」


ああ、そんなことを仰ってたんですね、グラート殿下。


「さ、さあ‥‥?どうなのでしょう‥‥?」


妃殿下!気持ちは分かりますが、ルディア様を困らせてますし、目的を見失っておいでですよ!


そう視線で訴えさせて頂きました。

それに気付いて下さった様で‥‥


「ふふっ。ごめんなさいね、ルディアさん。つい熱くなってしまったわ。」


「いえ。‥‥妃殿下。私達の為のお心遣い、嬉しく思いますわ。」


「将来の可愛い義理の娘の為だもの。‥‥話を戻すと、フロストとルディアさんに足らないのは話し合いね。」


私もそう思います!


「そうかもしれませんね。」


さて、そろそろでしょうか?


そう思っていたら、妃殿下が私に笑顔を向けてくださいました。 同意見の様ですね。


その様に判断した私は一礼して植木に向かいました。

ルディア様だけがきょとんとされる中、殿下の前に立った私はにっこりと伺いました。


「いかがでしたか?王太子殿下。」


「え!?」「‥‥‥」


「‥‥殿下。今が最大の機会かと私は思います。」


「そうね。私もそう思うわ。‥‥私達がいたら話辛いかしらね。‥‥リュディー。行きましょうか?」


「は」


「待ってください!!」「待ってくれ!!」


『はい』とお答えしようとしたら、殿下が立ち上がり、ルディア様と共に待ったが掛かりました。


「リュディーはいてほしいです!」


「私もだ。母上、リュディーだけ置いて行ってください。」


「「‥‥‥」」


お2人の言葉に私と妃殿下は数秒固まりました。

が。復活した妃殿下は途端に悲しげな声で訴えました。


「何故私じゃなくてリュディーなのよ~~!!」


「むしろ当然かと。‥‥母上に聞かれるとか恥ずかしい以外ありません。」


「!!‥‥仕方ない。‥‥リュディー、後でかいつまんでとかでもいいから教えてね?」


「は、はい。畏まりました。」


私が頷くと寂しそうに妃殿下が城内に戻って行かれました。


「「「‥‥‥」」」


その後ろ姿に申し訳なさを感じてしまいましたが‥‥


「‥‥あの‥‥殿下、ルディア様。私はお邪魔ではないのですか?」


「「全く。」」


「そ、そうですか。‥‥では、殿下の紅茶をご用意致しますね。」


「ああ。頼む。」


そう言って先程妃殿下が座ってらした席に着いた殿下。


「「‥‥‥」」


なのに何故か私が紅茶をご用意している間、無言なのです。


正直、かなりじれったいです。


なので、紅茶を殿下の前に置いた瞬間、申し上げました。


「殿下。」


「!! はい。」


「また後悔したいのですか?」


「!!」「え?」


「ふふっ。ルディア様。殿下はルディア様がいらっしゃらない時にはもう饒舌でして」


「え?」「リュディー!」


「ふふっ。では殿下、頑張ってくださいませ!」


「お、おう。」


そうして、やっと話し出した殿下。

以前、恥ずかしさなどかなぐり捨てて話せと申し上げたからか、段々顔が赤くなりながらも私に話していたことを次々とルディア様に話し出しました。


そのルディア様も私に話していたことを殿下に話していらっしゃいます。


ああ~やっとじれったい思いから解放されます‥‥



その後話もあります。

それで完結です。

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