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169 『レポートミッション』

 マノーラを拠点とする秘密組織『ASTRA(アストラ)』。

 世界でみてもかなり大規模な組織であり、しかしながら人数や活動内容があまり知られていないことでも有名だった。

 その中でも一つよく知られた点は、諜報活動を得意とし情報収集能力がとんでもなく高いということである。

 ここマノーラでは治安維持組織としても知られるが、そうした性格はトップのヴァレンのカリスマ性と、彼を支える両腕たるレオーネとロメオの圧倒的な手腕、そしてあらゆる情報を有することで形成されていると言われていた。

 そしてその情報を管理するのが『ASTRA(アストラ)情報局』であり、『技術部』狩合璃照緒(カリア・リディオ)と『保安部』或縁丹等笛瑠アルベリーニ・ラファエルの二人なのだ。

 この二人の元には世界中の情報が集積され、この二人の元からは一瞬にして世界中に情報が飛ばされる。

 これを可能とするのはリディオの魔法、《電送作戦(トランスミッション)》だった。

 簡単に言えばテレパシーの魔法である。

 声を魔力に変え、その魔力を電気信号にして飛ばし、これを相手に直接届けるのだが、相手に届いたときには電気信号が人骨を振動させて声が聞こえてくるという仕組みだ。

 サツキの知識と照らし合わせれば、これはサツキの世界の電話に構造が似ており、電気信号を使っている点や振動板を人体の骨に置き換えている点なども、サツキには理解しやすいロジックだった。

 これによって。

 突然、《電送作戦(トランスミッション)》で声が届けられたサツキは、


「聞かせてくれ」


 と耳をそばだてる。




 マノーラ某所。

 リディオはサツキの声が聞こえて、ラファエルと目を見合わせた。


「おう! その人物ってのはアルブレア王国騎士だ。ルーン地方における最高権力者、『独裁官(ディクタートル)樹里阿野冶選琉努ジュリアーノ・ジェラルド

『ちょうどいい』

「どういうことだ?」

『今、戦っているんだ』

「おお! そうだったのか! 大丈夫か!? 相当強いんだぞ!? だって、世界最強の四人、あの『四将』のグランフォード総騎士団長と肩を並べる実力者だ!」

『そうだな。相当強い。だが、俺は今負傷して態勢を整えていて、ミナトが一人でやり合ってるよ』

「ミナト兄ちゃんもいっしょか。ま、まあ、ミナト兄ちゃんなら互角にやり合えても不思議じゃないのか」

『どうだろうな。なんせ、相手は豪速の剣を使う豪腕。俺が持ち直して二対一でもまだ勝率は五分五分』


 五分と五分。

 随分と曖昧なジャッジメントだ、とラファエルは思った。

 それに引き換えリディオはなにも気にしない。ミナトもいっしょにいる。二人ならなんとかしてくれる。そんな信頼ゆえだった。


「ジェラルド騎士団長の魔法は二つある。どこまで推定できたんだ?」


 リディオはサツキの希有な観察力と冴え渡る推理力を知っているので、ある程度まではわかっているものと思った。

 サツキは答える。


『その一、《賽は投げられたアーレア・ヤクタ・エスト》。これは持ち前の豪腕と魔力での特殊な強化でバスターソードを豪速で動かし、完璧な後出しじゃんけんをできるものだ。相手の動きを見てから自身の行動を選択できる機能』

「賽は投げられた。その古代マノーラ語訳が魔法名になっている」

『そうか。まさに、サイコロを投げたら引き返せない。ただし、それは相手にとっての話ってわけだな』

「ああ」


 ここで一度会話が切れ、サツキは次を話す。


『その二、《独裁剣(ミリオレ・スパーダ)》。こっちは支配する剣。斬った場所を支配下に置き、支配された側はその箇所が人体からくりぬかれたように消える。当然、支配されたわけだから行動は束縛される。脳からの司令も聞いてくれなくなる』

「手を支配されれば手を自分の意志で動かすことはできなくなるし、逆に、心臓を支配されても意志が介在しないから呼吸は勝手に続けられる」

『うむ。そこが気になっていた。やはりそうか。やはり束縛。あくまで束縛でしかない』


 これを聞いて、リディオよりもラファエルが驚いた。

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