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165 『アーレア』

賽は投げられたアーレア・ヤクタ・エスト》は言葉通り、その結果に至るものである。

 賽は投げられた。

 投げられたサイコロは元には戻せない。

 つまり、一度出た目を取り消すことはできないのだ。

 サツキはこの魔法の読み方(ルビ)しかわからないし、カタカナで「アーレア・ヤクタ・エスト」と言われてもなにも想像できないが、性質は分析できてきた。


「ミナト」

「なんだい?」

「ジェラルド騎士団長は俺たちの攻撃をすべて見切ってくる。そう思って戦うんだ」

「どんな速さも通用しないってこと、か」

「うむ」

「じゃあ、試していいかい?」

「待つんだ。バスターソードの射程圏に入ったらすぐ退けるようにしておきたい。それができたらいいが」

「そいつは難しい相談だ。それじゃあ直接斬ることができない。あの人の剣はそれほどに豪速だぜ」

「だけど、近づくのがリスクなんだ。だって、ジェラルド騎士団長は俺たちの攻撃を見てから剣を振れる」

「今までもそうじゃなかったかな」

「目から剣まで覆っている魔力は増した。これまでが超人的な力業なら、今度のそれは超常的な力業だ」

「超人的と超常的、かァ」

「これまでのが技術によって他者にはバレない後出しじゃんけんだったのに対して、今度のはそういう魔法で完璧に手を選べる後出しじゃんけんだと思えばわかるか?」

「へえ。まあ、なんとなくわかったよ。でも、消極的にいって勝てる相手じゃないし、やってみようぜ」

「確かに、戦術も思いついてない。やるしかないのはそうだ。が、気をつけるんだぞ」

「ああ」


 サツキとミナトが相談を終えると。

 自身の魔法の分析を聞いていたジェラルド騎士団長が言った。


「七十点といったところか。もう少しを期待したが、貴様は古代マノーラで使われた言葉を知らなかった。それを差し引いてもあと一歩が読めれば、あるいは戦術立案能力があれば、悪くない勝負になっただろう」

「いやあ、それは僕たちの力を見くびりすぎってもんですぜ」


 キン、と。

 ミナトの言葉と同時に、金属音が響いた。

 当然ながらそれはミナトの剣がジェラルド騎士団長に迫ったのを、バスターソードが受けた音であり。

 そこまで行くために、ミナトは《瞬間移動》もして。

 ジェラルド騎士団長は自身への攻撃を、斬られるその直前に気づき《賽は投げられたアーレア・ヤクタ・エスト》を発動させたものだった。


「やはり神速。貴様が今の最速を初手に見せてきていたら……《賽は投げられたアーレア・ヤクタ・エスト》を使うと決める前に仕掛けてこられていたら。我はすでに斬られていたであろう」

「あはは」


 ミナトが笑って。

 ジェラルド騎士団長が斬った。


「だが。両手を使ったとて、パワー不足は変わらん! 散れ!」


 豪腕で斬った。

 二本の剣はつばぜり合いのような形だったが、ジェラルド騎士団長が力を込めるとミナトの剣は押されて構えを取れなくなり、ミナトは剣を取りこぼした。

 そのままミナトは斬られるかに見えた。

 しかし、バスターソードはミナトを斬れずに透かされてしまい、ミナトはもう一本の刀『()()(あま)()(しら)(ぎく)』を抜刀していた。


 ――透かされた! よけた? いや、文字通り、透かされてしまったとか思えん! 透けたのだ! だが、今は次を防ぐ!


 クワッとジェラルド騎士団長は目を見開き、『()()(あま)()(しら)(ぎく)』を受けた。

 そして。

 バスターソードが高く上方に弾かれ、ミナトの突きが腹部に伸びる。

 これに、ジェラルド騎士団長はバスターソードを振り落とすことで応じた。

 一瞬に次ぐ一瞬の攻防を見ていたサツキは、この間にも走り続け、ジェラルド騎士団長との距離を詰めてきていた。

 ミナトがバスターソードをよけるのと同時に。

 サツキの刀が閃いた。

 袈裟に斬る。

《波動》の力を込めた全力の一撃。


「《()(どう)(おう)(げき)》! はああああ!」

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