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158 『センスデンジャー』

 ――やった。


 ミナトの剣尖を緋色の瞳は捉えていた。

 脇腹に剣が当たったと確信したところで、サツキは内心で欣然と剣を帽子の中にしまった。

 サツキの帽子は《()(どう)(ぼう)()()(ざくら)》といって、魔法道具になっている。

 いくつかの特殊な効果を持ち、うち一つに、帽子の中のしまったものを自由に取り出したりしまい直したりできるというものがある。

 これを《(ぼう)》と呼び、所望することからきている。望んだ物を、望んだ場所に出現させる。望んだ場所といっても自分の身の回りであり、対象物は帽子の中に入れて使用者の魔力でリンクさせた物に限るといった制限つきである。このリンクできる対象物は全部で八つ。その一つを刀にしているのだ。

 つまり。

 これによって、一瞬で帽子の中に刀をしまったわけだった。

 さらに言えば、サツキはある下準備をしていたことになる。それは、効果を発動させられることからわかるように、一度刀を帽子にしまっていることであり、そうなるとサツキの刀は普段は取り出した状態から腰に下げているということで、だからこそ突然にして刀を消すといった芸当が可能となるのである。

 この《()(どう)(ぼう)()()(ざくら)》を知らない、あるいは《(ぼう)》を知らない相手からすれば、サツキは刀を消す魔法を使えるのかと思わせられる。いや、それ以上に、刀が消えたことで素手での攻撃に遷移するわけだから、超近距離戦闘では相手の不意を突けることにもなるのだ。

 ミナトの攻撃のヒットに合わせてサツキは反射的にジェラルド騎士団長との距離を詰めてきており、拳を叩き込むつもりだった。

 拳が入れば、ジェラルド騎士団長の発動している魔法が解除される。

 そうすれば、ミナトの肘がジェラルド騎士団長の支配から解放される。

 これらすべての論理はサツキがあらかじめ計算した戦術であり、閃くようにほとんど思考をせず身体は動いていた。

 だから。

 いや、それゆえに。

 逆に行動の修正が効かないことになった。

 判断ができなかった。する間もなかった。

 思考が放棄された瞬間での出来事だった。

 ジェラルド騎士団長は、魔法を使いすらせず剣を振るっただけだが、その剣はあまりに鋭くサツキに迫った。

 バスターソードは、ミナトによけられたあとも迷わなかった。

 空を斬ったそのあと、バスターソードは回り続けた。

 ぐるりと一周して、サツキのことなど眼中にないみたいに、そのまま再びミナトへと斬りかかってきたのである。

 こうなったら、バスターソードの通過点に飛び込んだサツキは物の見事にただ無惨に斬られるだけだった。


 ――よけられない!


 サツキの《緋色ノ魔眼》はそれを理解し、身体は動かすこともできずに、前のめりの姿勢のまま、二の腕のあたりを斬られてしまった。傷は浅い。

 幸いだったのが、胸まで届かなかったことである。

 単にサツキの踏み込みが足りなかったせいでもあり、それは無意識下に危機を察知した結果でもあった。

 しかもあの魔法《独裁剣(ミリオレ・スパーダ)》は発動していなかった。斬られた二の腕は血を吐き出すだけで済み、その支配権を奪われはしなかった。

 対して。

 ミナトは刃をジェラルド騎士団長の脇腹に当て、振り抜こうとしたところだったのだが、判断が速かった。

 おそらく直感だった。

 考えてもいなかったに違いない。

 気づいたときには、ミナトは消えていた。

 得意の《瞬間移動》でジェラルド騎士団長の頭上にいた。

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