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150 『キャントセトルメント』

 ミナトの剣は鮮やかだった。

 あまりの早業に、サツキは一度足を止めるが、すぐに走り直してジェンナーロの背中に裏拳を叩き込む。

 ジェンナーロも気絶。

 こうして三人を倒しきる。

 マサオッチも《消失点消失バニシングポイントイレーサー》を発動させ続けられずに、失われていた消失点も戻ったので、遠近感はもうどこからでも感じられる。

 サツキの傷も、左目に埋め込まれた『賢者ノ石』が回復を促し、おおよそ治癒した。

『瞳の三銃士』が倒されたことを除けば、ほとんどすべてが元通りになった。

 残った敵は、『独裁官(ディクタートル)樹里阿野冶選琉努ジュリアーノ・ジェラルド

 アルブレア王国本土を離れた任務についた騎士たちの中で、ルーン地方におけるアルブレア王国騎士団の最高権限を持つ者。

 その性質は政務官であり軍務官でもある、あらゆる領域の支配権を有している。

 ガッシリとした体躯に、身長は一九二センチ、年齢は四十を超えた分別盛りであり、サツキの話を聞くとサヴェッリ・ファミリーらは愚かブロッキニオ大臣相手にも話の場を作る必要があると豪語するほどの上分別と、ブロッキニオ大臣すらも恐れぬ自信と気迫がある。

 王家への揺るがぬ忠誠心を持ち、クコやリラといった王女姉妹を大事に思っている点からも、和解の余地は充分にあるはずなのだが……。

 サツキたちが王女姉妹をジェラルド騎士団長に渡すことはないとわかるからこそ、敵対はやめられない。そんな状況だった。

 ここまで来ても、最初に感じた、《(けん)(じゃ)(いし)》だけでは命がいくつあっても足りないという恐怖は変わらない。とんでもなく強い人だとわかる。

 話し合いたくても、それは叶わなそうだ。

 だから、戦うしかない。

 それなのに。

 彼は騎士団長という立場にありながら、彼の側近たちのピンチにも手を出さず、ただ見ていた。

 サツキの警戒も無意味になったほど、なにもしなかった。

 そして、ジェラルド騎士団長は言った。


「騎士団長クラスの強者を何人も撃破したと聞いていたが、噂に違わぬ実力を持っているようだ。ジェンナーロの《錯視錯曲オプティカルイリュージョン》も正しく見抜いた慧眼、評価しよう」

「やはり、錯視の効果を狙いながらも、本当に形状や模様を操れましたか」

「それがやつの強みだ。ただし、そうした変化を物体に付与できるのも、やつ自らが創った物体だけだがな」


 もう倒されてしまった味方の能力など、平気で開示して構わないという姿勢だ。


「なるほど。こっちの武器にまで干渉できたらもっと厄介でしたが、そうですか」

「厄介と言うならば、貴様の目が苦手とする能力を『瞳の三銃士』は持っていた。三人が合わされば、貴様を追い詰められると思っていたが、追い詰めたところで打開されたな」


 と、ジェラルド騎士団長はミナトに視線を向ける。

 ミナトは微笑を浮かべ、


「相棒のピンチに駆けつけてこそ、勝負がおもしろくなるってものですぜ。いや、僕の場合は助けに来るのもギリギリになってしまいましたがね」

「それにしても、貴様の魔法はなんだ?」

「……」


 当然ながら、ジェラルド騎士団長が聞いているのは《瞬間移動》のことであろう。

 ミナトが見せた《瞬間移動》は、見せていながら見えはしない。

 見せる気も教える気もない。

 ゆえに、ミナトは答えない。

 微笑を携え、それでも答えることはない。


「そうか。言えないか。それでいい。我も魔法は開示しない。調べれば容易に知られてしまう程度のものだが、あえて言うまい。だが、これだけは告げておく。貴様の魔法は、それは『消えて、高速で移動できる』移動系のもの。我はそう推測した」

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