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147 『ネメシス』

『神速の剣』が銃弾を斬った。

 そこで、サツキはミナトと合流を果たしたことを知る。

 窮地を助けられた。

 視覚のトリックを使った魔法とフィールドの中、サツキは三人の騎士を相手に奮闘し、『死の臨界点(デッドライン)符炉家丁振土陸プロイエッティ・フレドリックと戦っていた。

 一度は勝ったと思った。

 だが、フレドリックの魔法《透視図法的実体パースペクティブ・レンズ》の奥の手に出し抜かれ、サツキは剣で肩を貫かれる。

 そこに追い打ちで銃弾を撃ち込まれそうになったとき、ミナトが助けに来てくれたのだった。

 銃撃してきたのはフレドリックの仲間の騎士ジェンナーロ。

 フレドリック、ジェンナーロともう一人の騎士マサオッチを合わせた三人の騎士は、『瞳の三銃士』と呼ばれる。

 その彼ら三人を率いるジェラルド騎士団長が後ろで様子を見ており、三銃士の強さに苦しめられていたサツキとしては、ジェラルド騎士団長の相手など一人では到底無理だと思っていたのだが。

 ミナトがいれば、それもできる気がした。

 まず、ジェラルド騎士団長と戦うところまで駒を進める如く、『瞳の三銃士』を倒す必要がある。

 それもきっと、ミナトがいればできるだろう。

 ただし。

 条件もある。

 フィールドをミナトに理解してもらうことが第一。

 第二に、サツキの傷がある程度でも回復すること。

 それで初めて、『瞳の三銃士』と戦えるというものだ。


「へえ。遠近感が消失、ねえ。どおりで距離がわからないわけだ。詳しいことはまだよく理解できてないけど、そいつをなんとかしないとだなァ」

「ああ。ミナトにとっては致命的な問題だ」


 致命的エラーが発生するのだ。


「じゃないと、僕はまともに剣を振れない」

「うむ」


 ミナトは、とてつもない空間把握能力を持っている。

 そのレベルがどれほどかと言うと、百人という現実離れした量の影分身を創り出すフウサイがそれらすべての目を持って把握した精度を、ミナトはなんでもないことのようにたった二つの目だけで解してしまうくらいで、別の比較を使えば、ミナトの目に見える範囲なら狂いなく正確に、針に糸を通すように思い描いたポイントに《瞬間移動》できるくらいなのである。

 ゆえに。

 武器を削がれた状態のミナトゆえに。

 ミナトの参戦は、遅すぎた。取り返しはつくが、最初からハンデを背負って戦わなければならない。フィールドへの対策が常人以上に必須だからこそ、ミナトにとってこの参戦の遅さは厳しいものになるのだ。


「彼らは……特に《消失点消失バニシングポイントイレーサー》の使い手・マサオッチさんは、ミナトにとっては天敵と言える」

「目に関わる魔法なら通常キャンセルできるサツキが、こんなことになってるんだ。サツキにとっても天敵かもね」

「だな」


 と、サツキは苦笑した。

 ミナトが横にいれば、苦笑してみせる余裕もあった。


「それで、どうすればいいかな。このままってわけにはいかないだろう?」

「このフィールドは、《消失点消失バニシングポイントイレーサー》によって消失点が一つ失われている。消失点を取り戻す。俺は対策しているからいいが、ミナトにはできない仕組みだからな」

「作戦は?」

「消失点を消した張本人、マサオッチさんを倒す。俺がマサオッチさんに触れれば解除もできるが、再度発動させないためにも倒し切る。ただ、戦術はミナト頼みになる」

「そのために僕が来たんだ。言ってよ」


 ミナトは楽しそうに微笑んだ。


 ――まさか、僕が助けに来るなんて思ってなかったよね。それなのに、もう戦術立案ができてしまうなんて。サツキはほんとよく頭を働かせる人だ。


 頼もしさと楽しさでミナトは心が弾んできた。

 相手の魔法もかなり厄介なのに、ミナトはもう戦闘を楽しんでいるのだった。

 銃弾を斬ったミナトを、敵の三人は警戒している。三人がまだすぐに攻めてこないでいるうちに、サツキは作戦を告げた。

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