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111 『バニシングポイントイレーサー』

 (しろ)()(さつき)の行く先にあったのは混乱であり、空間の入れ替えの先には敵が待っていた。


「あれって……」


 行動を共にしていた植羅亜朱璃(ウェラー・アシュリー)がつぶやいた。

 アシュリーは思わずサツキにくっつく。その感情は目の前の景色に対する恐怖と不安であり、サツキへの信頼であり、しかし不安が勝るものだった。

 なぜなら道の先には、マノーラ騎士団が倒れていたからである。

 敵を把握するよりも先に、アシュリーはマノーラ騎士団の惨状に足がすくんだ。

 十人近いマノーラ騎士が倒れており。

 代わりに、別の人間が立っていた。

 それがサツキの敵であり、人数は四人。

 彼らの衣装から察するに、アルブレア王国騎士であろう。

 四人のうち一人はまだなにも手を出してもない様子で傲岸に腕組みし、三人だけで倍以上の相手を倒したらしい。


 ――手練れらしい。


 サツキはそう判じた。

 彼らは即座にサツキとアシュリーに気づき、動き出した。

 人物の識別と襲撃がほとんど同時だった。


「アシュリーさん、下がって」

「う、うん!」


 戦いになれば、アシュリーにできることはない。

 一つ年下の少年に大人の騎士三人を任せて自分だけ下がるのも気が引けるが、前線に立って足を引っ張るよりはマシだった。

 囮や生贄などが要る場面ではない。

 アシュリーが下がって距離を取り、サツキが前に飛び出して襲撃者とぶつかり合ったのは瞬く間のこと。

 サツキが前に出たおかげで、戦闘開始地点からアシュリーは遠ざかることができた。

 アルブレア王国騎士の中の一人が剣を振るい、サツキの抜刀がその剣に応じてキンと高い音が鳴る。

 ほか二人はまだ攻撃を仕掛けてこない。

 しかしなにもしないわけもなかった。


 ――二人は俺を見てる。そして、その目には魔力が宿っている。目に関する魔法か。


 魔法《()(いろ)()(がん)》で、サツキは魔力を視認することができる。

 魔力の流れも見えるし、それによって魔力が人体のどこに集中するのか、魔力がどのような変質をするのか、そうしたことから相手の魔法を推理する。

 加えて、サツキには目に関する魔法は効かない。

《緋色ノ魔眼》にはそんな効果もある。

 だから、敵の魔法をそれほど警戒するには足りない。

 はずだった。

 しかし騎士の一人がサツキから視線を外し、どこかを見つめ、中空を手でつかむと。

 サツキは頭がふらついてよろめいた。


「……今のは」

「貴様はやつの術中にハマったんだ。城那皐」


 剣を合わせていた騎士がそう言った。


「いったい、どういう……」


 まるでわからなかった。

 確かに目に関する魔法だと思った。

 目に関する魔法なら防げると信じていた。

 それなのに、なにかが起こって、サツキの頭はくらくらして距離感さえわからなくなっている。


 ――俺は今、どんな状態なんだ? なにをされて、どうなっているんだ? 頭がくらくらするのは、三半規管の影響なのか、それとも目の影響なのか、身体のどこかが崩れているのか。


 自分でも把握できないなにかをされた。

 それだけしかわからない。


 ――……いや、おそらく目じゃない。


 サツキはグローブをした右手で左の腕に触れ、そう判断した。


 ――それどころか、俺の身体にかけられた魔法じゃない。正確には、俺の身体の外で発現された魔法らしい。


 特製のグローブは《打ち消す手套(マジックグローブ)》といって、ロメオの魔法《打ち消す拳(キラーバレット)》と同じく魔法効果を打ち消す力を持つ。

 これで自分の身体に触れても、サツキの頭のくらくらは治らなかった。

 つまり、自分の身体にかけられた魔法なら解除される理屈で、サツキの症状が回復しなかったのは人体の外で効果が発現された魔法だからだ。

 そう考えればスッキリする。

 拳を握った騎士が言った。中空を握ったりと、なにかを仕掛けた騎士である。彼は拳を開いて、


「ボクの魔法、《消失点消失バニシングポイントイレーサー》だ」


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