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101 『フォースアタック』

 戦術立案にはデータが要る。

 データのための洞察が不可欠である。

 そのデータを集めるべく、ブリュノの攻撃が始まった。

 常に右手でレイピアを持つ右利きのブリュノには、右肩を撃たれたダメージはかなり痛手だった。

 しかもコロッセオの魔法戦士には慣れない銃器を扱う相手との戦いに、レイピアが本領発揮をするのは難しい。

 それでもブリュノは果敢に攻めた。

魔防領域(デルタ)》結界という砦を、どうすれば攻略できるのか。探るための攻撃が始まった。


「無駄だって言ってるだろ」


 イーザッコの指摘を受けても。

 ブリュノはレイピアを結界に突き刺す。

 だが、届かない。

 魔法物の侵入を許さない結界だから、レイピアは中に入るが、ブリュノが入れない。

 なにを思ったのか、イーザッコはおもむろに手作業を始めた。

 と思ったら、紅茶を淹れていたらしい。

 淹れ終えると、椅子に座ってイーザッコは紅茶の香りを楽しむ。


「やはり、一人の時間は最高だ。これで、目障りなレイピアがなければもっと最高なんだが」


 と、イーザッコは銃を構えて撃つ。

 その動作は見事なまでに早かった。

 しかしブリュノも負けておらず、しっかりとよける。

 そして、ブリュノは結界に体当たりしていった。


「だから。無駄だって言ってるだろ」


 銃弾が飛ぶ。

 結界へと体当たりするブリュノに、それは当たった。

 今度は左のふくらはぎが撃たれた。


「あんまり動かれるとうっとうしいからな。ちなみに、今の体当たりは自分の身体を流れる魔力をゼロにして結界を通り抜けようとしたものだと思うが。無駄なんだよ。人間の身体は、意識せずとも魔力の流れがある。オリジナルの魔法を創造した人間じゃなくても、魔力はどうしたってすべての人間に流れてるんだ。だから、この《魔防領域(デルタ)》結界を通ることは人間にはできないってわけだな」

「なるほど。いや、それでわかったよ。キミはヒントをくれたとも言えるね」

「つくづく、つまらないことを言うやつだな。どうやったってぼくに指一本触れることすらできず、撃たれるだけだってわからないのか」

「見ていれくれ。チナミくん」


 ブリュノは、イーザッコの銃撃に備えているため、チナミのほうは見られない。

 チナミは「はい」とだけ答えた。

 再び、ブリュノは《魔防領域(デルタ)》結界へと突っ込んだ。


「さあ。最後のトライだ」

「これで駄目なら諦めるってか?」


 左のふくらはぎは痛むが、動ける。

 近づき、結界にレイピアを突き立てた。

 まずはレイピアが結界を通り抜け、ブリュノの手が結界に入る直前、魔法を発動させた。


「《魔封じ突きアンチ・マジック・フェンサー》」


 レイピアが魔力をまとう。


 ――やれる!


 この実験結果によって、ブリュノは確信した。


「……」


 魔法の発動を、チナミも見つめる。

 しかし、《魔防領域(デルタ)》結界はブリュノのレイピアが魔法物――つまりは異物であると識別して、レイピアはこれを握るブリュノごと弾かれるように後方へと飛ばされた。

 そこを、イーザッコの銃が狙う。


「諦めろ」


 ブリュノは中空で華麗に身体をひねり、脇腹を銃弾がかすめるのみでかわした。


「最後っていうのは情報収集の話さ。そしてそれは完了した。おそらく、これでチナミくんはイーザッコくんの情報をある程度把握したことだろう。いや、もう一人、オリエッタくんの魔法すらもなにか気づいたかもしれないね」

「へえ。そんなに信頼してるんだ。けど、そんなバカなことあるわけないでしょ」


 オリエッタは呆れたように言った。

 これを無視して、チナミはブリュノに問うた。


「《魔封じ突きアンチ・マジック・フェンサー》。これって、自分の身体にもできますか?」

「できるよ。……ふむ、そういうことか。キミは鋭い。それならばいけるということだね」

「はい」


 こくりとチナミはうなずいた。


 ――鋭いのはブリュノさんのほう。これだけで、私の作戦が伝わるなんて。戦闘センスとかだけじゃなくて、柔軟で頭が切れるんだ。


 ブリュノは楽しげに腕を広げた。


「どうやらボクの見立ては正しかった」

「は?」


 イーザッコが苛立った声を出す。

 しかしブリュノは彼には話していなかった。否、だれかにしゃべりかけているわけではなかった。


「チナミくん。キミは局長であるサツキくんによく似て思慮深く、絶対に期待に応えてくれる」

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