表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
777/1386

122 『スモールチャレンジャー』

 舞台には一人の青年がのぼっていった。

 小柄な青年で、身長は一六三センチほどだろうか。年も二十歳にもならないと思われる。緊張した様子でぺこぺこしながら舞台に立った。

 さっそく『司会者』クロノが声を上げた。


「最初の挑戦者が登場しました! ワタシの記憶が正しければ、コロッセオの魔法戦士ではないようですね! お名前をうかがってもよろしいでしょうか」


 水球貝と呼ばれる丸い貝を、クロノは青年に向けた。クロノはこの貝殻を媒介として音を会場中に響かせる魔法《アリア・フォルテ》を使えるのだ。


「ぼぼ、ぼ、ぼくは、砥率来免治トニョーリッツ・クルメンティス! 砥率来免治トニョーリッツ・クルメンティスといいます! よろち、よろちく、よろしく、お願いしまぁーすっ!」

「ちょっと噛んじゃったけど、大丈夫かー!?」


 クロノがそう言うと、観客たちはおかしそうに笑った。


「だっはっは。なんだあれはよ?」

「あんなのがロメオさんと戦うのか」

「だったらおれが戦えばよかったな。まだマシなバトルできるかもだし」

「な、なら、あたしが闘魂注入を……ぐふふぅ」

「もうっ、だからあんたのそれは迷惑だってのよ」


 会場を静めるように、クロノが言った。


「さあ、ロメオ選手からもなにかひと言ありますか」

「よろしくお願います」


 丁寧なロメオの挨拶に、クルメンティスは目を輝かせてロメオの元へと駆け寄って行く。


「うああ! ほ、本物のロメオ選手だ! あ、あの、おこがましいとは思いますが、もしぼくがこの試合に勝てたら、ぼくも『バトルマスター』を名乗ってもよろしいでしょうか!」


 ロメオはくすりと笑った。


「ええ。構いませんよ。ここからの時間、ワタシに勝てた方に『バトルマスター』の座もお譲りします」


 これを受けて、真っ先にクロノが叫ぶ。


「なんということだー! ロメオ選手、『バトルマスター』の称号さえも譲るとおっしゃいました! チャレンジャーが止まらないことになりそうですが、頃合いを見て、この『司会者』クロノが打ち切る場合があることを皆様もご了承ください! あくまで決勝までのショータイムですからね!」


 当のクルメンティスも、深々と何度も頭を下げた。


「ありがとうございます! ありがとうございます! 器も大きいんですね! あ、あの、ロメオ選手、握手してもらってもいいですか?」

「はい。もちろんです」


 ロメオが手を前に出すと、クルメンティスはその手を握った。


「や、やったー! ありがとうございます! すごいですね、手もがっしりしてる! お、おぉ! 腕の筋肉もすごい! いやあ、すごいですよ本当に! 太もももカッチカチだよ!」


 ベタベタとロメオの身体を触るクルメンティスに、クロノは苦笑いを浮かべる。


「感動するのはしょうがないけど、今は試合前だから落ち着いてくださいね。ささ、離れて。試合を始めますよ」


 クルメンティスとロメオの間に手を入れて、二人を離すと、クロノは試合の開始を告げる。


「それでは、クルメンティス選手対ロメオ選手の試合を始めます! レディ、ファイト!」


 試合が開始された。

 しかし、どちらも動かない。

 ロメオは立ち尽くし、クルメンティスは左の拳をぎゅっと握り、右手で左手を覆うようにする。


「おーっと? ロメオ選手もクルメンティス選手も、お互い動きを見せません! 相手の手の内を探っているのかー!?」


 先に口を開いたのはクルメンティスだった。


「ロメオ選手、間近で見てもかっこよかったです! 鍛え上げられた筋肉、紳士的な佇まい! 『バトルマスター』ってステキですね! 本当にいいですよ、『バトルマスター』って称号は」


 少しクルメンティスの雰囲気が変わったように感じて、クロノが声を漏らす。


「なんの話をしているのでしょうか? もう試合は始まっていますよ」


 クルメンティスはニヤリとして、ロメオに言った。


「ねえ、ロメオさん。さっきの話さぁ。あれ、嘘じゃねえんだよな? ぼくに『バトルマスター』の座を明け渡してくれるって話だよ」


 急にしゃべり方も変わって、クロノは呆けたように実況する。


「な、なんだ!? クルメンティス選手の様子がおかしいぞ!? 急にどうしてしまったんだこの人はー!?」


 かったるそうにクルメンティスは嘆息する。


「どうもしてねえよ。作戦が完了したから、あとは対話してやってるだけだってぇの。『バトルマスター』をくれるって話が本当か、最終確認してるわけ。で、どうなんだ? ロメオさん。いくらぼくの《バンテージ・ポイント》が発動して動けなくなっちまったからって、今更さっきの話はナシなんて言わねえよなアッ!?」

いつも読んでいただきありがとうございます!

今回はクルメンティスのラフイラストを掲載します。

イラストをタップすればみてみんからプロフィールをご確認いただけます。


【クルメンティス】

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ