表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
773/1386

118 『コンディショナルハンド』

(かみ)()』ファウスティーノが《(あく)()()》を借りると言って召喚したのは、悪魔・メフィストフェレスだった。

 メフィストフェレスはサツキを見て、口を大きくゆがませた。うれしそうに口角が上がったのである。


「ああ、なんと愉快なことだ! まさかこんな存在に出会えるとは!」


 感嘆の声を出してサツキの顔を覗き込む。歓喜と愉楽の色を瞳に映し、ファウスティーノに聞いた。


「彼はだれかね?」

(しろ)()(さつき)()(えい)(ぐみ)の局長であり、『ASTRA(アストラ)』のヴァレンやレオーネロメオとも友人ということなのだ」

「士衛組。ほほう、なるほどなるほど。聞いたことがあったね、ファウスティーノ。数日前にキミと話した時点で、『ASTRA(アストラ)』と友好関係を結んだ組織だ。なんで『ASTRA(アストラ)』がそんなだれも知らないような組織とつながったのか不思議だった。だが、そのトップが彼だったか。であれば、納得だよ」

「それで、なにが愉快なのだ? メフィストフェレス」

「ボクにはわかるのだがね、彼はこの世界の人間ではないよ。ファウスティーノ」

「……それは本当か?」


 懐疑の目を向けるファウスティーノ。

 だが、これにはメフィストフェレスではなくミナトが答える。


「ええ。本当ですよ。この方のおっしゃる通りだ。サツキはクコさんによって別の世界から召喚されたらしい。僕はそう聞いていますぜ」

「素晴らしい! やはりそうか!」


 欣然と腕を広げるメフィストフェレスに対して、ファウスティーノは唖然としていた。まさかそんなことが現実にあるのかと驚いている。


「であるならば、ボクは城那皐くんに聞きたいことが山ほどある。彼と話すだけでボクがこれから持て余す退屈は、想像の翼を羽ばたかせる無限の空となることだろう!」

「それはよかったですねえ」

「ああ。ありがとう」


 と、メフィストフェレスがミナトに手を差し出して握手をかわす。


「そして、言わずともわかっていると思うが、ボクは彼を助けることに手を貸そう。この程度の怪我なら明日にはすっかり元通りにできる。それまでゆっくり話でもしようじゃないか。楽しみだなあ」

「いいえ、メフィストフェレスさん。そんな時間の余裕はないんです」


 ミナトの言葉に、メフィストフェレスは首をかしげた。


「どういうことだね? (いざな)()(みなと)くん」

「僕たちにはこのあと、試合があるんです」

「スコットと戦ったのに『ゴールデンバディーズ杯』は終わっていないとは、驚いたね」

「あの方との戦いは準決勝でしたので」

「決勝は二時からだ。それをリディオたちが手を打ち、少し開始時間を延ばすようなのだ」


 と、ファウスティーノが告げる。


「本気でそれまでに治療する気かい? ファウスティーノ。であれば、キミは自分の医師としての腕を見誤っていると気づいたほうがいい。むしろ、医師としての患者を診る目がおかしくなってしまったと思うがいい。どんなに急いでボクが力を尽くしても、早くて夕方……いや三時過ぎではないかな?」

「私もそれはわかっているのだ。しかし、レオーネとロメオの頼みなら可能な限り聞いてやらねばならん。そして、不可能でも叶えてやるのが私の役目だと思うのだ」

「…………少しばかり、熟考してみたよ。わずか十秒ほどだが、存分に吟味させてもらったし、ボクの考えもまとまった。いいだろう。ボクも普段はやらないような努力をしてやろう。ただし、条件がある」

「条件? メフィストフェレス、おまえは私に使役される存在。つまり私の命令は絶対なのだ」


 ファウスティーノの反論にも薄く微笑を返すのみで、メフィストフェレスはミナトとルカに顔を向けた。


「試合後、城那皐と語らいたい。ボクには彼に聞きたいことがごまんとある。何時間あっても足りないだろう。しかし、たったの数時間でもいい。試合後に話す機会を作ってくれるかい?」

「僕は構いません。サツキ本人の返答次第ですが、サツキもいいと言うんじゃないかなァ」

「私も、飲めない条件ではないと思っています」


 ニコリとして、メフィストフェレスは手を合わせた。


「よし決まりだ。城那皐くんは無理するタイプのようだからね、どうせ決勝でも怪我してここにくることになる。そこでしばらく彼と話をしよう。ああ、楽しみだ! おもしろくなるね」


 クツクツ笑うメフィストフェレスに、ルカは怪訝そうに尋ねた。


「あの」

「なんだい? (たから)()()()くん」

「条件はそれだけですか」

「ボクは悪魔だからね。ボクを信頼できない気持ちはわかる、とだけ言っておこう」


 すかさず、ファウスティーノが言葉を挟む。


「大丈夫なのだ。メフィストフェレスはあくまで私に使役される存在に過ぎず、私の命令は遵守する上、約束は守る」


 信頼はしきれないが、ファウスティーノの言葉は素直に受け取る。それしか今のルカにはできない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ