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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
766/1386

111 『リリーフアクト』

 その頃、コロッセオでは。

 リディオがファウスティーノからの通信を受けてみんなに言った。


「サツキ兄ちゃんの治療は問題なくできるってさ! 傷もほとんど元通りに治せるみたいだ!」


 みんながその声を聞いて、安堵の息を漏らす。


「でも、時間は厳しいって」

「ギリギリってこと?」


 ラファエルに聞かれ、リディオは「いや」と答えた。


「試合には間に合わないかもしれないって言ってたぞ。早くても試合が終わる頃だってさ」

「レオーネさんが迎えに行くから、治療後すぐにこっちまで来られるけど、それも見越して間に合わないってことかもしれないね」


 と、ラファエルがまとめた。


「もし間に合わなかったら、どうなるのですか?」


 クコがだれにともなく尋ねた。

 これには、シンジが答える。


「一応、ミナトくんさえいれば一人でも戦えるよ。ルール上は失格にならない。二対一になって不利だから普通なら辞退するんだけどさ。あと、サツキくんの途中からの参加は認められない」

「そうだよね……」


 アシュリーはちょっと驚いた。

 仮に途中参加できたとして、レースとかといっしょでスタートの遅れは不利になる。二対一の状況が長引くだけでリスクが高まるからだ。しかし、それでも許されない。だから完璧に間に合わなければならない。

 ふと、チナミが後ろに気配を感じて振り返った。

 そこには、サングラスをかけたスーツの男性がいた。


「じー」


 彼がだれなのか、チナミにはすぐにわかった。


 ――変装のつもり? 全然隠せてない。


 ナズナやリラもチナミにつられて振り返る。そこで、チナミは男性に声をかけた。


「司会者のクロノさんでしょうか」

「しーっ」


 と、スーツの男性・クロノは人差し指を立ててキョロキョロと周囲を見回す。


「観客の人たちに見つかったら面倒だからさ」

「なにかご用でしょうか」

「サツキくんのことが心配で聞きに来たんだ。今日はリディオくんもいるって言うし、状況もわかるかなって」


 チナミは怪しみこそしないが、疑問だった。


 ――知り合い?


 そこで、リディオもクロノに気づいて明るく声をかけた。


「おう! どうしたんだ?」


「リディオくん!」と大きな声を出して、すぐに周囲を気にしてクロノは小声で質問した。


「あのさ、サツキくんのことなんだけど、大丈夫かな……?」

「ははは! サツキ兄ちゃんとミナト兄ちゃんのこと、気に入ってるよなー! ひいきしちゃダメなんだぞ」

「審判にひいきはないよ。そこは自信を持って言える」


 と、クロノは胸を張る。


「でも、実況は?」

「つい熱が入って……って! ちゃんと平等にやってるよ! そ、そうじゃなくて、大丈夫なんだよね?」

「おう! サツキ兄ちゃんはだいたい元通りになるっぽいぞ」

「よかった、本当によかった……! さすがは『(かみ)()』だよ」


 安心するクロノに、ラファエルが言った。


「ただ、試合には間に合わないと思われます。レオーネさんが連れて来てくれることになっていますが、それでも早くて試合が終わる頃になるそうです」

「そんなぁ……。今の試合も大盛り上がりでファンもたくさん増えて、期待している人も多いのに」

「決勝ですし、期待する人が多いのは当然ですね」


 と、ラファエルは冷静だ。

 クロノは困ったように腕組みした。


「うーん、なんとかならないものか……」


 それを見て、ヒナは改めて思う。


 ――やっぱりこの司会者、サツキとミナトのこと大好きだったわね! 本人は平等なつもりでもバレバレなのよ。まあ、ここまで心配してくれるのは、仲間としてうれしくないでもないけどさ。


 リディオが悩むように言う。


「でもさ、準決勝と決勝が連戦になるのは大変じゃないか? 次の試合まで短いと五分くらいしか休めないだろ? どっちが勝つかわからないけど、勝った組を休ませてあげるって言えばみんな『いいよ』って言うと思うぞ。そうすれば、サツキ兄ちゃんを待つ時間ができるはずだ」

「あのね、観客はそこまでお人よしでもヒマでもないのよ。何十分もぼけーっと座らされてみなさい。みんな帰っちゃうわよ」


 と、ヒナが返す。


「じゃあ、おれとラファエルがだれかとダブルバトルするのはどうだ?」

「だれが知りもしないちびっ子のバトルを見たがるのよ」

「なら、ロメオ兄ちゃんが観客たちと戦うのはどうだ? きっと盛り上がるぞ!」


 さっきからリディオとヒナがとりとめもない会話を繰り広げていたが、急にクロノが叫んだ。


「それだ!」

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