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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
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107 『サイレントコンタクト』

 秘密組織『ASTRA(アストラ)』には、五千人を超える配下が世界中にいると言われている。


 ――あまねく情報網を持つ『ASTRA』が御用達になっている闇医者もいるだろうし、その闇医者こそがコロッセオの外で治療施設を持ち、特殊な患者を引き受けていると考えたらスッキリする。


『ASTRA』の情報機関である『ASTRA(アストラ)情報局』を担うラファエルとリディオは、その闇医者にコンタクトを取れるため、どんな怪我にも動じることはない。


 ――もしかしたら、相手が破壊を得意とする魔法であり、サツキとミナトがその餌食になると考え、あらかじめ手を打っている可能性さえあるわ。試合後、すぐにサツキとミナトをその闇医者の元へ送り届ける手はずを整えているか、あるいはその役目を遂行するために、ラファエルとリディオは今日試合を観戦しにきた。……まあ、最後のはちょっと野暮かしら。サツキとミナトを素直に応援したいと思っているのは見えていたしね。


 ルカがラファエルとリディオに問いただそうとしてそちらに顔を向けたとき、ちょうどリディオが楽しそうに言った。


「見応えあるバトルだったな、ラファエル!」

「そうだね。おもしろかったよ」

「ロメオ兄ちゃんが言った通りだったぞ! やっぱりサツキ兄ちゃんとミナト兄ちゃんが勝った!」

「そこは、言われなくとも予想がつくかな」


 ここでルカの視線に気づいたリディオが、


「ん? どうした?」


 と聞いた。

 これにルカが答える前に、ラファエルは淡々と言った。


「サツキさんのことで、ボクたちに聞きたいことがある。もしくは、ボクたちにしてほしいことがある。でしょうか」

 そろそろ聞いてもいい頃合いだと思っていたので、ルカは率直に問うた。

「ええ。例の医療班以外の医者を、あなたたちは知っている。『ASTRA』に所属する闇医者といったところかしら?」

「惜しい、『ASTRA』じゃなくて友だちなんだ」


 と、リディオが言った。


「その点はいいよ、リディオ」

「で。あそこまでボロボロになったサツキを治せるの? あなたたちがその闇医者の元に連れて行ってくれるか、そのための手配をしてくれているものと考えたのだけど、どうなのかしら」


 ルカの真剣なまなざしを受けて、リディオはニカッと笑った。


「おう、安心して任せればいいぞ! ファウスティーノはすげえ医者だからな! 『(かみ)()』って呼ばれてるんだ!」


 あまりに大仰な呼び名ではないだろうか。ルカの父も難しい手術を成功させたときに「まるで『神ノ手』だ」と称賛されたこともあったが、その異名を取るのはよほどの腕に違いない。


「手配も済ませています。ファウスティーノさんは準備もできていることでしょう。あとは連絡を入れるだけです」

「だからおれたちは今からちょっとサツキ兄ちゃんのところに行ってくる」


 立ち上がる二人に、ルカは申し出た。


「私も連れて行ってもらえないかしら。できることがあるならしたいけど、見てみたいの」

「……なるほど。確か、ルカさんは医者を志していましたね」

「ファウスティーノに聞いてみるから待ってくれ」


 リディオがその闇医者・ファウスティーノに了解を得るには、一度行って帰ってきてもらわなければならない。

 ルカは、舞台上でインタビューを受けていたミナトがサツキを抱えて下りていくのを見る。


 ――確認を取りに行ってもらっていたら、いつになるか。待っていられないわ。


 そう思って、ルカがリディオに向き直ったとき、リディオが笑顔で言った。


「いいってよ! 『是非来てくれ』ってさ、よかったな! じゃあ、行くか」

「え?」


 ルカは目を丸くした。


 ――一体、いつ連絡を取ったのよ! この子、なにもしていないし、間違いなく目の前にいたのに……。


 たったの十秒と経っていないのではないだろうか。目は離していたが、この場にいた気配はずっとあった。

 この短い時間にそんな芸当ができるとしたら、それは魔法以外にない。


 ――声を出さずに連絡を取り合える魔法。かなり便利だわ。それなら、こんな年端のいかない子供が、あの『ASTRA(アストラ)』で情報局を任せられてもおかしくない。


 リディオが魔法を使っていたらしい。それを観察していたのは、ルカだけではなかった。ヒナもである。むしろ、ヒナはリディオから目を離してすらいなかった。


「……」


 ラファエルがリディオとルカに声をかけた。


「行きますよ」

「私も行きたいです!」


 クコも名乗りをあげると、ラファエルは短く答えた。


「連れて行けるのはルカさんだけです。なのですみません」

「ちょっと、なんでルカだけなのよ」


 ヒナが文句を言うが、ラファエルは嘆息して、


「医者として、ファウスティーノさんから学ぶことがあるかもしれませんからね。それに、ファウスティーノさんが許可したのはルカさんだけです。あの人が『是非来てくれ』なんて言うのはかなり珍しいことなんですよ。ボクだってそこまで見送りに行くだけで、ついて行けないんですから我慢してください」

「見送りする人はいっしょに行くぞ!」


 リディオが駆け出して、ラファエルとルカがそれに続くと、クコやヒナたちも追いかけた。

 サツキのためになにかできなくとも、声をかけるくらいはしたいからだ。

 ただ、ナズナだけは治癒力を高める魔法の歌《(げん)()(うた)》を歌ってあげたいと思っていた。

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