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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
753/1387

98 『マジックパーミッション』

「《すり抜け》っていうと、どんな魔法を想像しますか?」


 玄内に問われて、グラートは答えた。


「人や物が、『どこか』を……いえ、『なにか』をすり抜ける。つまり、実体がないみたいに通り抜けてしまう魔法、でしょうか」

「まさに。そうです。ミナトに与えたのはそんな魔法です。元々は、サツキが(せい)()(おう)(こく)の王都で戦ったアルブレア王国騎士が持っていた魔法でした。《ブロッケージ・パス》といって、これにサツキは死にかけながらも、アキとエミの助けでなんとか勝ったといいます。おれはそのとき、没収しました」

「《ブロッケージ・パス》ですか。では、ミナトさんは無敵ですね」

「いや。そうとも限りません。《すり抜け》は物体をすり抜けられるが、人体はすり抜けられない。つまり、武器に頼った戦闘をする相手には無敵だが、素手で触れられるとなんの効果も持たない。拳で戦う相手には弱い。せいぜい、ナックルダスターが意味をなさないくらいのものです」

「なるほど。そうでしたか」


 グラートはふとさっきの玄内の言葉を思い出す。


「しかし、ミナトさんの弱点を補完することができるのでしょう?」

「ええ。ミナトの魔法、《瞬間移動》には大きな弱点がありますから」




《瞬間移動》には弱点があった。

 ミナトはそれを克服する方法がわからなかったし、魔法の性質上、別の魔法に頼らないと解決できないものだとわかっていた。


 ――《すり抜け》は、僕の《瞬間移動》の弱点を補うのに最適だ。サツキがこの弱点を見破ったのがつい最近、ここイストリア王国に到着した頃だったか。


 修業中、ミナトが《瞬間移動》をしたのを見て、サツキは《瞬間移動》の特性に気づいた。『万能の天才』である玄内を除けば、サツキほどに様々なものがよく見える特殊な人間はなく、見抜かれることもなかったであろう。


 ――実は、《瞬間移動》は物体を通り抜けることはできない。あくまで直線的な移動によって行われ、人や物を回り込む必要がある。


 たとえば、壁の向こう側に行こうとしたとき、ミナトは一度壁を飛び越えるか壁の横へ《瞬間移動》し、そこからもう一度《瞬間移動》しなければならない。回り込むように二度の《瞬間移動》を使うのだ。


 ――でも、《すり抜け》があれば、一つの工程で移動できる。この技一つで《瞬間移動》の弱点を補えてしまうのには驚いたなァ。まあ、他者の肉体をすり抜けることはできないんだけど、それができたら無敵もいいところだし、武器による攻撃を受けないだけで僕には充分すぎる。


 人にもらった力で勝っても、剣士として強くなれない気がしていたから、ミナトは極力《すり抜け》を使わないようにしていた。玄内にもそんなミナトの心境はわかっていただろう。

 その玄内が今朝、「勝て」と言った。

 勝つことで、ミナトのネームバリューが上がり、この先ミナトの目標である世界最強の『四将』と戦う機会が作れるかもしれないし、サツキや士衛組のためになるとも言われたが、ミナトには《すり抜け》の使用許可が下りたように思ったのだった。


 ――では、使わせてもらいますか。《すり抜け》を。

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