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2 『トリックスターはおもちゃ箱のユメをみるか』

 サンバイザーに袴姿の二人組は、お店の前で商品の説明を聞いていた。


「これは《(ちり)(あつ)めガス》って魔法道具だ。塵、埃、髪の毛、糸くずなどのゴミ、つまり小さな欠片を集めるガスさ! この特殊な紙製の容器にそのガスが入ってるんだぜ」


 五十近い店主は楽しそうに二人に語る。


「……小さな欠片を集める、か」

「なんか素敵!」


 二人は少年と少女のような若作りだが、すでに二十歳。

 (めい)(ぜん)(あき)(ふく)寿(じゅ)(えみ)

 世界樹に近い『(さい)()ての(むら)』と呼ばれる、星降(ほしふり)(むら)出身。

 この王都には幾度となく来ているが、おもしろい魔法道具や商品は日毎に登場するから二人共興味津々だった。


「おじさん、どうやって集めるの?」

「気になるか。それはな、このボタンを押せばいい。空間を密閉しておく必要はあるが、ボタンを押せば部屋中にガスが充満して、細かな粒子が塵を集めてまた容器に戻ってくるのさ!」

「へえ。小さければ生き物も集めるの?」

「いや、ダニみたいな小さな虫は、死骸だけが対象さ。無生物ならゴミだと判別してくれるって寸法よ。で、紙製だから容器ごと捨てられる。どうだい? いい商品だろう?」

「買った!」

「これはお土産にしよーう」

 アキとエミが購入を申し出ると、店主はうれしそうに手を打った。

「まいど!」




 店を出て歩きながら、アキとエミはしゃべる。


「夜の王都は綺麗だなあ。夢の世界みたいだ」

「だって、夢は夜に見るからキラキラしてるんだよ」


 アキは《(ちり)(あつ)めガス》をかかげて高らかに言った。


「これ、密閉した空間で使うんだってさ」

「閉じ込められた空間ってことだよね」

「うん。それって、おもちゃ箱みたいじゃない?」

「たとえば、今夜の王都もおもちゃ箱だと思う」


 と、エミは楽しげに腕を広げた。


「そうかも! 秘密の箱だ」

「いいね、それ! なんだか不思議が始まりそうだよ。不思議の物語がもう始まってたらどうしよう」


 そわそわと子供のように目を輝かせるエミに、アキが夜空を人差し指で示す。


「いろんな物を連れて、一つの場所に集合させる。そうやってボクらも混ざっちゃおう!」

「できるだけ集めてあげたいね」

「せっかく集めるなら出会いの欠片にしよう」

「うん! それも小さな偶然の出会い。軽やかなステップでみんなをつなげたら、きっと最高で素敵だなって思うの」

「なんか奇跡みたいだね」

「きっとそうなんだよ。だったら……」

「まずは、これをお土産に玄内さんを探さないと!」

「よーし、見つけよーう」


 楽しく軽やかに、月明かりを浴びて踊るように。

 二人はまたどこへともなく歩き、アキが歌うように言った。


「だれに会っても、いずれたどり着く物語なんだ。だったら、出会いは多いほうがいいと思うだろう?」

「同感だね! 王都はこんなに広いんだからだれにでも会えるよ」


 腕を広げて、エミがくるっとターンした。

 すると、ひとりの少女とぶつかった。

 エミは微苦笑で謝った。


「いててー。ごめんねー」


 そこにいた少女は……。

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