表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
745/1385

90 『メイクマネー』

 スコットは、元々はシングルバトルの選手だった。

 シングルバトルを専門とする魔法戦士で、ダブルバトルには興味もない。最強は常に自分一人だと思っていたからだ。

 そんな彼がコロッセオに参加した目的は、家族のため。

 とりわけ、妹のためだった。

 ある日、妹は事故で歩くことができなくなってしまった。

 そこで、スコットは自分の魔法を進化させて、歩けるようになるくらい身体を丈夫にしようと思った。

 しかし、スコットの魔法では無理だった。

 医療じゃないと治らない傷や病気もあると知る。あるいはまた別の特殊な魔法でも治せるかもしれないが、そうした医療を受けるには大金が必要なのだ。

 だから、コロッセオに参加して賞金を稼ぐことにした。

 医療費はすぐに集まった。

 大会に出て名をとどろかせ、ベスト4にも何度か入り、優勝をしたこともあった。

 日頃の参加でも、シングルバトル部門でバトルマスターと戦えるまでまだまだ二十勝以上必要だというのに、大会での成果は周囲を驚かせるものだった。

 期待のルーキーとなった。

 だが、このまま辞めても医療費は稼げたから構わなかった。

 それでもまだ続けるか辞めるかの判断はせず、スコットは一度家に戻り、妹に治療を受けさせた。

 手術の結果は、無事成功。

 リハビリで歩けるようになるとのことで、あとは本人の努力と家族のサポート、そして時間が解決してくれることだろう。


「兄さん、ありがとう。すごいね、そんなに稼げるほど強かったなんてあたし知らなかった」

「そうか?」

「うん。だって兄さん、優しいから。いつもなにかを直すために魔法を使って、戦うところも想像つかなかった」


 確かに、スコットは争うことを好む性格ではなかった。だれかを助けるために魔法を創造したし、血を凝固させる技術まで身につけた。だれかを守るために肉体を硬化する魔法を使ってきた。コロッセオに参加するまで、破壊するために力を使ったことはなかったのだ。


「コロッセオは続けるの?」

「いや。オレは戦うのは好きではない」

「そっか。だよね。あたしのために、戦わせてごめんね」

「い、いや……。コロッセオは、嫌いでもない。オレにもファンがいるんだぜ」


 ちょっと困ったように言葉に詰まるが、不器用に冗談めかしてそう言うと、妹は楽しそうに小さく笑った。


「へえ、すごい。見たかったなぁ。兄さんが戦うところ」


 以降、スコットは妹が自分の試合を見に来るまでは続けようと思い、妹の手術後二ヶ月リハビリに付き合ったあと、それからまたコロッセオに戻った。

 シングルバトル部門での勝利数も増え続け、ついにバトルマスターに挑戦する直前まできた。

 ついた異名は『()(かい)(しん)』。


 ――人や物を強化して直すために創造した魔法で、このオレが『破壊神』などおかしなものだな。妹に知られたら笑われそうだ。似合わないとかなんとか言われるんだろうな。


 そして、スコットがシングルバトル部門でバトルマスターと戦うことになったとき、その椅子に座る最強は別の人物になっていた。

 スコットがコロッセオを離れていたたったの二ヶ月でバトルマスターになった新星、ロメオである。

 バトルマスターをかけた試合で、スコットはロメオに負けた。

 妹が来るまでにはリベンジを果たして、バトルマスターとしてかっこいい姿を見せたかったが、二度目の挑戦もロメオには勝てなかった。


 ――次で三度目。次こそは勝ってやる。《ダイ・ハード》がなくても揺るがない強さを身につけ、ヤツを破壊する。


 そう誓って、シングルバトル部門をまた一勝目から登頂し直していたある日、対戦相手にこんなことを言われた。


「スコットさんの破壊力はすごい! 最強ですね! あ、いや、ロメオさんも強いけど、破壊力はスコットさんです。それを思う存分に発揮できるよう、サポートしてくれる人がいれば、どんな相手にも負けないのに」


 それは、遠回しなダブルバトルの可能性の示唆でもあった。


 ――そういえば、ロメオもダブルバトルをする。レオーネと組み、ダブルバトルでもバトルマスターだ。


 ロメオに勝ちたいと思っていたスコットは、ここでの会話をきっかけに、ダブルバトルに挑戦してみる気になった。

 だが、最初は相方が見つからず、ダブルバトルに出場している選手もシングルバトル部門に出場している選手も、まずスコットが認める実力さえなかった。


 ――やはり、オレにダブルバトルは無理なのか……? またシングルバトル部門で鍛え直すべきだろうか。


 試合に出場するより、試合を観戦して選手を見比べることが増えていた。

 そんなあるとき、同じくロメオに勝てずに悔しさを滲ませるカーメロを見つける。

 スコットは直感した。


 ――カーメロ。ヤツは天性の戦闘センスを持っている。ヤツとなら、オレは最強になれるかもしれない。


 その後、スコットはカーメロにバディーを組もうと誘う。カーメロも同じくロメオに勝てずにいろいろ思うところもあったらしく、承諾してくれた。

 カーメロとバディーを結成したスコットは、快進撃を続けた。

 が。

 やはりロメオは立ちはだかった。

 ダブルバトル部門で五十勝をして挑んだバトルマスターのタイトルマッチでも、結局勝てなかった。ロメオとレオーネを讃えて彼らの名を冠した大会『ゴールデンバディーズ杯』でも勝てず、またもや辛酸を嘗めた。

 今度こそはと挑んだ今回の『ゴールデンバディーズ杯』、スコットは予想外のダークホースにぶち当たった。

 その名は、『神速の剣』(いざな)()(みなと)

 ルーキーの剣士に、かつてないほど破壊された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ