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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
680/1431

25 『カルキュレーション』

 魔法、《ダメージチップ》。

 これは本来肉体が受けるダメージをチップ化するもので、敵味方合わせて複数人に効果をもたらすことができる。

 ダメージがチップ化されている間、肉体はダメージが受けるのを先延ばしにしている状態になっている。

 さらに、この魔法が発動している間に起きた身体への損傷は、チップの数値として計算されるため、魔法を解除したあとも肉体的な損傷は発現しない。それは例えばゲームのようなもので、腕を斬り落とすとチップ化される数値が高得点になるが、魔法発動中も解除後も腕を怪我していないことになる。あくまでチップをダメージ化したときに身体への負荷が大きくなるだけなのである。

 このチップ化されたダメージはいつでも肉体へのダメージに変換することが可能で、これを換金と呼ぶ。

 ダメージは一人につき500点で体力が尽き、それだけのチップを換金すると気絶してしまうのだ。

 また、チップは味方同士であれば受け渡し可能で、バージニーのみがコントロールできる。むろん、換金もバージニーのみが行えるのである。

 チナミは、まだこの魔法の脅威を実感できていないナズナに、例を出して教えてあげた。


「たとえば、サツキさんが350点、ミナトさんが150点のダメージを受けていたとするでしょ?」

「うん」

「そうすると、二人合わせて500点になる。普通なら500点までまだ猶予があるから戦えるんだけど、サツキさんの350点をミナトさんに移したら……」

「あ。ミナトさんが、気絶しちゃう」


 こくりとチナミはうなずく。


「サツキさんはノーダメージになる代わりに、一人で戦わなければならないことになる。だから、二人合わせて500点を受けたらもうアウト」

「その通り。対して相手はそれぞれが何点受けようと問題ではなく、二人合わせて1000点を超えなければ、ずっと二人で戦っていられる。ダブルバトルに適した魔法だね」


 と、ブリュノが言った。


「そんなぁ……サツキさん、大丈夫かな?」

「攻略法としては先行逃げ切りがいいけど、サツキさんたちは修業のために様子見するだろうから、そこが心配」

「ミナトさんがうまくマドレーヌさんの魔法を引き出せば自由に戦えるし、ミナトさん次第な部分はあるかもね」


 リラがそう言うと、チナミも「だね」と答えた。

 そんな参番隊の会話を聞いて、


 ――やはりサツキくんに似て分析力に長けているね、彼女は。しかも頭の回転が速い。()(えい)(ぐみ)といったかな。うん、いいね。


 ブリュノは士衛組そのものにも興味を持ち始めていたが、それもひとえにまずサツキという少年を気に入ったからであった。そのサツキに似た部分のあるチナミもいいと思ったし、士衛組はみんなどこかで局長サツキと鏡合わせになっていることもわかったのだ。

 士衛組がどんな組織かも知らないし知ろうともしなかったが、士衛組のことも気に入っているブリュノだった。


「とにかく、二人は合わせて500点を取られたら、その時点で圧倒的不利になる。相手の魔法を引き出すのが先か、本気を出すのが先か」

「はい。そうですね」


 当然ながら、チナミが気づいたポイントは、サツキも気づいていた。

 ダブルバトルだとチップをコントロールしたほうが有利なこともある、とバージニーは言ったが、その理由をバージニーに聞かれ、サツキはストレートに答えた。


「ダメージを受けるのを先延ばしにするメリットは、味方同士によるダメージの受け渡しにある。つまり、どちらか一方に500点を配分して戦闘不能にして、二対一で戦える。ですよね」

「ご名答! やるね~」

「それに対して、そちらは試合が終わるまで自分たちのチップを換金しなければ、二人合わせて1000点を超えるまで二人で戦い続けられる」

「その通りー! 一応言っておくと、自分チームと相手チームのチップは相殺可能で、同じ分のチップを相殺すればその分の双方のダメージをデリートすることもできるのよ。ひとまず、説明は以上。ほかの技とか工夫とかは、ここでは明かさないでおくね」


 バージニーはそう言って説明を打ち切った。


「ありがとうございます」

「どうも」


 サツキとミナトがお礼を述べると。


「そういうわけだから、サツキ選手、ミナト選手、二人共気をつけて戦ってくれよー! さあ、ここからはだれがいつ動いてもおかしくない! どこからこの戦いが広がっていくのか! サツキ選手とミナト選手はチップ対策にどう戦っていくのか! 要チェックだー!」


 クロノの声が響き渡り、ついにマドレーヌが動き出した。


「いくよ!」

「では、こちらも」


 ミナトも刀に手を添えた。

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