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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 コロッセオトーナメント
674/1389

19 『エデュケーショナルゲーム』

「あ! おかえりなさい! おめでとうございます!」

「おめでとう! サツキくん、ミナトくん!」

「一回戦突破だね! すごいよ! あのカルロス選手とデイル選手を圧倒するなんてさ!」


 一階席では、サツキとミナトの勝利を士衛組とシンジとアシュリーが喜んでいた。ブリュノは勝利は当然のものと思い込んでいるので、いい試合だったと言ってくれた。

 その後サツキとミナトが戻ってくると、最初にクコとアシュリーがおめでとうを言ってくれて、シンジも興奮したように言った。それからバンジョー、ヒナ、チナミ、ナズナ、リラと順番に声をかけてくれる。


「熱いバトルだったぜ!」

「あの偉そうなカルロスってやつを倒してくれて、スカッとしたわ! 初戦突破おめでと」

「さすがです。勉強になる試合でした」

「あ、あの、すごかったです。お、おめでとう……ございます!」

「やりましたね! お疲れ様です」


 これに、サツキとミナトは応援のお礼を述べて、感想を言ってくれるみんなの声を聞いた。

 さらに、アキとエミは両手を挙げてハイタッチを求める。


「おめでとう! イエーイ」

「やったねーっ!」


 サツキとミナトも二人のタッチに応じる。

 横からルカもサツキに言った。


「お疲れ。私も勉強になったわ」

「勉強?」


 すぐにクコがサツキに報告してくれる。


「そうです! ルカさん、新しい技の構想を閃いたみたいなんです」

「なるほど。……確かに、ある種、デイルさんの魔法は空間をつなぐルカの魔法と似ている。参考になる部分もあるかもな」

「ええ。よく考えて、あとでいろいろ試してみるわ」

「うむ」


 そのあと、またほかの選手たちの試合を見ていると、Bブロックが終わる頃にはお昼になっていた。

 昼食は観客席で試合を見ながら食べてもよいことになっている。そのため、サツキたちは観戦しながら昼食をいただいた。

 そして、昼食が終わってすぐ。

 Cブロックの最終戦で、ヒヨクとツキヒが登場した。

 前回大会には出場していないので、二人はシード権を持たない。一回戦から戦って勝ち抜く必要がある。

 ミナトがやっとぼんやりした顔から瞳を大きく開いた。


「さて。どう戦うのかな」

「よく見ておこう」


 サツキはずっとしっかり見ている。しかも、《()(いろ)()(がん)》をずっと使用したままの状態で。

 クコはそれにも気づいていた。


 ――サツキ様、瞳が緋色。お昼ご飯をいただくとき以外はずっと目の魔法を使って試合を見ています。元々、あの魔法は魔力の使用量が少ないから持続時間も長いです。でも、あんなに長時間使い続けられるなんて……サツキ様本人は気にしていないかもしれませんが、マノーラに着いた数日前より、もうかなりの成長を遂げているとわかりますよ。サツキ様。


 だが、サツキが《緋色ノ魔眼》でこの試合を見ていたのもほんのわずかな時間だった。


「たったの一分かァ」


 ミナトのつぶやき通り、試合はたったの一分間で終わってしまった。

 開幕早々、ツキヒが相手の耳と口と封じ、意思疎通をできなくする。そうなった対戦相手は、仲間同士視線を交わし合うがなにも行動できず、ヒヨクに投げ飛ばされて試合終了。

 見応えのない試合だった。

 盛り上がっているのは、強い選手を見たい観客がヒヨクとツキヒの強さを称賛する声と二人の応援をする女性ファンの黄色い声ばかりである。

 アシュリーもあっという間の試合にこれ以上の言葉が出てこない。


「早かったね」

「仕方ないです。このマッチングは実力が釣り合っていなかった」


 サツキがそう言うと、シンジも同意した。


「うん。そんなに弱くないバディーだけど、さすがにシード級の相手を前にしたら見劣りするよ」

「そうなんですか。わたしには、あのコンビがどのような選手なのかわかりませんでした。なにもせずに負けてしまいましたから」


 クコの感想はもっともだった。サツキも同じく、相手選手のことを知らない。だからなにもしないでただ投げ飛ばされて負けたに見える。そんなに弱くないと言われてもピンとこないのだ。


「一つわかったのは、ヒヨクくんとツキヒくんの実力はまだ見られそうにないってことだな」

「だねえ。次の試合に期待だなァ」


 のんびりふわふわした顔でいるミナトに、サツキはジト目を向ける。


「おまえ、さっきの試合見てなかったのか?」

「見たけど、今のじゃあヒヨクくんとツキヒくんの力が見られない」

「その前だ。その前の組のうち、勝ったほうが次にヒヨクくんとツキヒくんと戦うんだぞ」

「おぉ。なるほど」


 ぽんと手を打つミナトに、サツキは呆れたように言った。


「その様子だと興味もなくて覚えてもないだろうから言っておくと、次の試合でも二人の実力は見せてもらえないと思う。おそらく、注目すべきはシードのバディーと戦うときだ」

「そっか。それだけわかれば充分。ありがとう」


 のほほんとしているミナトを見ると、やれやれと思う気持ちもあるが、サツキにはマイペースなミナトらしさに緊張を緩ませてもらえた感覚もある。

 そして、Dブロックも終わると、いよいよ二回戦が始まっていくのだった。

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