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86 『リターンズ』

 九月八日、円形闘技場コロッセオ。

 この日のダブルバトル部門の試合は、全九試合ある。

 プログラムも残りわずかとなった七試合目、ようやくサツキとミナトにも試合の案内がきた。

 スタッフのお姉さんがやってきて言った。


「サツキさん、ミナトさん。このあとの九試合目、本日の最終戦になりますので、準備をお願いします」

「はい」

「わかりました」


 返事をするサツキとミナトに、シンジとアシュリーもエールを送る。


「頑張ってね、二人共!」

「ファイト! サツキくん、ミナトくん」

「ありがとうございます」


 とサツキが返した。


「どうも。頑張ってきますね」


 ミナトもにこやかに答えて、二人は歩き出した。




 試合は八試合目に移り、これも終わろうとしていた。

 通路から見える舞台上でも、試合が終わって選手たちが下りていく。

『司会者』クロノが試合後の選手たちを送り出す。


「ありがとうございました! また新たな『ゴールデンバディーズ杯』の参加バディーが決まりましたね! 明日の楽しみが増えたところですが、次がいよいよ本日最後の試合です!」


 その声に、会場からはいろいろなリアクションが起こっている。

 盛り上がっていることに違いないが、中にはサツキとミナトへの声もあった。


「早くサツキとミナトを出せー! オレはあいつらを応援してんだよ!」

「次は絶対サツキくんとミナトくんだよね。楽しみー!」

「もったいぶらずに、サツキとミナトを紹介してくれ、クロノさん!」


 すっかりコロッセオにも馴染んできている気がして、サツキはおかしくなった。


「結構いるんだな。俺たちを応援してくれる人たち」

「だねえ。柄の悪いのもいるけど、ちょっとうれしいね」

「うむ」

「さあ。呼ばれたわけだし、出ていこうか」


 サツキとミナトが通路から出て行こうとすると、別の声援に気づいて、サツキは足を止めた。それにつられてミナトも立ち止まる。


「どうしたの? サツキ」

「いや。対戦相手、どうやら強敵みたいだぞ」

「え」

「声が聞こえたんだ。俺たちの対戦相手を応援する声が」


 ミナトには、知っているバディーなどほとんどいない。すでに対戦した相手と数日以内に戦うことは滅多にないとも聞いている。

 だから、まるで見当がつかなかった。


「それって、僕が知っている人?」

「忘れてなければな」

「ふうむ、忘れてなければかあ。僕、人の顔と名前を覚えるのは苦手なんだ」


 話している間に、舞台に上がっていく対戦相手のバディー。

 彼らを、クロノは紹介し始めた。


「再び舞い戻ってきた! 我々は待っていた! あれからまだたったの三日ですが、またの参加をワタシたちはうれしく思います! あのバトルマスターと戦った栄誉あるコンビがそろって登場だー! レオーネ選手とロメオ選手とは華やかな戦いを見せてくれました! しかし、あと一歩が届かなかった! そして今日、彼らは戻ってきた! 彦斗出娶漁(ピコット・デメトリオ)選手&来面地増藻(キメンティ・マッシモ)選手です!」


 その名前は、サツキとミナトが初めてコロッセオに挑戦した日に聞いたものだった。

 しかも、対戦相手はあのレオーネとロメオ。

 ダブルバトル部門の戦い方がどんなものかを見せてもらった試合であり、サツキは夢中になって観戦したものだった。

 そんな二人が、ここで登場したのである。

 サツキは驚いて一瞬足が動かなくなってしまったほどだ。


「ああ、あの二人かあ」


 ミナトが思い出したようで、サツキは小さくうなずく。


「うむ。ダブルバトルのエキスパートだ」


 チラとミナトの顔を一瞥すると、口元に微笑みが浮かび、うれしさにキラリと瞳が光った。


「そうじゃないとおもしろくない。肩ならしみたいなマッチングをされたらどうしようかと思ってたんだ。彼らに勝って、大会に出ないとだよね」

「頼もしいこと言ってくれるな」


 と小さく笑って、サツキは表情を引き締める。


「俺たちも舞台に上がるぞ」

「了解」

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