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69 『インベスティゲーション』

 ラファエルがファイルを開いた。


「さて。失踪事件についても気になっているみたいですね」

「今日、サツキ兄ちゃんとミナト兄ちゃんが戦った相手の情報も、もう入ってきてるぞ」


 リディオがそう言うと、ミナトは楽しそうに笑った。


「さすがは『ASTRA(アストラ)』だねえ」

「おう。『ASTRA(アストラ)』のみんなはすごいんだ」

「といっても、みなさんは会場で見かけたことを我々『ASTRA(アストラ)情報局』に提供してくださっているだけですけどね。それ以上のことはまだあまりわからないかもしれません」


 謙遜するようなラファエルだが、イストリア王国の人間は(せい)()(おう)(こく)の人間ほど謙遜をしない。つまり、本当に得られている情報は浅めなのだろう。

 それでもサツキは聞きたかった。


「わかる範囲で、教えてもらえるだろうか」

「もちろんですよ」


 ミナトが切り出す。


「じゃあ、最初に。今日も失踪事件はあったのかな?」

「ええ。ご存知のように。ミナトさんたちが出会ったアシュリーさんの兄、サンティ選手が消えました。彼がどうやって失踪したのか、それを知る者は『ASTRA(アストラ)』にもいません」

「やっぱりアシュリーさんのお兄さんは失踪したのか」


 サツキがつぶやく横で、リディオがミナトに聞いた。


「ミナト兄ちゃんの対戦相手だったんだろう? 残念か?」

「いやあ、戦いたかったが、それよりもアシュリーさんの話を聞くと心配してしまうよ」

「だよなあ」


 リディオもなんとも言えない顔だった。いつも明るいリディオだが、心境が複雑になる情報を話す際には笑顔でもいられない。

 チラとサツキとミナトの顔を見て、ラファエルはファイルに目を落とす。


植羅桟邸(ウェラー・サンティ)。年は十七歳になります。出身はフィオルナーレ。イストリア王国内の都市で、中部から北部にかけての場所にあります。ここマノーラより北です。少し前までは学院にも通っていたが、両親を亡くしてからは学院を辞め、大金が稼げるコロッセオへの参加を決意しマノーラに訪れた。それが昨日。そして今日、コロッセオに初参戦するはずだった、というのがサンティさんについてわかっている情報です」


 丁寧に情報を読み上げてくれたらしい。

 ちなみに、フィオルナーレは、サツキの世界でいうフィレンツェあたりだ。


「お二人の知っている情報と比べて、間違いはありませんか?」

「うむ。おおよそアシュリーさんから聞いていた通りだ。アシュリーさんは、お兄さんは自分を生活させるために学者になる夢を諦めたと言っていた」


 ミナトが問うた。


「学者になる夢って、どんな学者になりたかったのかな?」

「ええと、学院で専門的に学んでいたのは物理学ですね。ただ、科学全般を勉強していたようです」

「アシュリーさんも、お兄さんがどの分野学者かまでは言っていなかったもんな。そうなると、物理学なのかも」


 とサツキも納得する。


「サツキさん、ミナトさん。ほかに聞きたいことはありますか?」


 ラファエルの顔を見返し、サツキは聞いた。


「元々、俺たちは失踪事件についてなにかあれば、そして『ASTRA(アストラ)』に協力を頼まれたら動こうと思っていた。が、アシュリーさんと知り合って、失踪事件のことが気になってる。マノーラの治安を守るのは『ASTRA(アストラ)』の仕事なのはわかってるし、俺たちが首を突っ込むべきじゃないかもしれないけど、俺たちにも協力させてほしい。いいかな?」

「僕もそう思ってたんだ。僕たちも、失踪事件を解決したい。士衛組は正義の味方だしさ」


 リディオがラファエルに目を向ける。


「おれたちが決めることじゃないとは思うけどさ、ラファエル、おれはサツキ兄ちゃんとミナト兄ちゃんの気持ちがうれしい」


 ふっと表情を和らげ、ラファエルはうなずいた。


「だね。ちょうどレオーネさんとロメオさんも忙しいし、協力を仰ぐのも悪くないかもしれない。なんといっても、士衛組は正義の味方なんだしね」

「だよな!」


 二人の意見が一致して、ラファエルがサツキとミナトに小さく頭を下げた。


「そういうことですから、協力お願いします。こちらからも情報の提供はしますし、事件を士衛組だけで解決してくれとも言いません。要請があればぼくとリディオも動きます。どうでしょう?」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」


 サツキがまず答えて、ミナトも続けて、


「ラファエルくん、リディオくん。よろしくね。頑張ろう」

「おう! 頑張るぞー!」

「はい」


 拳を突き上げるリディオと微笑するラファエル。

 どうやらレオーネとロメオは忙しく失踪事件についてあまり調査する余裕もないようだし、士衛組でやれることはしていきたいとサツキは思った。


 ――みんな、最近は修業を頑張っていた。その成果を実感できるタイミングになるかもしれないし、さっそく明日からみんなには動いてもらおうか。


 このあと、サツキは士衛組のみんなを集めて失踪事件について話し、各隊ごとの仕事を確認したのだった。

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