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50 『デイスリー』

 円形闘技場コロッセオ。

 ここでは、今日もシングルバトル部門とダブルバトル部門の試合が行われる。サツキとミナトは両方にエントリーした。

 試合開始の少し前にはスタッフが呼びに来てくれるため、二人はほかの試合を観戦することにした。

 観戦席に行こうとしていると、会場の会話が聞こえてくる。


「今日、ツキヒくんが出るのよね」

「ヒヨクくんもね。楽しみだわ~」

「あたしもっ。ツキヒくん超可愛いんだもん。めっちゃ応援しないと」

「そうね!」


 サツキは内心で小首をかしげた。


 ――ブリュノさんみたいな人気の魔法戦士が出場するのかな。強いんだろうか。


 ほかにも、若い女性ファンがヒヨクとツキヒという名の選手の噂をしてはしゃいでいる。


「ヒヨクくんとツキヒくんの息の合ったコンビプレイ、早く見た~い」

「ね~! ダブルバトルだけやればいいのにー」

「でも、明後日はダブルバトルだけだよ。大会だし、ヒヨクくんとツキヒくんも出るし、今日は大会前最後の調整ってやつだね」

「そっかあ。明後日も絶対見に来ないとだね」

「もちろん」

「さあ、まずは今日の応援よっ!」


 会話の内容から、彼ら二人はダブルバトルのコンビだと思われる。


 ――大会に出られるってことは、弱くはなさそうだ。人気があるのも、強さがあってこそ。名前がちょっと晴和人っぽいし、気になるな。


 ミナトがサツキを振り返った。


「おや。サツキ、なにかあったかい?」

「いいや。観客の反応から、情報収集をしていただけさ」

「へえ」


 サツキとミナトがその場から去ったあと、二人に気づいた観客もいた。それもまた若い女性で、


「あら? さっきの二人組、サツキくんとミナトくんじゃない?」

「え? ええっと、確か、レオーネさんとロメオさんのお友だちっていう可愛い晴和人の子たち?」

「そうそう。ルックスはさすがにヒヨクくんとツキヒくんのほうが上かもだけど、二人もなかなか可愛いし、わたしこっそり応援してるのよね」

「ゴールデンバディーズ杯にも出るんだって言ってたよね、あの子たち。頑張って欲しいよね。アタシもイケメンの活躍は大歓迎だし」

「でも、勝利数はあと一つ必要。今日、マッチングしなければいいけど」

「うん。強いからね、ヒヨクくんとツキヒくん」


 そんな会話を織りなす人たちの横で。

 コロッセオの受付には、また新しい参加者がやってきていた。


「参加申請お願いします。シングルバトル部門で。名前は――」




 まだ試合は始まらない。

 サツキとミナトが『司会者』クロノの登場を待っていると、武闘家風の少年がやってきた。

 名前は(うる)()(しん)()、同じ(せい)()(おう)(こく)出身だ。

 シンジは、サツキがコロッセオに挑戦した最初の対戦相手であり、そのときにはサツキが勝利したが、身体を餅状する魔法《(もち)(はだ)》にはサツキも苦戦したものだ。このコロッセオの先輩で年も一つ上、試合後に仲良くなってから面倒を見てくれている優しいお兄さんである。


「やあ。二人共、今日も早いね」

「シンジさん。こんにちは」

「こんにちは。僕たち待ちきれなくて」


 三人並んで座って、ミナトが聞いた。


「今日はシンジさんも出るんですか?」

「せっかくだからね。エントリーしたよ。二人は……聞くまでもないか」

「はい。僕らもエントリーしました。シングルバトル部門とダブルバトル部門」

「そっか」

「いやあ、今日はどんな人と戦えるだろう」


 ミナトがそう言うと、シンジは思い出したように、


「あ。さっき、強そうな騎士がいたよ。参加登録してた。今日、だれか当たるかもしれないね」

「へえ。そりゃあ楽しみですな」


 ミナトは飄々と相槌を打つ。

 しゃべっているところへ、スタッフが呼びにきた。

 スタッフのお姉さんはサツキに声をかける。


「サツキさん。本日の二試合目になります。これより最初の試合も始まりますので、準備をお願いします」

「わかりました。では、いってきますね」


 サツキはシンジとミナトにもそう言って席を立った。

 お姉さんに連れられて歩いていると、観戦席に女の子がいた。


 ――ここは、選手とか関係者しか座れない観戦席だ。


 コロッセオの一階部分は、参加選手と関係者やVIPが観戦できる特別席になっており、二階から四階は一般の観客席となっている。

 また、選手は控え室も一人一部屋が用意されるが、サツキたちは試合を観戦するためにも一階部分で観戦していたのだ。

 そんな一階席に、サツキと変わらないくらいの年の女の子が座っている。


 ――あの子は、参加者だろうか。……そうは見えないが。


 おとなしそうで、とても戦う雰囲気ではない。だが、実は戦えるファイターもいるため、見かけで判断するのは禁物だ。


 ――もしああいう選手と当たることがあっても、油断はしないように。だな。


 気を引き締めて前を向き歩いていると、戦いの舞台へと続く暗い通路の前まで来ていた。

 ここからは、もう会場の声も聞こえてくる。


「さあ。試合も始まって、両者にらみ合っているー! 武器は剣と拳、いずれも接近戦を得意とする魔法戦士同士の戦いだ! どちからが動いたところで、試合が大きく動く試合になりそうだぞー!」

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