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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編】
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幕間紀行 『ファントムケイブシティー(16)』

 弐番隊は、士衛組の技術者集団といえる。

 まず、『万能の天才』玄内はあらゆる機械装置や魔法道具を創り出すことができる。

 次に、ヒナはサツキや玄内と地動説証明のために研究をする傍ら、持ち前の数学や物理の知識、思考力を生かして玄内の発明を手伝うこともしばしばである。

 最後に、バンジョーは料理という形でその技術をふるっている。士衛組の料理人であり、屋台を出したりして旅の資金を稼ぐこともある。

 勉強など論理的思考を必要とすることが苦手なバンジョーだが、弐番隊隊長の玄内には頭が上がらず、同じ弐番隊としてヒナと共に玄内の手伝いをさせられることもあるのだ。

 そこに、普段からヒナと玄内といっしょに天文班として研究するサツキも、手伝いをするパターンがよくあった。

 玄内にとって、未知の不思議な知識を無数に持つサツキは、話していてこれほどおもしろい相手もいない。サツキのいた世界の話は、ヒナや玄内は科学方面で、バンジョーは料理方面で好んだ。

 みんなには内緒でサツキとこっそりマンガを描いているリラ以外では、なんにでも興味を示すクコと、この弐番隊がサツキの世界の話を聞きたがる。


「閃光弾じゃないけどさ、サツキの世界ではライトってどんなのがあるの?」


 ヒナが聞いた。


「いろんなのがあるからな……」

「照明じゃなくていいわよ」

「ランプとか提灯とも違った、変わってるところでいうと……」

「変わってるところでいうと?」

「そうだ、ヒナが好きそうなのがあったぞ。映写機みたいに部屋の天井に天体を写せる機械でさ」

「え、なにそれ!」

「プラネタリウムっていうんだ」

「すごい、それ欲しい! 先生、作れる?」


 敬語を忘れて喜々と尋ねるヒナが、「ですか?」と丁寧に付け足す。玄内は手を動かしながら答える。


「仕組み次第だな。サツキ、どうなってる?」

「ええと、方式があって、ピンホール式とレンズ式があったと思います。ピンホール式の話をちょっと本で読んだことがあるんですけど、球状の装置に、星の位置に合わせて穴を開けて、ドーム型の天井に映すんです。わかりやすく言うと、光源に穴の空いた球状のカーテンをかける感じでしょうか」

「なるほどな。穴から出た光が星の光として天井に映るんだな」

「はい。それを作った人のお話がおもしろかったんですけど、大変だったんだなって感心したんですよね」

「で、レンズ式は?」


 とヒナが聞く。


「確か、レンズ式は複数のレンズでドーム型の天井に星空の映像を映す。だったかな」

「先生の魔法次第では、レンズ式のが簡単だけど、自分たちでちゃんと作るならピンホール式ってことよね」

「おれのわかっている範囲での天体になるが、擬似的なレンズ式も作れる。ただ、せっかく作るなら、魔法を使わずピンホール式ってのもおもしろそうだな」

「ですよね! 先生、サツキ、あたし作りたい!」


 ヒナが手を挙げると、バンジョーも調子を合わせる。


「だったらオレも手伝うぜ! そんでよ、寿司とかピザの星座も作ろうぜ!」

「それは却下だ」


 玄内に斬り捨てられ、サツキとヒナが「あはは」と笑った。


「裁判も近いし、裁判が終わって、マノーラを出たら作り始めてもいいかもな」

「はい!」


 うれしそうにヒナが返事をして、


「さあ。ここからは集中していくぞ」


 と玄内が声をかける。

 作業が進み……。

 研究熱心な弐番隊だけに、科学に疎いバンジョーでも、一度玄内の発明が始まれば真剣だった。 玄内の真剣さがバンジョーにも移っているみたいだった。

 ヒナがバンジョーに呼びかける。


「ねえ、バンジョー」

「……」

「ちょっとバンジョー!」

「お? 悪ぃ、集中してたぜ」


 サツキがバンジョーを見て、ふっと微笑む。


「料理も作ってくれたのに、閃光弾作りも頑張ってくれて助かるよ」

「おう! いいってことよ!」

 ビッと親指を立てるバンジョーに、ヒナがつっこむ。

「あんた別に集中する必要ないわよね!? 先生に『おい』って言われたら素材を渡すだけじゃない!」

「先生以外の声が耳に入らなかったんだよ」


 あっけらかんと答えるバンジョーに、玄内が、


「おい」


 と言った。

 しかし、おしゃべりしているバンジョーには聞こえていなかった。


「先生に怒られたくないから構えてたのに、あたしとしゃべってて聞き逃してどうすんのよっ」


 ヒナがバンジョーの持っている素材をひったくり玄内に渡した。玄内は気にした様子もなく作業に集中する。


「お? 先生、呼んでたのか」

「そうよ。あたしが言いたかったのは、あんたは料理も作ってくれたり馬車を運転してくれたり、今日は充分働いたから先に休んでていいってこと。あとはあたしと先生で作るからさ」

「そんなわけにはいかねえよ。オレも弐番隊だぜ」


 言った直後、バンジョーがあくびした。


「……ほら、子供みたいにあくびしてるじゃないの! いいから任せなさい」

「そうだぞ。俺も手伝うから大丈夫だ」

「サツキだって、いろいろ走り回ってたじゃねえか。オレだけ休むなんて……ずずぅ」


 バンジョーがしゃべりながら寝てしまい、


「しゃべりながら鼻ちょうちんつくって寝ちゃうって、どんだけ眠かったのよ!」

「まあ、こいつはやる気だけはあるやつだ。頑固なたちじゃねえが、決めたことはやり遂げようとする。どうせ部屋にも戻らねえし、ここで寝かせてやれ。眠りが深くなったらおれが部屋に運んでやる」


 玄内がそう言うので、サツキとヒナは「はい」と答えた。


「バンジョーは寝るのが早いほうだから仕方ないわよね。まだ夜の十時だけど」

「うむ。バンジョーは早起きだからな」


 サツキとヒナが作業していると、五分ほどして、玄内が言った。


「さて。あとはおれだけで充分だ。サツキは司令隊で作戦をまとめてくれ。ヒナも休んでいいぜ」

「あたしは完成まで手伝いますよ。サツキがこのあとも頑張るっていうのに、あたしだけ休めません」

「わかった。そういうことだ、サツキ」

「お疲れ、サツキ」


 玄内とヒナがこう言ってくれたことだし、サツキは上がらせてもらうことにした。


「あとは頼みます」


 サツキは弐番隊のいる《無限空間》を出て、町長の家に戻った。

 いつも読んでいただきありがとうございます!

 今回本文中で触れた、バンジョーが屋台を出して士衛組の資金を稼ぐミニエピソードも、どこかで描けたらなと思っています。まだどこで描けるかわかりませんが、余裕ができたら描いてみたいです。

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