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45 『必要な指導者』

 フウサイはポイントを伝える。


「《(すり)(あし)》は実際に摺らずとも良いでござる。摺るようにして、小股で歩くでござる。手は身体の脇で、動かさず」


 そう言って、フウサイは言い方を誤ったと思った。


 ――動かさずではなく、脱力するでござったか。……しかし、さすがはサツキ殿とミナト殿。言わずもがな、腕に力など入っていないでござる。フウタやフウビばかりでなく、フウカなどでも忍びに必要な脱力が注意しなければできぬことが多い中、サツキ殿とミナト殿は自然とそれができている。


 また、フウサイに魔力が見えるわけではないが、サツキとミナトは手に魔力を配分することもできている。


「そのまま足の運びを速く……」


 フウサイの声を合図に、二人は徐々に足を速くしていった。

 次第にスピードが上がって、腕が後ろに流れてゆく。


 ――もうできているでござるな。あの感覚の良いチナミ殿でさえ、ここまで早くにはものにできなかったのに。それどころか、サツキ殿に至っては分析までが完璧にできていたでござる。


 走る二人を見て、フウサイは二人の才能に感心してしまう。


「二人共、もうよいでござる」


 二人は話しながら戻ってくる。


「思ったより走りやすいね」

「うむ。たぶん、俺の世界のナンバ走りより魔力とか魔法の相性もあって、この走り方は最適化されたものになっているんだろうな」

「でもさ、僕は剣士だぜ。手は後ろじゃなく身体の横のほうがいいのかな?」

「確かに、それもアリなのか」

「サツキはどうするの?」

「俺はアキさんとエミさんにもらったこの帽子、《()(どう)(ぼう)()()(ざくら)》のおかげで、手が後ろにあっても手元に取り出すことができる」


 と、実際にやってみせる。

 一瞬で、手の中には刀が握られた。


「《(ぼう)》。望むと書いて《(ぼう)》だ。望んだ物を、望んだ場所に出現させられるのさ」

「ずるいよ、サツキ」

「この帽子には、『ぼう』と読む漢字を元にした八つの効果がある。これはその中の一つでしかない。俺は持っている武器を使っただけだ」

「僕はどうしようかなァ」


 フウサイは二人の会話を聞き、剣士であるミナトの対応策についても考えてみる。


 ――教えを請うたから教えているが、拙者も『ミナト殿が生粋の剣士ゆえ、腕の位置に再考の余地がある』可能性を考えていなかったでござる。しかし、考え直してよいでござるか。


 ミナト用に、手の位置の修正案を考えてみてもいいかもしれない。


 ――それにしても、すぐにそれも考えて、自身の特性に合わせて昇華しようとする点、ミナト殿はどこまでの剣士なのでござるな。反対に、サツキは教わったことを自分の持ちうるもので実現する想像力があるでござる。これは、拙者など基礎さえ教えてしまえば、あとはどこまでも二人だけで強くなれそうでござるな。


 そう思わせるほどに、二人には習ったことを生かす力があるらしい。


 ――……が。


 フウサイが二人を見ていると、二人は剣を振るい始めていた。


「こうかな?」

「やめろ!」

「あ。この距離でサツキに受けられちゃった。これじゃァいけないや」

「なにが問題だ。俺にはおまえの剣くらい目で追えるんだぞ」

「ギリギリ目で追えるならまだしも受けられるなんて」

「ギリギリなもんか」

「おっと。……うん、後ろから手を動かしてから刀を取っても受けられた。なんだかんだ守りは余裕とみた」

「余裕だと!? はああっ!」

「よっと」


 先にミナトが剣を振るってサツキを試すと、最後にはサツキが拳をミナトに打ち込んでいた。

 それをミナトがかわしたところで、フウサイは言った。


「そこまででござる!」

「すみません、フウサイさん」

「申し訳ない」


 素直に謝る二人を見て、フウサイは思う。


 ――やはり指導者は必要でござるな。

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