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44 『正確な分析』

 足の動きは速い。

 小股で走っているせいで、足が見えないほど速い。

 膝から下だけ、残像しか見えていないのではないかという速さだ。

 腕は身体の後ろに流れていて、マンガやアニメなどの創作でサツキが知っている忍者によく似た格好になっている。

 でも、よく見るとわかることがある。


 ――《緋色ノ魔眼》!


 サツキは瞳を緋色に染めた。

 これによって、サツキは魔力を視認することができる。

 また、筋肉の動きや重心までが見通せるのだ。


 ――フウサイの腕には、まるで力が入っていない。全身を覆う魔力の中でも、腕の魔力は少ない。足も太ももやふくらはぎが少ない。逆に、足の裏と手のひらにだけ魔力がある。そこに秘密があるのか。


 ミナトもフウサイの走る姿を見ているが、サツキほどに精密な観察をしようとしていない。素直に感心していた。


「速いなァ。足の回転数が違うね。ねえ、サツキ」

「うむ。小股だからだ。そして、両腕と両足の力も見事に抜けきっている。魔力は足の裏と手のひらにだけやや多めに配分してあるな」

「へえ」

「おそらく、歩くときには身体の脇にあった腕が、力を抜いたせいで自然と後ろに流れてしまったものだ。だが、それもわざとだろう」

「無駄な力を入れないため?」

「それも一つ。それが速さにつながるのだろう。そして、もっと大事なのは、忍者としての備えだ」

「備えかあ」

「忍術を繰り出すとき、忍者は様々な道具を用いる。歩くときには、いつでも即座に太ももとか服の中に仕込んだ武器を取り出せるよう、腕を身体の脇に配置することが望ましい」

「なるほどね。でも、走っているときは? 速さを取って、対応力は下げるってことかな?」

「速さを取ることには違いないが、できるだけ対応力を下げない工夫とも言えるんだ」

「その心は?」


 と、ミナトが問うた。

 もうフウサイは二人の前に戻ってきている。


 ――さすがはサツキ殿、ここまでは正解。サツキ殿の分析、聞かせてもらうでござる。


 フウサイもサツキの解答を待つ。


「腕というのは、上げ下げをする際、どちらの動作が速くなると思う?」


 逆に聞かれて、ミナトは思うまま即答した。


「上げ」

「うむ。下げる動作のほうが遅い。じゃあ、身体の後ろにある腕と身体の前にある腕、どちらが身体の脇に戻しやすい?」

「後ろ」

「そうだ。だから後ろにしている。速いんだ。この前後の違いも腕の上げ下げの運動と似ていて、腕を上げるように、前に持って行く動きのほうが速くなる。しかも、腕を前へと持っていきつつ、太ももに仕込んだクナイなどを取って投げる、構える、といった次の動作へとつなげられる」

「おお」

「さすがの分析力でござる」


 ミナトが感嘆の声を上げ、フウサイも褒めた。

 サツキは付け足す。


「魔力が手にあるのも、手に気持ちとしての重さがかかり、腕が後ろに流れる理由かもしれないが、あらゆる動作に適応できるバランスになっている」

「そうかもしれぬ。拙者たち忍びの者は、魔法ではなく忍術を扱うでござる。しかし、サツキ殿と玄内殿が以前話してくださったように、忍びも魔力を魔力と意識せずに使っていて、それを用いて体系化された魔法が忍術である、との言葉通り、走っているときも手には意識を残しているでござる」


 それによって忍術を繰り出しやすくしているのだ。

 ミナトは手を上げる。


「フウサイさん。僕たちもさっそくやってみたいです。いいですか?」

「構わぬでござる」

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