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41 『稀有な才能』

「ゆっくりと。落とし穴などにもかからぬよう、体重は後ろ足に残したまま、丁寧に身体感覚を意識し続けるでござる」


 指示に従い、二人はゆっくりと足を下ろした。


「足の裏がすべて完全に地面に着いたら、体重を乗せてゆき、重心を移動させてゆくでござる」

「はい」


 と、二人は言われた通りに体重移動まで丁寧に、自身の身体感覚にしっかりと意識を向けて、動作を終えた。


「二人共、問題ないでござる」

「やったね」

「神経を使うな」


 にこやかなミナトとホッと肩の力を抜くサツキ。


 ――なるほど。二人共、恐ろしいほど筋が良いでござる。ミナト殿の才能は知っているつもりでござったが、素直さと澄み渡る感覚の良さ。そして、サツキ殿もここまで鋭く冴えた頭脳と精神力を持っているとは。サツキ殿の動作の美しさと力強さ、ミナト殿のしなやかさと軽やかさ、それらは天稟と言えよう。


 思わず感心してしまうほどだ。

 特に力強くありながら美しさを魅せるサツキの動作は、意外と普通では真似できない。

 だが。


「サツキ殿。その脱力を、常に忘れず行うでござる。自分の身体に意識は向けていても、力が入っているでござるゆえ、それでは力を発揮できないでござる」

「わかった」


 うんうん、とサツキの隣でうなずくミナトにもフウサイは指摘する。


「ミナト殿は時折サツキ殿を意識して自身の身体感覚への集中が疎かになるゆえ、自分に集中するように。でないと、サツキ殿の集中力に負けて置いていかれるでござる」

「は、はい」


 どんどん伸びるサツキを、ミナトはいつも意識している。意識しすぎている。サツキの成長を楽しみにもしているが、ミナトにはサツキの成長を助けることはできない。

 むしろ、切磋琢磨してミナト自身が成長しようとするとき、サツキは負けじと力を出して引き上げられるのだ。

 フウサイも自分で教えてみて、はじめていつも玄内がやっていることを身をもってわかった。


「これを一連のものとして、講義を挟みながらやっていくでござる」

「はい」


 と、二人は返事をした。


「では、再び《(ぬき)(あし)》から五分待機」

「はい」


 と、二人は《(ぬき)(あし)》をした。




 フウサイは《(ぬき)(あし)》を三セットやって、サツキとミナトを座らせた。

 サツキはまたしても力が入ってしまっていたから、座ると同時に脱力した。


「次に、《(すり)(あし)》を教えたいのでござるが、サツキ殿もミナト殿も武道によって知っているでござるな」

「空手にも剣道にもある動きだな」

「柔道にもあるよね」


 一応、サツキは元いた世界では空手をやっていたが、剣道はやっておらずクコとミナトと玄内から剣術の手ほどきを受けているに過ぎない。また、柔道もやっていない。

 一方もミナトは、サツキから空手を教わることはあっても、剣道ばかりで柔道はあまりやったことがなかった。


「《(すり)(あし)》はその摺り足とほとんど同じ。ただ、完全に摺る必要はないでござる」

「じゃあ、僕らは特別習うこともない技術なんですかい? フウサイさん」


 ミナトが挙手して質問すると、フウサイは待ってましたと言わんばかりに即答した。


「これはただ歩くばかりでなく、走ることにも使う技術でござる。また、サツキ殿にも何度も言ったことでござるが、力を抜くことも大事でござる」

「つまり、忍者の走法か」

「速さも一つ。さりながら、体力の消費を抑えることも肝要。それを可能にするのがしばしばナンバ走りと呼ばれる走法でござる」


 ナンバ走りはサツキも聞いたことがあった。


「これを(とび)(がくれ)の忍者流に改良したものを伝授するでござる」

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