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40 『色々な着け方』

 フウサイは懐中時計をチェックする。


「そろそろ四分でござるな。今回はこの辺で」

「じゃあ……」


 サツキが足を下ろそうとすると、待ったがかかる。


「サツキ殿。差し足、すなわち足の着け方を教えるでござるゆえ、そのままよく見ておくように」

「うむ」


 まだ足を着けさせてもらえないまま、サツキはフウサイの教えを受ける。


「足の中で、もっとも感度の鋭い部位はどこか。サツキ殿とミナト殿はわかるでござるか?」

「えっと」

「親指、かなァ?」


 体勢がキツくて即答できないサツキに対して、ミナトはうーんと考えながら答えた。


「正解でござる。答えられなかったサツキ殿は、ミナト殿が足を着けてからさらに一分後に足を着けてよいでござる」

「嘘だろ?」


 ついらしくもないリアクションをするサツキに、ミナトは笑い出す。


「あははは。いいねえ」

「ちっともよくない!」


 こんな年相応の反応をサツキがするのは、ミナト相手のときだけなのである。素のサツキが見えて、フウサイはちょっとうれしくなる。仕える主として敬愛しつつも、年長者としての親心のような愛情もあるせいか、フウサイにはそんなサツキが微笑ましくもあるのだ。


「それで、フウサイさん。今の話で言うと、親指が関係してるんですかい?」

「地面に異物がないか、ゆっくりと親指から着けることで探るに決まってるだろ!」

「正解でござる」

「なるほどねえ」

「では、ミナト殿も一分追加でござる」

「え……」


 今度はサツキが勝ち誇った顔になる。

 ミナトはサツキほどキツくもないだろうが、自分だけ一分追加されるのは負けたみたいで悔しい。

 これで五分五分だ。


「おそらく、撒き菱や糸、トラップへの対応策だ」

「さすがサツキ殿。チナミ殿も言うように、忍者通でござるな。暗闇での活動も多い忍者には必要な探知能力でござる」

「そうなると、親指から足を着ける。そろそろ一分経っただろうか」

「否。サツキ殿、足の親指側一帯は探知機であり、実際に足を着けるのは小指側からでござる」

「なぜです?」


 ミナトが疑問を呈する。


「もっとも音が出にくいのが小指側からの着地なのでござる」

「へえ」

「そこは違うのか。じゃあ、一度親指側で調べて小指側から。そんな動きを毎回してるのか?」

「これはあくまで抜き足差し足忍び足の場合でござる。速さを重視する場合、この動作を省き小指側から足を着けることもあるでござる」

「ことも、ですかァ」


 と、ミナトは苦笑いになった。


「時に、フウサイさん。僕と手合わせする際はどうです?」

「これはしたり。さすがにミナト殿を相手に、その動作を挟む余裕はないでござる」

「それはよかった。手加減されてちゃァたまらないですからね」


 最初にフウサイも言ったように、元々ミナトには教えることなどないくらい、強さも速さも完成している。少なくともフウサイはそう思っているが、玄内もミナトをしごいてやれと言う……つまり、互角以上にフウサイとやり合えるミナトにはさらに伸びしろがあるということになる。


 ――むろん、手加減の余裕などござらん。が、ミナト殿も玄内殿も、なにが見えているのでござろうか。ミナト殿の強さと速さにはまだ先がある、と?


 またサツキが言った。


「ところでフウサイ。もう一分経ったんじゃないか?」


 うっかりしていた。

 フウサイは二人に許可を出す。


「そうでござった。二人共、親指側で地面を探知し、それから小指側から足を地面に着けるでござる」

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