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33 『創造的な空間』

 チナミは冷静に言った。


「この空間では、先生はなんだって生み出すことができるしなんにだってなることができます」

「そ、そうだけど、こんな……街を、創っちゃう、なんて。びっくりだよ」

「うん。リラもびっくりした」


 ぽかんと口を開けてしまったナズナとみんなといっしょに叫んでしまったリラがささやき合う。

 参番隊の横では。

 ミナトが優雅に笑っていた。


「いなせだねえ。さすがは玄内先生だ。パルクールの障害物もこれだけあれば充分でしょう」

「充分過ぎるって! あたい、晴和王国の街並みではパルクールやったことないし、そっちの公園とシャルーヌ王国の街並みだけでも充分過ぎるくらいなんだから」


 街は、三つのエリアに分かれている。

 向かって右手に晴和王国の街並みをイメージした和風エリア。

 向かって正面に様々なアスレチックまで供えた公園エリア。

 向かって左手にシャルーヌ王国の街並みを再現したエリア。

 レスコは驚くやら感心するやらで、どこからどう手をつけて教えていこうか戸惑ってしまう。


「おいらはブランコで遊ぶデショ!」

「ナズナちゃん。リラたちはなにして遊ぶ?」

「え? えっと……」


 リラに誘われるが、これは玄内がみんなの修行のために用意した施設だ。ナズナがチラと玄内を見ると、


「ま、おまえたち二人は好きに遊んでていいぜ。遊んでる人間の邪魔をしないで移動する練習にもなるだろう」


 ほっと肩の力を抜き、ナズナは答えた。


「は、はい」

「ありがとうございます」

「おう」


 玄内は、実はリラに甘い。

 アルブレア王国の王家とも親交があった玄内だから、昔は医者の腕を見込まれて、身体の弱いリラを看てやったことがたびたびあった。

 だからついリラには親心が働くのか、甘い対応をしがちなのだ。

 それを見てヒナは、いつも自分は同じ弐番隊としてみっちりしごかれているだけに、


「先生はホント、リラに甘いんだから」


 と漏らす。

 だが、すぐケロッとして。


「まあ、あたしも修行はしないしナズナちゃんと遊ぶわよー」

「おまえは修行に混ざれ」


 玄内に言われて、ヒナは口先をとがらせる。


「ぶーぶー。先生、あたしにはバネみたいなジャンプ力があるんですから、パルクールはいらないですよ」

「空を飛べるナズナや着ぐるみに入って常人以上の筋力で戦えるリラと違って、おまえは飛び跳ねるだけじゃねえか。それもおれが与えた魔法だし、使いこなせてねえだろうが。おまえは学んでおけ」

「そんなあ……」


 がっくり肩を落とすヒナの袖をチナミがつかむ。


「ほら、ヒナさん。やりますよ」

「わかったよぅー」


 レスコがようやく考えをまとめて、修行を始める。

 ルチーノが玄内に聞いた。


「玄内さんはどうされますか?」

「おれは馬車に戻る」

「……もしかして、この空間は先生の頭の中。より正確に言えば、イメージの中。だから、ここにいなくてもすべて監視することができる。と思ったのですが……」

「ふ。察しがいいじゃねえか。洞察力というか、思考の柔軟さの問題か。そこまで気づいたやつは初めてだぜ。いくら察しのいいサツキも、自分が直接稽古をつけてもらってるからってことで、そこまで想像がいかないみたいだが……その通りだ。ちっとばかし特殊な魔法でな、おれ自身の身体もそこに入り込むことができるが、ここは、おれの想像の中さ」

「では、サツキさんたちの成長も見守れるし戻っていてもいいわけですね」

「ああ。おまえはどうする? 戻るか?」

「はい。いろいろと話を聞かせていただきたいです。情報交換をしましょう」

「構わないぜ」


 かくして、玄内とルチーノは《無限空間》を出て、別荘から馬車へと戻るのだった。

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