27 『透明な道』
「見えない道を創ることができるってわけ」
レスコの魔法、《秘密ノ小道》。
この魔法についての詳しい解説はルチーノがしてくれる。
「言わば、透明の床を敷いて道にする魔法。それが《秘密ノ小道》です。発動には条件もあり、この道の出発点に手のひらを当てるようにする必要があります。あとは消すのもその先を創り続けるのも自由自在。耐荷重も基本的にはありませんし、道が消失するまでの時間制限も調整可能です」
「すごっ!」
「とても便利な魔法ですね!」
ヒナとクコの反応を見て、レスコは頬をかいた。
「いや、まあでも、ちゃんと時間と面積の制限は調べたことがないだけなんだ。レオーネさんに才能開花してもらったおかげでちょっとやそっとじゃ限度に届かないからさ。無制限、なんてルチーノは言ってるけど」
「以前は耐荷重、時間、面積による制限があったんですよ」
「だからなんでもできると思わないで注文したほうがいいデショ!」
バローロがニヤニヤしながら肩をすくめてみせると、レスコがムッとして言い返す。
「なんであんたが謙遜すんのよ、ていうかその言い方腹立つぅ」
まだバローロはニヤニヤしている。
普段つっこまれている分、やってやったという気持ちなのかもしれない。
じゃれている二人のことはそのままにしておき、ルチーノは話を進めた。
「それで、レスコの《秘密ノ小道》を使うわけですが。いくら道を創ることはできても、姿は消せません。見えない道を、ぼくたちが進むだけです。では、どうやって彼らを振り切るのか……? 簡単に言えば、彼らと存在する階層を変えてしまえばいいわけです」
「階層、ですか」
「つまり、高低差を利用します」
あ、とクコも理解する。
「そういうことでしたか! 確かに、それなら別の階層にいると言えます。二階にいる人と三階にいる人のように、階段などを使わないと出会うことはありません」
「その魔法ならたとえ目に入っても、戦う必要はありませんね」
と、リラが胸の前で手を合わせる。
ルチーノはもう一つ提案する。
「遠距離攻撃を仕掛けられる可能性もありますし、先程クコさんがおっしゃったリラさんの小槌も同時に使うと良いかもしれませんね」
「小槌で小さくして、馬車を見つかりにくくする。もし見つかっても、馬車のサイズが小さくなっていたら距離感がわからなくなるし、距離が離れたと錯覚する」
「二重に防衛策を張ることができるわけですね」
サツキとクコがそう言って、ルチーノがうなずいた。
「はい。相手の騎士たちはここまで走ってきています。幸い、すぐには追いつかれません。レスコの魔法と小槌を使う時間はあるでしょう」
アルブレア王国騎士たちの部隊は馬車でこの峠まで来ていても、その馬車で追いかけるにはスピードが足りない。だから走ることになっているのだ。
「では、さっそく実行しましょう」
最終判断をサツキが下して、すぐ行動に取りかかった。




