16 『幼馴染みな三人組』
バローロの仲間は二人いる。
少女の名前は、芽覧酉玲寿古。
少年の名前は、去珠連陀流智延。
年は三人いっしょで十四歳。
三人は幼馴染みでいつもいっしょに行動しており、『ASTRA』として士衛組の護衛と案内を頼まれていた。
レスコは身長一七四センチと長身の少女で、スラリとした体型と細面に切れ長の目を持つ。
ルチーノは身長一七一センチ、涼やかで均整の取れた顔立ちをしており、これが彼の本当の顔らしい。
幻惑魔法によって二人の姿を変えていたのがルチーノで、仲間のバローロですら気づかない。
元の姿に戻った二人を見るや、バローロはうれしそうに手を振り返した。
「おーい! おいらは無事デショー!」
馬車が停車する。
バローロが馬車から飛び出して、二人の元に駆け寄った。
「二人も無事でなによりデショ!」
さっそくレスコがバローロの状態を見て眉根を寄せる。
「いや、バローロのほうはあんまり無事って感じがしないけどね」
「そうだね。怪我をしてるじゃないか。でも……」
とルチーノが馬車から降りてきた士衛組を見る。
「士衛組のみなさんと合流できたようでよかったよ」
「こんにちは。はじめまして。わたくし、青葉玖子と申します」
最初にクコが挨拶をした。
続けてサツキが名乗る。
「士衛組局長、城那皐です。話はバローロさんから聞いています」
「やっぱり、クコさんとサツキさんでしたか。ぼくは去珠連陀流智延といいます。よろしくお願いしますね。バローロがお世話になりました」
「あたいは芽覧酉玲寿古。よろしく、士衛組」
士衛組の面々が自己紹介をしていって、ひとまずレスコとルチーノを馬車に乗せた。
馬車が動き出す。
事情を聞くと、レスコが顔をしかめた。
「なんだよ、うっかりって。あたいらがどんだけ……はあ」
とレスコはため息をついて、
「まあ、あたいはいいとして、ルチーノはだいぶ心配してたんだからさ」
「ごめんデショ」
バローロがうつむき気味になって反省する。
ルチーノは柔和に微笑んで、
「しょうがないよ。でも、本当に士衛組のみなさんがいてくれてよかった。本来はぼくたちが護衛も兼ねて案内役をする予定だったけど、助かりました。ありがとうございます」
丁寧にお礼を述べるルチーノに、クコは笑顔で応じる。
「いいえ。こうして合流できてよかったです。『ASTRA』のみなさんのサポートはありがたいですが、協力し合って切り抜けられたらそれが一番ですからね」
「クコちゃんは優しいデショ!」
またクコの手を握ろうとするバローロを一瞥して、レスコがトンと手刀でそれをやめさせる。
「あんた、マジで反省してないね?」
「し、してるデショ」
二人のやり取りを見て、ルチーノがくすりと笑う。
「さて。お互いの状況もわかったところで、対策をしましょう」
「そうですね! わたしたちはこの進路を取りましたが、この先がどのような道になっているのか知りません」
クコが言うように、もう一つの道には敵がたくさんいることがわかっている反面、そのまま進めばシャルーヌ王国にもっとも自然に入ることができることを知っている。
だが、この道がどこに続いているのかはわからなかった。目の前の敵が少ないという理由だけで選んだからだ。
ルチーノが言った。
「この先、アルブレア王国騎士が潜んでいます。それをどうやって切り抜けるか。ぼくから提案があるのですが」




