幕間紀行 『ヴァレンタインマスク(2)』
エヴリーヌはじっとりした目でアキとエミを見返す。
「あなたたち、どう見てもワタクシより年下ですわよね。ちゃんづけはやめてくださる?」
よく子供に間違われるエヴリーヌにとって、子供扱いには憤慨するし、なにより許せないのが自分より年下に年下扱いされることなのだ。
アキとエミはあっけらかんとした調子で言った。
「ボクとエミは今二十歳で、今度の一月一日で二十一歳になるんだ」
「エヴリーヌちゃんは何歳なの?」
どう見ても十代半ばにしか見えないのに、アキとエミが意外と自分と年が近いことに驚きを隠せないエヴリーヌ。
――嘘ですわよね!? この見た目で二十一? け、けれど、ワタクシが年上であることに違いはありませんわ。
事実確認はできたのだ。
いくらアキとエミが六、七歳若く見えるのに対してエヴリーヌが十歳も若く見られることがいつものことでも、大事なのは年齢そのもので、この二人が自分より年下だという事実は変わらない。
エヴリーヌは胸をそらして言った。
「ワタクシ、来月で二十四になりますの」
「へえ。若いね」
「うん、若作りだね」
「あなたたちがそれを言いますかっ」
わざわざエヴリーヌがつっこんでも、アキとエミは聞いていない様子で笑っている。馬の耳に念仏だった。この手応えのなさに、エヴリーヌは、むぐぐ……と眉根を寄せる。
三人のそんなやり取りを見て、ジョバンニがカイトに尋ねた。
「なんだ、知り合いじゃなかったのかい?」
「ええ」
アキとエミは身を乗り出して、
「それで、どんなお話なんですか? ジョバンニさん」
「アタシたちに聞かせてください」
興味津々である。
ジョバンニはうなずいた。
「ああ。人形と仮面と、とあるエクソシストの話だ」
「エクソシスト!?」
「おもしろそーう!」
アキとエミも話を聞くことになっているらしいと思い、エヴリーヌは小さくため息した。
「どうやら、この子たちもいっしょに話を聞くことになってしまったようですわね。構いませんの? カイト様」
「はい。それは全然」
エヴリーヌはカイトを見て微苦笑を浮かべた。
――人の好い方ですこと。けれど、他人に聞かれて困る話でもないみたいですし、カイト様さえよければワタクシもいいですわ。
ここからはエヴリーヌは少し黙っておくことにした。カイトが一歩引いて、アキとエミが聞き手になりそうだったので、その流れに任せればいい。
「どんな人なのかな?」
「気になるね」
すでにウキウキして楽しそうなアキとエミに、ジョバンニは苦笑いになった。
「別に明るい話でもコメディでもないが、辛気くさい顔して聞かれるよりはいいか。それに、おれっていうより、おれのおじいさんの話だからな」
「おじいさんのお話?」
「じゃあ、ずっと昔のことなのかな?」
アキとエミが顔を見合わせて首をひねる。
ジョバンニは話し始めた。
「これは、もう百年も前の話だ。おれのおじいさんが体験した話を、そのまま伝えるとしようか――




