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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編集】
1313/1373

幕間紀行 『マジックマレット(13)』

『ゼンゾウ、聞こえるか』


 大黒様の声がします。


『ゼンゾウ、ゼンゾウや』


 ん~っと、ゼンゾウはまだ目を覚まさない。


『こら、ゼンゾウ!』

『はい!』


 ゼンゾウ、飛び起きます。


『大黒様! 大黒様じゃありませんか』

『今日は豆を供えてくれてありがとう』

『その約束でしたから。でも、すみません。ついに四十八種類は集められませんでした。あと三種類がどうしても見つからなくて』


 うなだれるゼンゾウ。


『それでいいのだ』

『それで、いい? どういうことです?』

『いいか? ゼンゾウ』

『はい』

『おまえはきっちり四十八種類の豆を育てた』

『いや、おれはあとは三種類足りなかったような……あれ、四十八種類あったのかな。数え間違えていただけか。はい、四十八種類ありました』

『馬鹿者! 四十五種類だ』

『なんだ、やっぱり四十五種類じゃないですか』

『わしが言っているのはな、おまえは四十五種類もの豆を集めて、植えて、育ててきた。そして、おまえがそうする間に、手マメ足マメができて、性格にもマメさができて、そのマメもしっかり育てて、今日わしの前に見せてくれた』

『あ! おれの手マメ足マメとマメになった性格も供えたから、四十八種類だってわけですか!』

『うん、そうだ』


 手マメ足マメで二つ。

 性格のマメさで一つ。

 合わせて三つのマメになる。

 それと畑で作った四十五種類の豆で、合計四十八種類の豆になったと、こういうわけでございます。

 ゼンゾウもそうとわかると大喜びです。


『やったー! 四十八種類の豆は集まってたんだ!』


 そこにすかさず、大黒様は言います。


『ゼンゾウ』

『まだなにかあるんです?』

『おまえは大事なことを忘れている』

『大事なこと?』


 相変わらずすっとぼけているゼンゾウ。

 当初の目的もすっかり頭が抜けております。

 大黒様は仰々しく打ち出の小槌をかざします。


『約束通り、四十八種類の豆を供えたおまえに、この打ち出の小槌を振ってやろう』


 わっと気づいたゼンゾウ、即座に頭を下げました。


『ありがとうございます!』

『一つ振れば、一つ良いことが起きる。なにが起きるのかは、わからないものと思え』

『え? わからない? それなりの金持ちになって、気立てのいい嫁がもらえるんじゃなかったんですか?』

『きっと、それも叶う。だが、打ち出の小槌はおまえが自分で願いを叶える手伝いをするだけだ。きっかけがあるはずだから、その良い縁を見逃さず、これからも十二月九日に豆を供えられたら、そのうち願いも叶っていることだろう』


 そう告げると。

 大黒様はトン、と一つ、打ち出の小槌を振った。


『良い事があるぞ。ゼンゾウ』


 すると。

 にっこりと優しい笑顔をゼンゾウを見せて。

 目の前にいた大黒様は、すぅーっと消えてしまった。

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