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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編集】
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幕間紀行 『マジックマレット(12)』

 これは不思議な話もあるものだと、父と母は思いました。

 ゼンゾウの不可解な変化も理由がわかり、母親はこれまで以上になにかしてやりたい気持ちにもなりましたが、


『あの子はもう、わたしが手を貸さなくても自分でやっていけそうだね』


 と思うようになっていました。


『そうだな。見守ってやるだけでいい』

『あなたみたいにね』


 父親は照れたようにそっぽを向きます。

 そして、ゼンゾウですが。

 四十五種類の豆を植えて、それらもおおよそ育ってきました。

 しかしあと三種類が足りません。

 ゼンゾウは腕組みして考え込みます。


『どうやったらあと三種類集められるだろう』


 季節が変われば手に入るとも限らない。

 もっと大きな町に行けば手に入るかもわからない。

 そもそも、世の中にはどんな豆があるのかも知らない。

 みなさんも知ってる豆の数、いくつか数えられます?

 大豆、小豆、他になにかあったかな……わたくしも今パッと思いつくだけで三十種類くらいですよ。



 ね。

 いろんな種類がありますから。

 このゼンゾウですと、当時は豆について書かれた図鑑なんてありませんし、ほとんどの人が豆なんて片手で数えるほどしか知りません。

 今の時代を生きる我々でさえ豆の種類を把握することすらできないんですから、いくらゼンゾウが頭が悩ませてもどうにもなりません。

 悩み続けて、二ヶ月が経とうとします。

 そうなると、秋も深まり、約束の日が目の前だ。

 十二月九日。

 この日は、『大黒様のお(とし)()』というんだそうです。

 ゼンゾウの住んでいた地域は、そうした年中行事があります。

 東北地方の(すい)(おう)ノ国の中でも、西のほうですね。

 だから大黒様はこの日を指定されたわけですけども。

 大黒様の年越しを祝って、豊作や子孫繁栄を願い、豆料理をいただく習慣になっております。

 その十二月九日が刻一刻と近づいてくる。

 ゼンゾウは慌て始めた。



『母ちゃん、どうすればいい?』

『なにが?』

『豆だよ。どうやってあと三種類を集めればいいんだろう』

『そう言われてもねえ。わからないものはわからないし……』


 はあ、とゼンゾウはため息をつきます。


『だよなあ。素直に大黒様に謝るか。約束が守れなくてすみませんでしたって』

『そんなに急がなくてもさ、来年の十二月九日まで供えられるようにすればいいじゃないの』

『それもそうか』

『今年はある分だけ供えて、あとは来年』

『そうだな』


 根は単純なゼンゾウですから、考えてみれば今年の十二月九日とは言われていなかったと思い直します。

 そうと決まれば、あと三種類の豆を集めるよりも、今ある豆をしっかり育ててお供えできるようにとゼンゾウは豆の世話をしました。




 そして来たる十二月九日。

 ゼンゾウは、久しぶりに、大黒様の夢を見る。

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