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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編集】
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幕間紀行 『ワームアップ(1)』

 子供がリディオに聞いた。


「ねえ、塩ってからだを温めてくれるの?」

「そうだぞ。寒さに耐える身体にして冷えを防ぐんだ」


 これにラファエルは補足してゆく。


「血液の循環は人間にとってとても大事なんだけど、血圧を上げることで血の巡りを良くして新陳代謝も上げてくれる。だから、晴和王国だと寒い地方の(ほく)(りょう)ノ国や(はね)(さき)ノ国では塩を多く取って体温を保ち免疫力をアップさせ、暖かい地方の()(しま)ノ国や(うき)()ノ国では逆に自然と塩の摂取が少なくなるね」


 ちなみに、ここでいう晴和王国の中の国はサツキの世界における戦国時代の国と同じような単位で、新戦国時代となった今現在の晴和王国は二宮三十三国に分かれている。

 (ほく)(りょう)ノ国は北海道。

 (はね)(さき)ノ国は青森県と秋田県のあたり。

 ()(しま)ノ国は鹿児島県のあたり。

 (うき)()ノ国は沖縄県のあたり。

 それぞれをサツキの世界の都道府県と照らせばそうなるだろうか。

 ラファエルが聞いている範囲だとその程度の認識であり、サツキの世界の日本と晴和王国の各地の特色の符合までは詳しく聞いていなかった。

 あくまでラファエルの晴和王国に対する知識は、晴和王国にいる『ASTRA(アストラ)』の仲間からもたらされる情報がメインである。

 急に、アキとエミが声を上げた。


「そうだ! だったら『梅干しの塩むすび』のお話がいいかも!」

「だね! あのお話もそういうこと言ってた気がするよ!」


 トメタロウが「なるほどねえ」とつぶやき、『梅干しの塩むすび』の話を準備し始めた。


「みんなは『梅干しの塩むすび』でいいかな?」

「はーい!」


 子供たちの返事を受けて、トメタロウは「うん」とうなずき『梅干しの塩むすび』の話をセットし、パカッと紙芝居の扉が開いた。

()(みょう)(かい)()案内人(ストーリーテラー)』は物語に案内する。


「みんなもよく食べるおむすびのお話だよ。梅干しが苦手な子もいるかもしれないね。でも、梅干しはとっても身体にいいんだ。さあ、『梅干しの塩むすび』のお話のはじまりはじまり」




   ◇




 昔々。

 北陸地方の()(えつ)ノ国のお話です。

 冬にはよく雪の降る地方で、このお話もとある雪降る冬のことでした。

 小さな村に住んでいた(さく)(やま)(ぶん)(きち)は、同じ村に暮らす()(かわ)(やす)()()にほとほと手を焼いていました。

 ヤスベエはいつも悪さばかりをしているからです。

 どうすれば人を驚かせられるか。

 どうすれば人の困った顔を見られるか。

 そんなことばかりを考えていて、ブンキチも日頃から散々イタズラをされていました。

 ブンキチはこの年、四十歳になり、食べ盛りの子供も三人いるから、頑張って働かなければなりません。

 しかし、ヤスベエは仕事の邪魔もしてきます。

 ある時なんか、植えた野菜の種がバラバラにかき混ぜられていて、芽吹いたあとになって畑がめちゃくちゃになっていたと気づいたこともさえありました。

 またある時には、せっかく雪かきしたのに、次の日の朝には家の扉の前に雪がいっぱいに積み上げられて家から出られなかったり、子供たちに危ない川遊びを教えたりと、ろくでもないことばかりしているのです。


「うーん、ヤスベエのやつ、どうにかならないかな?」

「こらしめてやれたらいいんだけどね」


 妻もヤスベエにはうんざりしていたので、どうにかしてやりたいと常々思っていました。

 それでも、子供たちはちょっと違います。


「なんで? ヤスベエさんおもしろいのに」

「遊んでくれるもん」


 二人の子供はヤスベエに遊んでもらうこともあります。

 一番下の子はまだ小さいのでずっと家にいますが、ヤスベエは意外と子供には優しいようでした。


「あんなのと遊んでたら悪い子になるからやめなさい」


 母に注意されて、子供たちは「はい」と返事をしました。


「そういえば、明日は山の向こうにある町まで買い出しに行ってくるけど、なにを買ってこようか」


 ブンキチが尋ねると、妻は答えました。


「ああ、そうだったわね。じゃあ、子供たちの新しい服と雪かき、あとはちょっと重たいけど釜も欲しいわ」

「わかった」

「悪いわね、ありがとう」

「いいさ。じゃあ、明日は早めに出かけるからな」

「梅干しの塩むすびも作っておくわ」

「ありがとう」


 そんなわけで、ブンキチは明日、山向こうの町に出かけるのでした。

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