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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編集】
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幕間紀行 『ストップバイアート(15)』

 部屋に入って、リラとナズナはベッドで横になる。

 この宿の部屋は二人部屋で、二人組になるときは大抵リラとナズナはいっしょなのだ。同じ参番隊のチナミは幼馴染みのヒナといっしょになり、クコはルカと同部屋で、サツキとミナトのコンビが同部屋、バンジョーとフウサイが同部屋になるが、玄内は睡眠が必要ないので《拡張扉(サイドルーム)》で別荘に行ったりや《()(げん)(くう)(かん)》で研究をしたりしている。実は《拡張扉(サイドルーム)》で神龍島のチナミの祖父・海老川博士の家ともつないでいるため、そちらに行くこともあるのだが、それはルカしか知らない。


「明日は、オペラに美術館、あとはお買い物もして、やることいっぱいだね」


 リラは楽しそうに予定を指折り数えて、ナズナをにこりと見る。


「うん。リラちゃんは美術館が一番楽しみ?」

「どれも楽しみで選べないよ。でも、美術館はやっぱり楽しみ」

「有名な芸術家の人の美術館なんだよね」

「そうだよ。『(くう)(かん)()(じゅつ)()』って呼ばれた天才芸術家、問笛螺徒駈峰路モンフェルラート・カルミネッロの功績を讃え彼の作品を展示した美術館」

「カルミネッロって……」

「うん。サツキさんとミナトさんがマノーラで戦った人。サヴェッリ・ファミリーのボスに操られていただけで、本人に意思も意識もなく、ゾンビみたいに死体を利用されていただけだったんだけどね」


 マノーラには、カルミネッロがデザインと設定をした広場もあった。

 それは二百年前に彼の魔法によって描かれた魔法陣によって完成する、魔法がかけられた広場だった。

 リラはそこに、サツキといっしょに訪れた。

 幾何学模様が花を表現して、その花びらは一枚一枚が常に動いており、花びらに乗れば歩行しなくても決まったマス目まで移動できる。これを《ムービングウォーク地帯(エリア)》といった。

 カルミネッロの魔法《空間上ノ魔法陣(ワンダースペース)》によるものである。

 サツキと二人で花びらに乗って移動しながらいろんな話をしたのは、リラにとってとても楽しく大切な思い出だ。


 ――あのときは楽しかったな。明日もサツキ様と……そしてみんなと、楽しい思い出がつくれたらいいな。ナズナちゃんも元気にしたいしね。


 リラは言葉を続ける。


「そのカルミネッロさんは『空間の魔術師』の他に、『(ばん)(のう)(げい)(じゅつ)()』とも呼ばれていたんだ」

「万能……? なんだか、先生みたいだね」


 ナズナとリラの先生である玄内は、士衛組みんなの先生でもあり、あらゆる才能を世界に認められた『万能の天才』なのだ。


「実際、そうなんだよ」

「そう、なの?」

「今よりも二百年前には、『万能の天才』はカルミネッロさんのための言葉だった。芸術家としての才能以外にも、ありとあらゆる才能に恵まれた人でね。数学から物理学から自然科学まで様々な科学の進展に大きく貢献しただけじゃなく、医学に占星術、さらには魔法学にも通じていた」

「すごい人だね」

「だから、先生とカルミネッロさんのどちらが優れた『万能の天才』かっていう議論は今もしばしばされているんだ」

「先生もすごくって、次に会ったとき、緊張しちゃいそうだよ」


 もじもじするナズナが可愛くて、リラはナズナのベッドに飛び込んでナズナに抱きついた。後ろから抱きしめる。


「うわぁ」


 ふわふわした声で驚くナズナに、リラは明るく言った。


「大丈夫だよっ」

「リラちゃん?」

「先生はリラとナズナちゃんの味方だもん」

「そ、そっか。そうだよね」

「お姉様がいて、チナミちゃんがいて、サツキ様もいる。ね?」

「うん」


 リボンがほどけるような柔らかい笑顔になったナズナを見て、リラはまたぎゅっとした。


 ――うん。ナズナちゃん、さっき抱きしめたときはちょっと身体がこわばってたけど、今はふにゃっとしてる。気持ちも和らいでくれたかな?

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