幕間紀行 『ストップバイアート(13)』
翌日のヴェリアーノ観光は午前中に終えて、そこからはまた列車に乗って移動した。
次の目的地は、『ファッションの都』メディオラーノ。
ファッションとデザインの街として有名だった。
列車の中で、クコが説明してくれる。
「メディオラーノは『ファッションの都』で、ファッションとデザインの街です。金融街でもあるんですよ。それに、高級なレストランやショッピングスポットなどが多数存在する、高級志向な街と言えますね」
「教科書通りの説明だとそうなるわね。でも、歴史的建造物も多いのよ」
と、ヒナも解説を加えてくれる。
「すごい街ってことはわかる」
「だな! なんでもある街ってことか!」
ミナトとバンジョーがあっけらかんとそんなことを言っている。
これにヒナはジト目で返す。
「あんたたち適当な相槌打ってくれちゃって。確かにオールマイティーな場所だけど、注目すべきはファッションとオペラよ」
「オレは高級レストランも行きたいぜ」
「行ってくれるかどうかは、サツキに聞いたら?」
「おう! どうだ? な?」
聞き方も雑なバンジョーに、サツキは小さく苦笑してうなずいた。
「そうだな。せっかく行くんだ。いいと思う」
「はい。資金にも余裕はあります。マノーラで泊めてくださった『ASTRA』のみなさんに感謝ですね」
「よっしゃあ!」
料理人で研究熱心なバンジョーは喜んでいた。
美味しい食事はみんな嬉しいから、リラとナズナも楽しみだねと話す。
ヒナが話を戻す。
「それはそれとして、オペラ鑑賞は世界でもトップクラスよ。特に、『ミノーラ座』は世界最高峰のオペラ・ハウスなの」
「なんでさっきからあなたが得意そうなのよ」
ぽつりとルカがつっこむと、ヒナがかみつく。
「あたしがイストリア王国のことは一番詳しいんだからいいでしょ!」
「オペラ鑑賞は行くとして、サツキは他にどこか行きたいところはある?」
いつもサツキのことしか考えていないルカがヒナを無視してサツキに聞いた。
「俺は歴史的建造物も気になるけど、ファッションの都だというのなら、みんなは買い物に行ってきてもいいぞ」
「それならわたし、サツキ様と行きたいです。サツキ様のお洋服も選んで差し上げます」
クコが張り切ってそう言うと、ルカもすかさず賛意を示す。
「そうね。たまにはいいんじゃないかしら。私とクコとサツキの司令隊で買い物に行きましょう」
「ちょっと待った! なんでそうなるのよ! なんで任務でもないのに隊ごとに動くわけ!? あたしはどうなるのよ!」
ヒナが目くじらを立てる。
ルカは取り澄ました顔で、
「危なっかしいあなたにも先生がついていれば安心ね」
「あたしはみんなと羽を伸ばしたいの!」
また言い合いをしているヒナとルカはさておき、リラはいつもなら自分もサツキと行動したいと言い出すところを黙って控えていた。そっとナズナに聞く。
「ナズナちゃんはどうしたい?」
「わ、わたしも、みんなといたい」
「賛成。みんなで買い物しよう」
チナミもナズナに賛成して、参番隊の意思決定もされると、あとはミナトがこだわりなさげに「了解」と答えて、玄内が「それでいいな?」とサツキに尋ねる。
「はい。そうしましょう」
「楽しみですね!」
クコが嬉々と手を合わせて、士衛組を乗せた列車はメディオラーノへと近づいてゆく。




