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MAGIC×ARTS(マジック×アーツ)-アルブレア王国戦記- 緋色ノ魔眼と純白の姫宮  作者: 青亀
イストリア王国編 ミニストーリー【おまけの短編集】
1259/1260

幕間紀行 『ストップバイアート(4)』

 ペルシアーニ宮殿。

 そこはオペラ発祥の地である。

 絢爛豪華な外観と造りになっていて、栄華がそのまま体現されたかのように見た者を圧倒する。


「あの。ペルシアーニ宮殿はどこかの王族の建物なんですか?」


 リラが尋ねると、クコが教えてくれる。


「違いますよ。わたしが調べたところでは、このペルシアーニ宮殿はペルシアーニ家が建てたものです」

「ペルシアーニ家?」


 サツキが聞く。

 これにはヒナが解答を出した。


「言っちゃえば、昔の大富豪よ。銀行家だったかな。今は没落して、フィオルナーレが管理しているわ。ペルシアーニが持ってる美術品の数々も美術館に展示されているってわけ」

「バラクロフ美術館に似ていますね」


 と、リラがサツキに言った。

 二人がマノーラで訪れた美術館だ。

 そこもバラクロフ家の美術品が展示された美術館だった。


「うむ。この王宮でオペラ鑑賞ができるのか」

「そうですね。予約も必要なかったと思いますから、まずは行ってみましょう」


 クコとサツキを先頭に、士衛組はペルシアーニ宮殿に入っていった。




 ナズナがキョロキョロと見回しながら歩いていると。


「これも、芸術作品、なのかな?」

「確かに、ひとつの作品にも見えるね」


 リラも同じように建物を見ていく。

 王宮内に入って、リラは足を止めた。


「わっ! 中に入ると、もっと豪華」

「ほ、ほんとだね……!」


 思わずナズナは背中の翼をパタパタと羽ばたかせた。一メートルセンチほど空に浮いて、天井を見上げる。


「ふふふっ、ナズナちゃん、浮いてるよ」

「あ」


 照れてナズナが顔を赤らめ、リラの横に戻った。


「でも、つい高いところまで飛んでいって見たくなる、そんな美しさだね」

「うん」


 つい、うっとりと見入ってしまった。

 サツキは、チラと振り返り、そんなナズナを見て微笑む。


 ――ナズナも連れて来られてよかったな。オペラもまだ鑑賞してないけど、あんな顔をしてくれて。ここに来たことが、ナズナにとって良い思い出になってくれたらいいな。


 それがサツキの一番の願いだった。

 歌や超音波など、ナズナは音に関する魔法を使える。

 だからオペラ鑑賞はナズナに新たな知見を与えてくれることもあるだろう。

 しかし、見てすぐになにかが変わるというものでもないし、最初からそんなことまで期待していなかった。いつかなにかのきっかけになればラッキー程度のもので、最近はハードで気を張る日々を過ごしていた仲間たちにも、息抜きになって欲しいと思っていた。

 ただ、元々が無口で口下手なサツキはそんなことまで言わない。

 こういうときばかりは、ナズナにその想いが伝わればよかったのだが、二人の気持ちはすれ違っていた。

 まじめなナズナはサツキの心遣いを期待として受け取ってしまい、サツキはなにも望まず応援として支えようとする気持ちを言い表せない。


「俺は芸術なんてわからないけど、良い刺激になるな」

「あははっ、僕もだよ。いなせだねえ」


 サツキとミナトが楽しげに宮殿内を見て話す後ろで、ナズナはちょっと考える。


 ――わたしも、芸術ってよくわからない……でも、知っていたほうが、歌にも、生かせるかも、だよね。


 ナズナはリラに向き直って言った。


「ね、ねえ。リラちゃん」

「なに? ナズナちゃん」

「わたしに、芸術、教えてくれる?」

「リラも全然わかってないよ。ただいろんな芸術作品を見るのが好きなだけなの。それでもよければいいよ」

「うん。ありがとう」


 チナミが二人に声をかける。


「美術品はあと。まずはオペラ鑑賞だよ。行こう」


 こうして、ナズナは同い年で同じ参番隊のリラとチナミに続き、オペラの会場に歩いていった。

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