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119 『センドオフ』

 アキとエミは、朝一で出発した。

 まだ朝の七時である。


「なにもそこまで早くなくてもいいじゃない」


 ヒナは目をこすって眠そうにしていた。まだ昨日までの緊張からくる疲労やこれまでの分の疲れも取れていないのだ。サツキとミナトの『ゴールデンバディーズ杯』、サヴェッリ・ファミリーによるマノーラ襲撃、地動説の裁判と連日大変で、特にヒナは心労が絶えなかった。

 やっと、ディオン大臣らシャルーヌ王国が介入して公開実験をすることになり、それでもまだ戦いが続くので、不安がなくなったわけじゃない。

 しかし、ヒナにはちゃんと希望も見えている。だからヒナは明るい顔で今朝も目覚めることができた。

 ただ、士衛組も朝食はまだ取っていない。それくらいに早いうちからアキとエミは旅立つ。


「次はどこでお二人に会えるでしょう」


 クコが聞くと、アキとエミは首をひねった。


「どこだっけ?」

「さあ?」

「まあ、すぐ会えるよ」

「そうそう、何度でも会おうよ」


 適当なのに本当にすぐ会えると確信しているところがアキとエミらしくて、クコはふっと笑顔になる。


「はい! そうでしたね」


 二人は歩き出す。

 みんなを振り返って、


「またね、みんな! ありがとう!」

「ありがとう! また来るね!」

「写真と手紙を送るからねー!」

「ごきげんよーう!」


 踊るように軽やかな足取りは最後には緩やかに走るようなペースになり、二人は城門をくぐっていった。

 朝から目の覚めるような爽やかな風が吹き抜けたようで、ヒナもすっかり頭が冴えてきた。


「二度寝もできないわね」

「ああ。俺たちも朝食をいただいて準備ができたら出発だ」

「うん、わかってる」


 それから朝食も済ませて準備ができると。

 士衛組は城館の前で、『ASTRA(アストラ)』のみんなに見送ってもらった。

 アシュリーと彼女の兄・サンティも来てくれている。シンジも駆けつけてくれた。

 マノーラを手中に収めるため、サヴェッリ・ファミリーが利用しようとしたのがサンティだった。サンティはコロッセオ参加中に襲われて行方不明になり、サヴェッリ・ファミリーに操られていたのだ。しかも、サヴェッリ・ファミリーがマノーラを襲撃してきたとき、あろうことか偶然にもアシュリーは兄のサンティに攻撃されたそうになった。そこをサツキが助けたのだ。

 だから、アシュリーとサンティのサツキたちへの感謝は並々ならぬものがあった。


「サツキくん。本当にありがとう。どれだけ感謝しても足りないよ」

「心からお礼を言うよ。ありがとう。リパルテの公開実験も見に行くつもりだ。応援してるよ」


 兄を助けてもらった感謝。

 自分を助けてもらい、妹を支えてくれた感謝。

 二人の感謝を受け取り、エールも受けて、サツキは感謝の言葉を返す。


「ありがとうございます。頑張ります」


 コロッセオ参加中にいろいろと教えてくれた先輩で晴和人のシンジも、サツキとミナトにとってはマノーラでは思い出深い人物だった。

 シンジはニカッと笑顔を見せて、


「ボクも見に行くからさ。きっと成功させてね」

「ええ。サツキとヒナならやってくれますよ」


 とミナトが言うと、ヒナが胸を張った。


「もちろんよ」

「シンジさん、お世話になりました。ありがとうございました」


 サツキが小さく一礼すると、ミナトも微笑を浮かべて、


「ありがとうございました。またコロッセオに参加することがあったら、次は戦いましょうね」

「まいったな。ミナトくんには勝てないよ。ボクの《(もち)(はだ)》は剣とか刃物には強いんだけど、ミナトくんの刀は受けられる気がしないっていうか……」


 と苦笑になる。

 これにはいつもコロッセオで集まっていたサツキとミナトとアシュリーが笑った。

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