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114 『ジョイフルステップ』

 ミナトがヴァレンに尋ねる。


「そういえば、ヴァレンさんはどうなさいます?」

「悪いんだけどね、ミナトちゃん。アタシ、あなたたちの仲間に入ってすぐに言ったと思うけど、今はいっしょに行けないわ。次に合流するのはアルブレア王国よ」

「そうですか。承知しました」


 改めて。

 この革命家ヴァレンは士衛組壱番隊附属隊士ということになっている。正式な隊士たちと違い、常にいっしょというわけではないのである。壱番隊は現在、隊長のミナトだけだから、ミナトはヴァレンがどうするのか気になったというわけだ。

 レオーネが爽やかな笑顔で、


「代わりといったらなんだけど、もし時間が合えば、オレとロメオが公開実験を見に行くよ」

「はい。来ていただけるとうれしいです」


 クコがにこやかに答えた。

 ロメオはサツキに言った。


「我々も見届けたいと思ってますし、できる限り都合をつけます。公開実験までにも『ASTRA(アストラ)』の人間の手が欲しいときは言ってください」


「はい。助かります」


 今度はヒナが浮橋教授を振り返る。


「お父さんはどうするの?」

「そうだね、お父さんは後から行くよ。持って行く資料をまとめたりもしたいしね。ヒナたちがリパルテに到着する頃には、お父さんが先に着いてるようにするつもりさ」

「わかった。でも、一人で大丈夫?」


 これにはルーチェが先に答えた。


「大丈夫です。ワタクシがお送りいたしますよ、ヒナさん」

「そ、そう。よろしくお願いします」


 まだ微妙にルーチェとの距離感がつかめないヒナだった。


「資料の安全が気になるようでしたら、このロマンスジーノ城に置いてくださっても大丈夫ですよ。機密情報はリディオちゃんとラファエルちゃんがしっかり保管してくださいますし、グラート様もおります。もし必要でしたら、いつでもワタクシがお届けいたしますので」

「それに。いつなにをされるかわからないし、まずは資料もすべてここに移して、出発までここにいたらどうです?」


 ヴァレンにもそう言ってもらって、


「では、そうさせてください。なにからなにまで、助かります」


 浮橋教授もそんなに行き届いたことを申し出てくれたヴァレンとルーチェにちょっと困惑顔になっていた。


「ンフ。決まりね」

「ご協力は惜しみません。なんなりとお申し付けくださいませ」

「ありがとうございます」


 これで、このあとのみんなの行動は決まった。

 そう思ったとき、アキとエミが元気よく帰ってきた。

 サツキたち士衛組と同じく、西に向かって旅する中、アキとエミも今はロマンスジーノ城に宿泊しているのだ。

 アキとエミは「ただいまー!」と明るい声を響かせて入ってくると。

 真っ先にヒナのところにやってきた。

 エミがずいっとヒナに顔を寄せる。


「ヒナちゃん!」

「朝よりいい顔してるね」


 とアキに言われて、ヒナは笑顔を浮かべた。


「おかげさまで。ありがとう」

「やったー!」

「あはは、ヒナちゃんがもっといい顔になったー!」


 陽気にアキとエミが喜びのステップを踏んでいる。

 朝、二人が《ブイサイン》と《ピースサイン》をしてくれた。

 これは勝利祈願と安全祈願の魔法である。

 もしかしたら、勝負事に勝ちやすくなる勝利祈願と安全性が高まる安全祈願のおかげで、今日は裁判で負けずに済み、安全に終えられたのかもしれない。

 さらに、一つ振るとその人に一ついいことが起きる《(うち)()()(づち)》も振ってもらっていた。これがどのように作用したのか、ヒナにはわからなかったが、とにかく負けなかったことがなによりの成果だ。

 アキとエミは朝もヒナの事情も聞かずに雰囲気だけで魔法をかけてくれて、今もよくわからず喜んでくれている。

 それがヒナにはおかしかった。

 どこまでも人がいいコンビらしい。


「アキさん、エミさん。お二人はいつまでロマンスジーノ城にいらっしゃるんですか? わたしたちは明日の朝、旅立つ予定です」


 クコが告げると、二人は顔を見合わせて噴き出した。


「あはは。びっくりー」

「だね、ボクたちといっしょだ」

「まあ! そんなことが」


 と、クコは口に手を当てて驚いた。

 そんなわけで、士衛組とアキとエミの旅立ちは明日の朝ということになり……。

 続く来客に、サツキとミナトが驚くことになる。

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