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112 『シードオブフューチャー』

 夜。

 夕食の席で。

 士衛組はヴァレンたち『ASTRA(アストラ)』に裁判の結果を報告した。

 ロマンスジーノ城に戻ってすぐに、この城館の管理人であり執事のグラートには報告していたし、ヴァレンたちにもリディオが《電送作戦(トランスミッション)》で連絡はしていたから、大まかなことはわかっている。

 この席では、いっしょに裁判に行ったリディオとラファエルを中心に、バンジョーやクコも口を挟みながら今日の裁判の詳細を伝えた。

 話を聞くと、ヴァレンは喜んだ。


「なるほどねえ。ンフ。良い行いをすると、それがそのまま自分に返る。その見本のようなお話ね」

「そうですかね」


 ヒナがちょっと照れて頭をかく。


「種を埋めておけば、芽が出て花が開くこともある。いつか花が開くために、そうなる行いをしておいたからよ」

「な、なるほど……?」


 少し首をかしげたヒナに、ヴァレンは優しく微笑む。


「今あなたがした行動や言った言葉が、未来のあなたになるの。大事なのはいつも今」

「今……」

「あなたが今食べた物が、消化吸収されて未来のあなたの肉体を細胞から作っていくのもそう。あなたが今言った言葉で、サツキくんが将来あなたに語りかけてくれる言葉も変わる。あなたが理不尽な怒りをチナミちゃんにぶつけてしまえば、チナミちゃんとの友情が壊れる未来がやってくる」


 例を挙げてくれるヴァレンだったが、リディオが思い出したように声を上げた。


「そういえば、部屋に煙をまくと、その空気が充満して、数時間後には虫を退治できるって魔法道具が売ってたけど、あれもそうなのか?」

「ンフ。確かに、おかしな例えだけれど、それも同じね。虫がいなくなるための行動をしたから、数時間後の未来では虫が退治されている。リディオちゃんはおもしろいわ」

「へへ」


 褒められたのかは本人たち以外には判別しにくいが、リディオはうれしそうだった。

 ヴァレンはロマンスジーノ城に帰ってとき、最初にこう言ったのだ。


「シャルーヌ王国での公開実験なんて、おもしろそうじゃない。よかったわね、たぶん、あそこで判決になってたら負けてたわよ」

「やっぱり……」


 ヒナが苦い顔でつぶやいた。最後のほうの詳細は話してないのに、それでも裁判で負けるとヴァレンは思っていたのだ。

 それだけ不利な状況を招き寄せたのは、相手が謀略を張り巡らせて、浮橋教授とヒナと士衛組を陥れるための行動をしてきたからである。

 だから、ヒナは裁判後のサツキの言葉も思い出していた。


 ――調略は必要みたいね。地動説が認められる未来のために、植えられる種を植えて水をあげて育てていかないと。


 ヴァレンは言った。


「とにかく、チャンスは巡ってきた。それもあなたたちの過去の行いのおかげで。これを逃す手はないわ」

「はい!」


 やる気満々のクコ。

 リラも瞳を輝かせ、サツキに聞いた。


「サツキ様。リラにできることはありませんか?」

「まず、リラには実験装置をつくってもらいたい。リラの力が必要だ」

「お任せください。リラも頑張ります」


 指名されたリラは胸の前で拳を握るが、浮橋教授は首をひねった。


「しかし、どうやって慣性について証明しましょうか」

「俺のいた世界には、慣性の法則というものがありました。ただこれを、だれにでもわかりやすく見せればいいと思います」

「まあ、おれも智恵を出す。やるか」


 と玄内が言ったことで、実験については士衛組のほかのメンバーが考える必要はないと告げたかっこうになり、わからないなりに思案していたバンジョーも難しい顔をやめた。


「よくわかんねえけど、先生がやるなら大丈夫か」

「そうですねえ」


 ミナトはそんなバンジョーを見て笑った。

 ヴァレンが手を叩く。


「さて。フィリベールちゃんにはアタシから話をつけておいてあげるから、アナタたちは実験に集中なさい」

「はい」


 とクコが答えてから、ここにいたみんなが驚く。

「ええええぇ!」とクコたちが大きなリアクションをして、ヒナが尋ねる。


「し、知り合いだったの? あのフィリベール国王と?」

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