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111 『ネクストジャッジメント』

 士衛組が話していると。

 ここに、裁判官の一人がやってきた。


「本日はお疲れ様でした」


 彼は、晴和王国の文化にも通じていた裁判官で、地動説を認めると言ってくれた人だった。


「とても興味深い話が聞けました。しかし私の力不足で後押しができず、申し訳ない」

「いいえ。ありがとうございました」


 クコが答える。


「次の公開実験では、実験そのものをシャルーヌ王国が支援してくださるでしょう。が、その場に裁判官を送り込むのはシャルーヌ王国ではない。今回と同じことが起きる可能性もあります。気をつけてください」

「ご助言、ありがとうございます」


 今度はサツキが答え、裁判官は去っていく。


「では、失礼しますね。地動説が証明されることを祈っています」


 きっと、彼はもう呼ばれないだろう。宗教側がそれを許さない。

 ありがたい存在だったが、今後も力を貸してくれる味方になってくれるとまでは考えないほうがよさそうだ。

 数秒して、サツキは口を開いた。


「公開実験はどんな仕組みで、どんな段取りになるんだ?」

「たぶん、シャルーヌ王国側が主導して公開実験をしてもらって、最後に裁判官をまた五人集めての合議制ってところよ」


 ヒナもこうしたイレギュラーにまで詳しいわけじゃないが、玄内は首肯してみせた。


「だな。その流れなら公開実験の成功がそのまま結果として認められやすい」

「次はシャルーヌ王国も味方なわけだし、変な邪魔はないはず」


 意気込むヒナに、玄内が釘を刺す。


「公開実験中はな。ただし、公開実験が終わったその瞬間から、シャルーヌ王国は手出しができなくなる。宗教側の人間が場を仕切り始めるからだ。演説やら非難やらで時間を稼がれて空気を変えられたり、裁判官が理屈に合わないジャッジをする可能性があるってことだぜ」

「はい。だから俺たち士衛組は、今度こそ調略戦をしないといけません」


 サツキがキッパリ言い切ると、玄内はフッと笑った。


「わかっているじゃねえか。そういうことだ、サツキ」

「調略というと、相手を味方につけるための活動ですか?」


 クコが質問した。

 晴和王国では、新戦国時代になって各国が調略をし合っている。どこかとどこかが手を結んだり、どこかとどこかの手が切れて別の同盟ができたり、政治的な駆け引きは裏でも表でも行われた。

 それに対して、アルブレア王国では王家がすべてを統治できていたために調略の影を見ることはほとんどない。

 政治家同士がよりよい地位を得るための調略や、他者を貶めるための謀略が張り巡らされることはあっても、クコの知らない世界でのことだった。


「うむ。裁判官を味方につける。相手側もやっていたことだ。先に地動説の正しさを説き、宗教側につく場合のデメリットや士衛組につくメリットを説く」

「あまりクコ向きの仕事じゃないけど、そのまっすぐで素直なところが役立つ時もあるかもしれないわ。ひとまず、サツキと先生に任せておきましょう」


 士衛組総長のルカに言われて、クコはうなずいた。


「はい。そうですね、わたしには向いていないみたいです。頼みますね、サツキ様」

「任せてくれ」

「サツキ、あたしもやれること、なんでもやるわよ」


 ヒナが言うと、サツキはちょっと考えて、


「おそらく、ヒナもこの手のことには向いていない」

「なっ、なによそれ!」

「戦略は俺とルカと先生で練るとして、諜報活動や情報収集などで士衛組のみんなの力を借りることになる。ヒナは公開実験を成功させることだけ考えてくれ」

「わかったわよ。実験装置を完璧なものにしてみせるんだから。ね、お父さん」

「うん」


 それから、浮橋教授はサツキと玄内にお礼を述べた。


「本当に、なにからなにまでありがとうございます。公開実験までよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 サツキが頭を下げて、玄内は腕組みしながら言った。


「ああ。次は勝つぞ」

「よし、じゃあ早く帰ろうぜ! 今日はご馳走だぞ!」


 リディオがニカッと笑ってみんなに呼びかけ、ラファエルもサツキに言った。


「ひとまず、今夜はみなさんの祝勝会と送別会を兼ねてパーティーになると思います」

「今回は完全には勝ちきれなかったが、次に勝つことを前提に、今夜は予祝ってところか」

「そうですね」


 ヒナが腰に手をやって、サツキに強気な笑顔を見せる。


「それ、いいわね。予祝、やりましょう!」

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